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第四章 オフ会のお誘い

第25話 リアル割れの危機!?

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「もしかしてボク、リアル割れしているのかな?」

 リアル割れとは、ネット上で自分がしている言動が、リアル社会で知られてしまうことだ。

 この間、ボクはスーパーで、老犬を連れた女性とぶつかってしまた。
 その際に、携帯を落としてしまった。

 女性は、ボクの携帯を見ながら、ビビの名前をつぶやいていたっけ。

 たしかに、ボクは待ち受け画面をビビの寝顔にしている。

 でも、あれがビビだとわかる人なんて、ボクしかいないはずだ。

 たしかにゲーム内のキャラは、ビビに似せている。でも、サビネコなんてどこにでもいるはずだ。灰サビネコなんて、それこそ星の数ほどいる。

 そんな中で、このコをビビだといい切れる人なんて、数えるくらいしかいないはず。

「いったい、誰なんだろう?」

『実況をしているわけでも、ないしニャー。目立つ行動は、していないはずだニャー』
 
PペットRランFファクトリー』のプレイヤーには、プレイ内容を配信しているユーザーもいる。
 公式も、配信を禁止していない。節度を守ってさえいれば、誰だって配信は可能である。

「やらない、やらない。ボクに実況なんてムリだよ」
 
 ボクはゲームをしながら、配信なんてしていない。そんな器用なことはできないし、視聴者を楽しませる会話スキルだって皆無だ。接客しなくていい業種を、率先して仕事場に選んでいるくらいだし。

 誰かに見せびらかすために、ビビを飼っているわけでもない。ビビのよさは、ボクだけが知っていればいいからね。

 でも、相手はビビの存在を明確に知っていた感じがする。

『同じプレイヤーなのは、たしかニャ』

 だよねぇ。とはいえ……。

「大家さんが、ボクのことを他人に話すとは思えないし」

 トワさんはおおらかな性格だが、他人の秘密を相手にバラすような人じゃない。そんな人だったら、交流をやめている。仮にもあの人は、ベンチャーの社長夫人だ。信用が大切な立場なので、知り合いに不義理を働くとは思えない。

「気にしても、しょうがないよ」

 なんからの事情でビビの存在が知れ渡っているとしても、無視していればいいかな。

 見知った相手なら、あちらから声をかけてくるだろうし。

『そーだニャー。でも、あんな美人さんにも、ニャアの存在が知れ渡っているニャかー?』

「わからないけど、ビビはキレイなのは確かだよ」

『ありがとうニャー』

 ビビが、大きくアクビをした。

「眠い?」

『いつも以上に、脳みそを使ったからニャー。眠いニャー』

「ボクも一眠りするよ。おやすみ、ビビ」

『じゃあ、おやすみニャー』

 ボクは、ゲームをログアウトする。

 直後、ビビがボクのベッドへ移動した。ゴロンとなって、寝息を立てる。

 ビビを起こさないように、ボクもベッドに寝転んだ。

 ビビの寝顔を見ていると、リアル割れの心配も吹っ飛ぶ。

 


 翌日、大家のトワさんが家に来た。

「おでんですか。いいですね」
 
「そうなんだー。急に、食べたくなってさー」

 トワさんのおでんは、いつでもおいしい。

「今から、ゲームに入る?」

「はい。大家さんが欲しがっていたアイテムが手に入りましたよ。お渡しします」

「ありがとー。話したいこともあるんだよね」

「そうですか」

 立ち話もなんだから、と詳しい話は後に。

「それでは、ゲームで会おうねー」

 トワさんが、帰っていく。
 

 ビビとごはんを食べた後、ログインする。
 
 さっそく、トワさんのアバター、「アントワーヌ」さんの元へ。

「トワさん。こんばんは」

「こんばんはー」

「例のアイテムです」

 ボクは、【赤い鉄】、【黒曜石】、【スケルトンの灰】を渡す。

「さっそく、装備の開発をするからねー」

 トワさんが、アイテムを加工し始めた。
 
 トンテンカンと、軽快な音が鳴る。

「できたよー」

 トワさんから、装備を受け取った。

 ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~
 

【赤熱の剣】
 赤い鉄を加工してできた、火炎属性のロングソード。
 盾を持ちながらでも、戦える。

【黒曜石の篭手】
 耐熱効果の高い、篭手。
 どんなタイプのペットにも、ジャストフィット。

【従属の骨】
 一部の魔物が夢中になる、ドラゴンの骨でできたオモチャ。
 骨の内部にある髄液の効果で、モンスターに与えることでテイムできる。


 ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~


【赤熱の剣】は、ボクが装備する。このところ攻撃面に不安があったので、武器の強化はありがたい。フィジカルは固くなっているので、あとは攻撃力を上げていければ。

【黒曜石の篭手】は、ビビが装備した。ビビの素早さを活かすには、あまり重いヨロイなどを装備したくない。この篭手は、非常に役立つはず。 

【従属の骨】は、ビビがないがしろになりそうだな。モンスターをテイムできるのは、おもしろそうだけど。
 
「ありがとうございます。役立ててみせます」

「そういってもらえると、助かるよー」

 トワさんが喜んでいると、すしおくんがトワさんの肩に身体をスリスリしてきた。飼い主がうれしそうで、すしおくんもなんだか楽しそう。

 アビリティ【以心伝心】はビビが持っているので、ボクにはすしおくんの気持ちなんてわからないけど。

「そうだケントくん、オフ会やらなーい?」
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