追放先に悪役令嬢が。不法占拠を見逃す代わりに偽装結婚することにした。

椎名 富比路

文字の大きさ
上 下
12 / 63
第二章 奥様はドラゴンだった!?

第12話 ダンジョンへ

しおりを挟む
 僕とリユは、馬車に揺られていた。ヘニーを連れてダンジョンへ向かう。のだが……。

「ああ、のんびりハクスラがしたい」

 ぶっちゃけ領地のことより、僕は装備品の強化や自分のビルドを考えたい。

「潜るのも、小さいダンジョンでいいんだよぉ」

 ドワーフが掘るダンジョンなんて、大規模だろうし。 

「ガマンせいよ、ディータ。一大事じゃ。ハクスラなんぞ、ドワーフを開放してから、いくらでも付き合ってあげますけん」

「ホント?」

「おう。ホンマよ」

 僕の問いかけに、リユはめんどくさがらずにうなずく。

 ワガママに、付き合わせてしまったな。

「じゃあ、がんばろうか」

「その意気じゃ」

 意識を高めていたそのとき、ヘニーが馬車を止めた。

「あちらです。あの砦の向こうが、ダンジョンになっています」

「遺跡を改造したのか」

 シンクレーグを根城にしていた、魔族たちの砦である。もはや遺跡と化している。

「ダンジョンのモンスターを討伐していたら、冒険者がたまたまドワーフを救い出したそうで」

 現在は治療中で、まともに話せない状態だそうだ。

「拠点を作る。回復役はここで待機。ドワーフを数名救い出し次第、ここに連れてくる」

「承知」

 数名の冒険者を残して、僕たちだけで探索へ向かう。

「敵襲!」「ウガアア!」

 敵はオウルベアと、監視用の目玉型小悪魔だ。

「ヘニー、新スキルで目玉を潰せ。僕たちはオウルベアを」

「はい。お願い、【ファミリア】!」

 ベルトにつけていた無機質な使い魔を、ヘニーが起動させる。八角形の小型使い魔が浮遊して、氷の矢を放つ。無数の目玉たちを氷の矢で破壊していった。

「ウガアア!」

「アタシらはこっちじゃ!」

 自慢の剛腕で剣を振り回し、リユがオウルベアを一瞬で灰にする。

「新手だ。オークが、五〇匹は向かってくるぞ」

 あとはミノタウロスが五匹くらいいる。

「物の数ではないわい。ディータ、アンタの出番じゃ」

「そうだな。【サンダーストーム】!」

 集団で襲ってくる相手に、剣を構えた。刀身に、雷のエンチャントを施す。剣のリーチを伸ばすだけではなく、雷の竜巻を起こした。

 感電死したオークが、他の魔物たちにぶつかっていく。帯電した状態で激突したせいで、周りも巻き込んで感電を連鎖させた。

 黒焦げになったモンスターたちが、ボトボトと地面に落ちる。

「ああ、もうっ。何も落とさない!」

「ガマンせいて、ディータ。ポーションくらいは落としたろうが」

 リユがなぐさめてくれるが、僕は納得できない。

「やっぱり、弱いモンスターはダメだな。奥へ突っ込むぞ」

「そういかねばのう」

 肩に剣を担いで、リユが僕についてくる。

 ヘニーも、後ろからパタパタと追いかけてきた。

「これも、南東の仕業かのう?」

「わからない。でも、カイムーン国境の補修が終わってないそうだよ」

 北東にあるカイムーン国は、南東国との間に国境用の壁を作っている。

「カイムーンは、ソラドロア王国の自治権を巡って、南東諸国と戦闘状態にあるのは知っているよね?」

「おう。ソラドロアいうたら、お前さんに婚約破棄を突きつけた姫様のおる国じゃったのう」

 そうだね……。嫌なことを思い出したよ。

「でも、まだあきらめきれていないらしい。で、実力行使に出たというわけだけど、近隣のドワーフに頼んで国境線にある壁の補修を依頼していたんだ」

「壁くらいで、戦争がなんとかなるんかのう?」

「関連はあるよ。攻めても無駄だと思わせるには、壁の修繕は有効だ。攻め込まれたときに、大変だからね」

 戦いのときに、攻めることだけ考えるのは愚策だ。ちゃんと攻撃をされたときも考えねば。カイムーンの王子は、そこまで考えている。

 壁は、未だにできあがっていない。このままでは、突破されてしまうのも時間の問題だろう。

 何者かが、ドワーフをさらっていったと見ていい。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。 十分以上に勝算がある。と思っていたが、 「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」 と完膚なきまでに振られた俺。 失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。 彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。 そして、 「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」 と、告白をされ、抱きしめられる。 突然の出来事に困惑する俺。 そんな俺を追撃するように、 「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」 「………………凛音、なんでここに」 その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

目覚めれば異世界!ところ変われば!

秋吉美寿
ファンタジー
体育会系、武闘派女子高生の美羽は空手、柔道、弓道の有段者!女子からは頼られ男子たちからは男扱い!そんなたくましくもちょっぴり残念な彼女もじつはキラキラふわふわなお姫様に憧れる隠れ乙女だった。 ある日体調不良から歩道橋の階段を上から下までまっさかさま! 目覚めると自分はふわふわキラキラな憧れのお姫様…なにこれ!なんて素敵な夢かしら!と思っていたが何やらどうも夢ではないようで…。 公爵家の一人娘ルミアーナそれが目覚めた異なる世界でのもう一人の自分。 命を狙われてたり鬼将軍に恋をしたり、王太子に襲われそうになったり、この世界でもやっぱり大人しくなんてしてられそうにありません。 身体を鍛えて自分の身は自分で守ります!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...