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第二章 ここほれニャンニャン

第11話 愛猫とダンジョンへ

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 ダンジョンの中は、思っていたより深そうだ。
 明るいからまだいいけど、真っ暗だと夜目がきかないボクだとキツかったかも。

 ダンジョンの構造は、岩をくり抜いた感じの自然なものだ。遺跡などのように、人工物がある感じではない。

『ケントご主人。こっちニャ』

 わずかにビビが先行して、お宝の位置まで歩いていく。

「モンスターに気をつけてね」

 本来なら、ボクがビビを守りつつ進行していくつもりだった。

 しかしビビは、好奇心のほうが勝っているみたい。先に進んでしまう。

 ビビが喜びそうなお宝が、あるといいね。

『魔物ニャ』

「わかった。下がってて、ビビ」

 危ない魔物なら、ビビを守らなきゃ。

 現れたのは、イノシシの頭をした小太りの亜人だ。【オーク】だな。ここは、オークの巣なのかもしれない。

 オークが、手に持った棍棒を振り下ろす。

 ボクは、盾で防御した。

「うおっ! 重っ!」

 地面がめり込んだよ。こんなの、ビビに当てられない。
 結構、殺意が高めだそ。このオークは。

『ケントご主人。多分、当たらないように避けるか、受け流すシステムだニャ。まともに受け止めちゃダメニャー』
 
 そうか。バカ正直すぎた。

「よし、それ!」

 今度は、斜めの方角に受け流す。

『OKご主人。今ニャ』

 ビビが【ライトニングスピア】を放った。雷撃を帯びた剣で、相手を突っつく。

 電撃が体に流れ込んで、オークが目を回した。モザイク状になって、オークの肉体が消えていく。

 仲間がやられたのに気づいてか、オークが集まってきた。

 群がるオークを、同じような手法で撃退していく。

 さすが、ゲームと言うだけある。ちゃんと、攻略法があるんだな。

「受け流して……ビビ!」

『OKだニャ』

 ボクが攻撃を流して、オークの体制が崩れたところを、ビビが倒す。

「これでラストだ、ビビ」

『【ライトニングスピア】ニャ!』

 どうにか、すべてのオークを撃退した。

「ボクのレベルが、一ポイント上がったね」

『そうだニャ。ニャアは強くなりすぎてて、オーク相手ではレベルが上がらないニャー』

「ステータスは体力に振って、と。スキルは、なにを取ろうかな」

 ボクは、取れそうなスキルを前に悩む。

 盾で攻撃できる【シールドバッシュ】。
 自分が壁役になって、敵を怒らせる【挑発】。
 回復魔法の【ヒール】。

 魔法の杖があるから、ヒールはいいか。

「【挑発】を取るね」

 これで、ビビが攻撃対象になるのを避けられる。

「探索スキルは、もうすぐ発動しそう?」
 
『ビンビン伝わってくるニャ』
 
「例の、クモ型モンスターの気配ってある?」

 ボクたちは冒険者ギルドから、『クモのモンスターを倒して、糸を取ってこい』と依頼を受けている。
 
『モンスターの気配は、わからないニャ。でも、アイテムの位置は特定できそうニャー』

 ビビはボス部屋とは違うルートを、トテトテと進む。

『ここニャ』

 なにもない壁に、ビビが触れた。

 ネコの顔をしたピクトグラムが、マーカーとなって壁に出現する。

 ピクトグラムを、ビビがちょこんと前足で押す。

 ズズズと壁が動いて、新しい道ができた。

「こんな道があったのか」

 ビビといっしょに、狭い道を進む。
 
『このスキル、隠し扉も見つけられるみたいニャン』

 ビビの持っている【ここ掘れニャンニャン】、隠し通路まで見つけられるとは。

 財宝がたくさんある部屋に、たどり着いた。
 
「宝物庫だ」

 お金だけではなく、換金用アイテムの絵画、レアアイテムまで手に入れる。
 でも全部、店売りで手に入る高級品や、お金に換えられるものばかり。
 たしかにお金は大事だが、いずれ手に入るなら特別感がない。
 この発想って、贅沢なんだけどね。

『限定的なアイテムは、出てこないニャー』

「そうだね」

 やはり効果的なアイテムは、ボスを倒さないとダメみたい。

 ひとまず、手当たり次第にお宝をもらっていく。
 これは、領地の資材代にしようかな。
 
「よし。クモモンスターを目指すか」

『やっぱり地に足のついた財宝は、自分で勝ち取る必要があるニャね』

 哲学的なことを、ビビが語る。

「そうだねー。苦労の先に、財宝があるんだろうね」

 ボクも、しみじみ感じた。

 手軽にチートなんて、小説の世界だけなんだね。

「ちょっとまって。この道、ボス部屋に続いてない?」

 床が見えたとき、真下にボスの気配を感じた。

 いやあ、前言は撤回しよう。チートって、あるところにはあるんだなあ。まさか、こんなところに抜け道があったなんて。

 バカでかいクモが、獲物を求めてキョロキョロしている。小学校の体育館を、まるまる埋め尽くすくらいの大きさだ。

 目を回したオークが、ぐるぐる巻きにされて捕まっていた。

 オークでさえ、刃が立たないのか。そりゃそうだろうね。フロア全部覆い尽くすくらいに、大きいもの。アイツ。

 しかし果敢にも、一匹のオークがボスのクモに突進していく。

 クモの魔物が、なにか液体を口から吐き出した。

 液体を浴びたオークが、バタンと倒れる。

 クモはシッポから糸を出して、うつ伏せになったオークを縛り上げて吊るした。

「毒グモだ! コイツは、毒を持っている!」

 あのクモは、毒持ちのようだ。
 
 飛び道具を持っているベルさんを、連れてくればよかったか?
 
 でも、こういうのは楽しんだもの勝ちだ。
 ゲームでも、いきなりキャラロストするような仕掛けなんて、用意していないだろう。

『ケントご主人、あれニャ!』

 ビビが、なにかに気づく。

「どうしてのビビ……あれ!?」

 なんと、毒グモのモンスターの背中に、『ここ掘れニャンニャン』のマーカーが浮かんでいるではないか。
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