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第一部

1 綺麗な少年

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町から少し離れた森の中。
木の実や果物などを集めに出かけたら、ひどく綺麗な顔をした少年と出会った。聞けば、彼は薬草を集めに来たのだと言う。

この辺りの森は、昼なら危険な獣もいない。だから女や子どもが一人で森の恵みを採りに来ることも割とある。尤も私は、取り合いになったりして人と揉めるのが苦手なので、いつも敢えて少し遠くの方まで足を伸ばしている。だから正直、私以外に人がいることに驚いた。それも、こんなに小さな子どもがこんな奥まで。

見たところ、9歳くらいではないだろうか。私の胸にも満たないような背。細い身体。迷子にでもなったら夜は危ないのに、と少し心配になってしまう。
彼は、探していた薬草が森の手前では見つからなくて、こんなところまで来てしまったらしい。

「それなら、帰りは一緒に帰りましょう?」

それくらいは大人の義務だ。
知らない子だけれど、出会ってしまったのだから町まで連れて帰るくらいはしないといけない。
そう思って微笑むと、

「うん。美人なおねーさんありがとう!」

と素直な返事と笑顔が返ってきた。
こんなに可愛らしい子にお世辞でも「美人」と言われて、つい頬が緩んだ。


お互いはぐれない程度の距離で、それぞれ採取に励む。
今日もたくさん良いのが採れる。カゴがどんどん、美味しい果物でいっぱいになっていく。
嬉しくなりながら、せっせと手を動かしていた時だった。困惑したような声で、少年に呼ばれたのは。

「おねーさん、どうしよう…僕、身体が変…」

「え?」

振り返ると、少年がズボンのベルトに手をかけていた。

「見て…お願い…」

「っ…え…ちょっと…何脱いで…」

突然ズボンを脱ぎだした少年に慌てる。

「なんか…僕のこれ…おっきくなってる…」

少年のズボンが、ストンと足首まで落ちた。シャツの上から、そこに触れる少年。

「おしっこ出すやつ…おっきくなってる…なんで……」

少年が涙目で私を見上げた。

「い…痛くはない?」

「うん…痛くはないけど…」

不安そうに見上げられる。

「痒くは?」

「ううん、痒くもない…」

首を横に振る少年に、ほっとする。
それなら、虫刺されではないだろう。おそらく、何かの弾みで反応してしまっただけだ。

「…大丈夫よ…だからズボン履いて…」

小さい子だけど、この状況はちょっと困る。

「っ…だって怖い…こんなの今までなったことないし…」

「っ…大…丈夫だから…しまって…」

こちらをじっと見上げる少年。整った顔をしている所為か、年齢よりも大人びて見えて変な気分になりそうだった。気まずくて目を逸らす。
その様子から何かを感じ取ったのだろうか。少年が詰め寄ってきた。

「っ…おねーさんっ!これが何かわかるのっ…!?」

「……うん…」

「じゃあ見てよっ…」

「ええ…?」

必死の訴えに困惑する。
もしかして、反応したの今日が初めてなんだろうか。それなら、驚きもするだろう。
でも、こんな小さな子のあれを見るなんて……いや、こんなに小さな子ならば、逆に構わないのだろうか?

どっちなのだろう…段々わからなくなってくる。

「お願い…やだよ…こんなの…なんか変…もぞもぞする…」

「だ…大丈夫だから…」

肩に手を置いてそう繰り返してみたけれど

「お願い…おねーさん…ちゃんと見て確認して…」

潤んだ目で見つめられて、思わずゴクリと唾を飲んだ。
綺麗な顔立ちの子なのだ。
綺麗な、やや女の子っぽいとさえ言える……

……うん。これだけ小さいし、女の子とそう変わらないと思えば………
ちょっと見て「問題ないよ」って言って終わりにしよう。うん。

自分の葛藤に、無理矢理折り合いをつけて頷いた。

「…わかったわ」

「っ…おねーさん!ありがとう!」

パッと笑顔になった少年は、躊躇もなくズボンと下着を脱いだ。小さいから、人前で脱ぐのは恥ずかしいという感覚がないのだろう。子どもらしい細い脚と小さな膝が露わになる。
これで完全に下半身は裸だけれど、肝心のそこは長めのシャツでまだ隠れていた。

「…じゃあ…病気じゃないって、問題ないって、ちゃんと確認してね?」

今さら恥ずかしくなったのか、少し頬を染めた少年がシャツの裾を握った。スルスルと裾が持ち上がり、まずは太ももが見えた。健康的でなめらかなハリのある肌。
そして次に、ずっしりとした袋の部分が見えた。

………え?
なんか…変…な…ような……

少年はシャツを持ち上げていく。


…それの先端が見えた時には、少年の腹まで露わになっていた。
………少年の小さな身体に似合わない大きなそれは、高く高く天を突いていた。

思わず呆然とそれを見つめる。
まだまだ発育途中の身体なのに…。
現れたそれは…大人のものと同等。いやそれどころか、今まで見たことのある男の人のものよりも大きかった。

「…おねーさん…僕のこれ…変じゃない…?」

怯えたような声にハッとなる。

…安心させなきゃ。

大きさは変な気もするけれど、その状態自体はおかしなことではない。腫れや変色などもない。本当に、ただ大きくなってしまっただけのようだった。

「っ…大丈夫よ…変じゃないわ……」

「…本当に…?」

「ええ…」

異常は無さそうだとほっとして、そうしたら居た堪れなさが膨らんで目を逸らした。
まさかこんなに大きいなんて…

「でもじゃあ…なんでこんなになっちゃってるの…?」

「っ…それは…」

少年の不安そうな声に、慌てて視線を戻した。
涙で潤んだ無垢な瞳。
本当に何も知らなそう。

「っ…あ…の…大人になったってことよ…」

「…大人?」

「ええ…」

しどろもどろに答えて、耐えきれずにまた視線を逸らした。どう説明すればいいのだ、こんなの。見ず知らずの男の子に。

「でも…僕、まだ子どもだよ?」

「…っ…そうね……」

少年の言葉を頭の中で繰り返す。
そうだ。いくらそこが立派だとはいえ、この子はほんの子どもなのだ。

「そうね。あなたはまだ子どもだわ」

気をとりなおして微笑みかけると、少年は顔を赤くし、頷いた拍子にそれがブルンと揺れた。

「うん……」

俯いた仕草が年相応に可愛らしくて、ほっとする。

「…でもこれ…どうしよう……」

途方に暮れた声。

「ねえ。これ、どうしたら元に戻るの?」

素朴な問い。
けれど「どうしたら」いいのかを想像して、思わず顔が赤くなった。

「…い、弄れば収まるわよ…」

それだけ言えばわかるだろう。
そう思ったのだけれど

「弄るってどうやって?」

真っ直ぐな目で不思議そうに問いかけられてしまった。

「どうって……それはその…手で…」

もごもごと口ごもる。
こんな小さな子ども相手とはいえ、そんなことを説明するのは恥ずかしい。
けれどその返事で少年は、私が「やり方」を知っていると気づいてしまった。

「っ…おねーさん知ってるんだね!やってみせて!」

「っ…やってみせてって…」

詰め寄られて面食らう。
流石に困る。
だってそんなのはダメだと思う。こんな小さな子にそんなこと…

「どうやったらいいの?教えて?」

けれど縋るような瞳でじっと見つめられて

「…ねえ、おねーさん…」

そっと私の手を握った彼の手が震えていて…思わず頷いてしまった。


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