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第二章 奥様はドラゴンだった!?

第13話 即席【魔改造】

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「いいぞ。ヘニー」

「はい、領主様、ていや!」

 ヘニーの弓が、オークを仕留める。

「冒険中に『領主様』は、やめてくれ。同じ仲間なんだから、ディータでいい」

 仕事を思い出すからだ。

「はいディータ様」

「様はいらんのに」

 まあいいか。ここで下手に問答しても、ドワーフ救出が遅れるだけだ。

「それにしても、恐るべきは【チェイスファイア】の能力だな」

 兜で頭を覆っていても、矢に仕込んだ炎魔法が頭を貫通するのである。ヘニーはその効果で、オークの脳を焼くのだ。

「ですが、ゴーレムなどには通用しません。絶対的な火力は、リユ奥様に比べたらまだまだですね」

 こちらとしては、ヘニーに火力なんて求めていない。小柄な身体を生かしたフットワークこそ、彼女の武器だろう。

 とはいえ、本人はリユ並みのバ火力をご所望だ。

「リユは特別だぞ。参考にならん」

「ほうじゃ。この剣だって、ちょっとした【魔改造】でちょっくらいじってもらっておるからのう」

 ゴツゴツしたデザインの剣を、リユがヘニーに見せる。アラクネと戦ったときより、金属質を増やしていた。

 とはいえ、僕は装備品開発の専門家ではない。こういうのは、やはりドワーフの出番だろう。彼らの発想力さえあれば、きっといい武装が手に入るに違いない。ドワーフを助けたら、武器開発班にも数名回そうっと。

「正確さでいえばファミリアで事足ります。わたし個人の火力がなければ、ディータ様を助けることが……きゃあ!」

 強力なファイアーボールが地面に着弾し、ヘニーの近くにあった岩の突起を吹き飛ばす。

「気をつけぇよ! あやつ、【ピットフィーンド】じゃ!」

 リユが、僕とヘニーをかばうように前へ。

 現れたのは、ヤギのような二本角を持つ橙色の魔族だった。言葉は発しないが、明らかにこちらを敵視している。

 手から、ピットフィーンドがファイアーボールを放つ。

「しゃらくせえ!」

 ピットフィーンドが投げつけた火球を、リユが剣で撃ち落とした。

「お返しです。チェイスファイア!」

 ヘニーが、魔族に矢を放つ。

 矢はピットフィーンドの眉間や心臓に、的確に命中した。これ以上ないほど。

 だが、魔族はビクともしない。

「魔族は不死身か?」

「死なないんやない。命自体がないんじゃ」

 この魔族は、いわば眷属だ。何者かが操っているのだろう。

「やつの魔力を上回る、武器があればええんじゃが」

 さらに悪いことに、もう五体現れた。

 リユが二体倒すも、まだわらわらと出てくる。

「わかった。今から作る!」

 これだけの相手に、リユだけではきつすぎだ。

「これまで落ちた装備は?」

「魔法の杖が多いです! あ、ピットフィーンドが強めの弓を落としました。使えますか?」

「くそ。だったらありったけくれ! 全部、魔改造してやる!」

 僕は魔改造で、魔法の杖とヘニーの弓、魔族がドロップした武器を全部融合した。

 装備作りは専門家じゃない、っていっているだろ!

「ほら、【魔杖弓】だ!」

 魔法の杖と弓を融合させた武器だ。矢を使わず、魔力を直接撃つ。

 こんな即席武器が、使い物になるとは思えな……。

「チェイスマジックミサイル!」

 まったく違う属性の矢を、ヘニーが魔杖弓で四方八方へ放つ。

 矢は複雑な軌道を描き、ピットフィーンドの心臓を正確に撃ち抜く。

「えええええ!?」

 あっというまに、ピットフィーンドの群れが消滅する。

「とんでもないな、我らが誇るスカウトは」

「えへへ。あっ、ディータ様」

 魔改造の影響だろうか、僕は眠くなった。

「なに、いつものことだ、よ」

「ムリするなや。アタシらが守ってあげるけん、寝ておれ」

「そうはいかないよ。ドワーフが、捕まっているんだ」

 眠気と戦いながら、僕は立ち上がろうとする。しかし、またヒザをついてしまった。

「ヒーリング」

 ヘニーが、体力を回復させる魔法を僕にかける。

 あれだけひどかった眠気が、一気に吹っ飛んだ。

「おお。こんなに清々しい気持ちになったのは、初めてだよ」

「よかったです」

 役に立てて、ヘニーもうれしそうだ。

「すげえのう、ありがとうな、ヘニー」

「いえ。それより、これだけのピットフィーンドを、大量に」

「ああ。敵は相当腕の立つ魔族だ。とんでもないぞ」
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