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『執着』(SIDE 瀬戸 光一)救命医X内科医
しおりを挟む久々に父親と会って、ホテルのラウンジで飲んだ。
期待以上に何でもこなしてしまう俺は、両親にとって育て甲斐のない息子だったらしい。
親なんて勝手なもんで、期待を裏切る息子であれば落胆し、期待以上に出来る息子であればつまらないとぼやく。
子どもの頃から特別努力しなくても、能力は充分に備わっていた。
父親とは年に数回、このホテルのラウンジで酒を飲む。
ただそれだけの関係だ。
「瀬戸・・?なんでここに。」
「丹念・・・お前こそどうしてこんなとこに?」
「学会だよ。遅くなったから、今日はここに泊まることにした。・・・ってお前には関係ないだろ。」
学会に出席すると智彌から聞いていたのを思い出す。
父親との会話に疲れ果てていた俺は、飲み直そうと丹念に提案した。
鬱々したこのままの気持ちで、帰りたくなかったのだ。
文句を言う彼の部屋におしかけ、ボトルを開封した。
「智彌は、どうした?」
「久々に会った同期の子の家に泊まるって、途中で別れた。」
二人ともすでに相当な量の酒が体内を回っている。少し飲んだだけで彼はすぐに眠そうな顔を見せた。
「愛、酒弱くなったな。」
無防備な姿を晒す彼に、つい気が緩む。
学生時代ぶりに、彼の名前を口にした。
「光一・・・もう飲めねぇわ・・」
酔っ払っているのだろう、彼も同じように俺の名を口にし、虚な目でこちらを見ている。
「もう寝ろよ。ほら、立って。」
椅子からベッドへ移動させる。
デカイ図体してるくせに本気で身体を預けてくる彼に、内心チッと舌打ちした。
「・・・光一・・・っ・・・」
ベッドに横たわった彼が、俺の手を掴んで名前を呼ぶ。
彼と目が合った瞬間、全身の血が逆流したような衝撃に襲われた。
今までコントロールしてきた愛への感情が、一気に溢れ出して止まらない。
俺も相当酔っているみたいだ。なんて、他人事のようにぼんやり思った。
「こ・・ういち・・・っ・・・ッ」
たまらず彼に口付けると、アルコールの香りが口内いっぱいに広がり眩暈を覚える。
目を丸くして驚く愛の顔を見下ろすのは、気分が良かった。
ざまあ見ろ。
そんな気持ちになる。
ワイシャツのボタンを外すと、事の成り行きを理解した愛が慌てて拒絶の意思を示した。
「やめろ・・っ、光一・・お前、何考えて・・」
それでも彼がまだ酔っているのだとわかる。
彼は俺を名前で呼んでいることに、気づいていないようだった。
起きあがろうとする愛を、うつ伏せにして力で押さえつける。
「なっ・・・こら、やめ・・っ」
無理矢理ワイシャツをたくし上げ、彼の背中に触れた。
愛の大きな背中。
学生時代より多少筋肉が落ちて、ところどころ骨張っている。
たまらなくいやらしい、愛の肉体。
欲しい、と何度懇願しただろう。
「痛ぇ・・てめぇやめろ・・!瀬戸・・っ」
低く迫力のあるハスキーボイス。
酒のせいで、いつも以上に掠れたセクシーな声色。
「そんなの煽りにしかならないって、わかんないのかよ。」
背中に口付ける。
噛み付くように歯を立て思い切り吸って、赤く痕を残した。
「っ!こら・・瀬戸・・!!ふざけんなっ・・・」
凄みを効かせた声でさえ、俺の興奮を煽る材料にしかならない。
「愛、これからお前を抱く。もう逃さない。」
俺の覚悟は決まっていた。
執念めいたセリフだと、自嘲する。
俺はずっと愛のことだけが好きで、この感情は愛というよりもはやただの執着に思える。
彼はどうしても手に入れたい、この世でたった一人の男だった
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