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第四章 オフ会のお誘い

第26話 オフ会のお誘い

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「オフ会ですか?」

「うん。オフ会。ベルちゃんが、ウチに会いたいらしいんよー」

 トワさんが、「オフ会をしよう」という。

「ベルちゃんとリモートで話しているうちに、オフ会しないかって話題になってー。近い内に、ケントくんともリアルで会いたいねーって。ねー」

 トワさんが、カウンターに寝そべっているすしおくんを撫でる。

 リモート?
 まるで、最近まで連絡をし合っていたみたいな言い方だな。

「ベルさんとは、よくお話をされているんですか?」

「そうなんだよー。ウチから誘ってみたらさー、リモートでお話することになってさー」

 思いの外、女子トークが盛り上がったという。
 
 トントン拍子に、「リアルでも会わないか」となったらしい。
 
「といっても、ウチが一方的に話し込んでただけなんだけどねー」

 相手側は、トワさんからの質問に答え続けていたそうだ。

「ケント、こんばんは」

 ベルさんも、ログインしてきた。ドーベルマンニンジャのナインくんと、手を繋いでいる。

「こんばんはベルさん。オフ会の話をしていたところです」

「うん。ごめんなさい。一度、ケントともリアルで会いたいって、勝手に」

「構いませんよ。お家は、近いんですか?」

「ええ。割と。職場もほとんどリモート作業だから、家を出ないことが多いの。だから、人恋しくなっちゃって」

 それで、リモートの話を振ってくれたのか。

「みなさんは、お時間大丈夫なんですか?」

「問題ないわ。ナインの散歩も兼ねて、遠出しようかなって」

 ベルさんは、ナインくんの頭を撫でている。
 
 ナインくんは、おとなしくベルさんに撫でられていた。 

 それにしても、愛犬が自分より背が高いって。結構、脳がバグるような気がするんだけど。

「ベルさんは、どうしてナインくんの背を高くしているんです?」

「ナインはいつも、あたしを見上げているでしょ? ゲームの中くらい、立場が逆転してもいいかなって。ね?」

 ベルさんが声を掛ける、ナインくんも「わふん」と返す。

「トワさんは、ご家族とかは大丈夫ですか?」

「へーきへーき。ダンナの仕事も、そこまで時間に追われていないし。子育ても運用資産でどうにかなってるから、時間を仕事で潰されることもないしねー」

 さすが、資産運用家族はすごいな。

「チビたちはまだ手がかかるけど、ダンナが見てくれてるからー」

 ダンナさんもダンナさんで、子どもたちと遊ぶのを楽しんでいるみたい。

「ただ、もうすぐ冬休みだから、旅行でもしようかってー。今チビたちとスケジュール合わせてしてるよー」

 旅行か。いいな。

「ペットも連れていける、温泉に行くんだー。ペットからすると、旅行自体がストレスっぽいんだけどねー。『PペットRランFファクトリー』で、慣れてもらおうかーって話になってるよー」

 ネコは、環境の変化に敏感だ。基本的に、新しい場所を嫌う。

 旅行も、一泊が限度だろうと話し合っているそうだ。

「だからオフ会をやるなら、その前でお願いしたいんだけど」

「問題ありません」

「急でごめんねー。こっちの都合ばかり、押し付けちゃってー」

 申し訳なさそうに、トワさんが手を合わせる。

「構わないわよ。あたしも早く会いたいわ」

「ありがとー。一応、場所はここの古民家なんだけど」

 ゲーム内メールに添付して、トワさんが地図を見せてくれた。
 
「いいですね。古民家を、貸し出してくれるんですね?」

 ペット撮影用の古民家を、貸し切りにする予定だとか。

「七五三のシーズンが終わったら、貸し切ってOKだって」

 お庭もあるから、ナインくんを遊ばせることもできる。

「ベルちゃんが、見繕ってくれたんだよー。ネコも犬もいっしょに遊べる場所、ないかなーって」

「というか、あたしが古民家のおじさんと仲がいいの。ゲームも一緒にログインできるわよ」

 ベルさんに、そんな知り合いがいたとは。

「そうなんですね。どんなキャラでプレイしているんですか?」

「カメよ」

 古民家撮影所の店長さんは、小さいカメを飼ってるんだとか。

「カメって、PRFに入れたんですね?」

「水槽の酸素入れに、ログインとモーション装置が付属しているそうよ」

 水棲のペットと、ゲームで遊べるとか。このゲーム、どこまで進化するんだろう? 

「でも、めっちゃ強いタンクよ。たまにパーティを組んでるんだけど、お世話になっているわ」

 最近始めたばかりなのに、あっという間に強くなったらしい。

「ただ『古のネット民』だから、ネットリテラシーは察してね。たまに意味不明なことを、言い出すから」

「わかりました」

 ああ、うん。いるよね、そういう人って。

「急だったし、ウチのわがままに付き合ってもらってるから、予算はこっちで用意するねー」

「そんな。ご用意しますよ」

 ボクもベルさんもお金を出すといったら、トワさんから丁重にお断りされた。
 
「いいのいいのー。この次に何かあったら、みんなごちそうしてー」

「わかりました。今日はありがとうございます」

「ありがとー」

 トワさんは、ログアウトする。

 ベルさんも「じゃあね」と、アウトした。
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