上 下
2 / 12
第一章 飼い猫とVRMMOをしていたら、うちのコがしゃべりだした

第2話 サビネコと、冒険を

しおりを挟む
「ふわああ」

 街の中に、降り立つ。
 
 本当に異世界だ。おしゃれなクレープの屋台があったりお店がドラッグストアっぽかったりして、ちょっと近未来っぽい。
 けど、れっきとしたファンタジー世界のようだ。景観を損ねるほどではない。そこそこの観光地って感じの世界観である。

「これ、どれくらいの人がペット連れなんだろう?」

 ボクは、辺りを見回す。

 あのキジトラ獣人は、戦士だな。狩人タイプの女性と行動を共にしている。

 他のプレイヤーって、あんなふうに見えるんだな。

 さっそく、フリーズしている人がいた。棒立ちになっているワンちゃん魔法使いに、僧侶の男性が付き添っている。おトイレだな。あれは。

「ビビ、キミはどうしたい?」

 ボクは、ビビに聞いてみた。

 このゲームの特徴は、動物語の翻訳機能である。鳴き声や感情を解析して、飼い主に伝えることが可能なのだ。

『遊びたいニャー』
 
「じゃあ、冒険者ギルドに向かおう」

 このゲームは、チュートリアルで全部を説明しない。世界観に浸ってもらうように、基本的には自由行動である。
 街をひたすら探索しても、いきなり街の外に出て戦闘や採取をしても構わない。
 後からちゃんとギルドに向かうようにガイドされ、そこからでも説明を受けられる。

 だが、ボクはちゃんとギルドで依頼を受けようと思った。
 その方が、冒険者っぽいからね。

「冒険者ギルドにようこそ、ケントさま。ビビさま。

 ギルドで、冒険者証をもらう。
 これで依頼や達成度、報酬や戦況報告は、全部電子メールで届く。いちいち素材を売りに行かなくても、依頼書を確認しにギルドへ足を運ばなくていい。
 細かい説明は、やっぱりギルドに聞いたほうがいいんだけど。
 
「ゴブリン五匹、スライム一〇匹倒してくださいだって」

 依頼書を見て、手頃なミッションを受けた。

「装備は、初期装備でいいか」

 手持ちのお金で、アイテムのポーションだけを買いに向かう。

 この世界は「テラフォーミングした、地球とは別の星」という設定だ。そのため、ある程度は近代化が進んでいる。ガラスどころか、パウチやセルフレジがあるのだ。土地によっては、文字通り中世ヨーロッパっぽい国とか、異国風の文化などもあるらしい。

 ポーションも、コンビニなどで売っているノド飴みたいなパウチ型である。

 あれかな? ワンちゃんとかが現実と違和感なく入りやすいように、近代的な建築物で構成しているのかも。

「おっ、ビビ。買いたい?」
 
 とある商品に、興味津々なビビ。

「ああ、このポーションは」

 これって、パウチ型のおやつじゃん。

 このゲームにある店舗には、ペット用品も「異世界の商品」として陳列している。ここは、ネット店舗でもあるのだ。

 ゲーム内通貨や冒険者の報酬は、「クーポン」として提供される。ここで商品と交換できるのだ。
 だから、買いすぎ注意である。

「ビビ、これがほしいんだね?」

 ボクがおやつを差し出すと、ビビはコクコクとうなずく。わかりやすいなー。

「じゃ、ビビ。買っておいで」
 
 ビビに、お会計を頼んだ。

 自分の冒険者証を、ビビはセルフレジに差し出す。
 ちゃんと、お金の概念がわかるみたい。

「ほんとにキミは賢いな、ビビ」
 
 さて、ポーションを買ったら冒険だ。

「どれだけの敵が、待っているのかな?」

 早速ビビが、スライムと格闘を始めた。

 スライムは、この世界で最弱のモンスターである。
 ネコの遊び相手としては、最適かも。

「とお。それっ」

 ボクはショートソードで、スライムをコンと叩く。
 おお、最弱。一発で倒せた。

「おっふ」

 一度、わざと攻撃に当たる。ポーションの使い方を覚えるためだ。

「封を切って、チューっと食べたらいいんだな?」

 ほんとに、チューブ型ノド飴と同じだな。

 スライムは用心さえしていれば、苦戦する相手ではない。

 やられ演出もファンシーで、目を回す程度にとどまっている。
 潰れたり、血が吹き出すようなことはない。

 ゲームの操作に慣れるために、ボチボチとスライムを叩く。

 だが、ビビは違った。自分の身体を電撃の槍と化して、スライムを撃退する。
 
 シュンとビビが移動したかと思えば、スライムの群れが感電して目を回す。

「すごいな。七匹をいっぺんに倒しちゃった」

 こっちはまだ、三匹しか相手にしていないよ。

「次は、ゴブリンだ。村を狙っているみたいだから、行ってみよう」

 近くの村付近で、たむろしているゴブリンを発見した。

「ギャギャ!」

 背後から、ビビが雷撃タックルをする。

 それが合図だった。

 五匹倒せばいいのに、一五匹くらいを相手に。

 でもビビは、全身を電撃の槍にして、一瞬でゴブリンの集団を倒してしまう。

「まったく。目を回すのはこっちの方だよ」

 ミッション達成のメールが来た。

 報酬のクーポンが、冒険者カードに振り込まれている。ビビのおやつ、二個分かな。

「さて、ログアウトするよー……って、ビビ?」

 街へ帰ろうとしたが、ビビは街とは反対方向を見ていた。

 と思っていたら、いきなりビビが走り出す。

 あそこは、森の中だ。上位ランカーだけが、入るのを許可されたエリアである。まだボクたちは、許可をもらえていない。

「そっちは、目的地と違うよ! ビビ!」

 仕方ないなあ。ペットの気持ちはわからないや。

 だが、ビビの野生は本物だと証明された。

「たすけてぇ」

 なんと、女性プレイヤーとペットが、ゲームのバグにハマっていたのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

「学校でトイレは1日2回まで」という校則がある女子校の話

赤髪命
大衆娯楽
とある地方の私立女子校、御清水学園には、ある変わった校則があった。 「校内のトイレを使うには、毎朝各個人に2枚ずつ配られるコインを使用しなければならない」 そんな校則の中で生活する少女たちの、おしがまと助け合いの物語

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

処理中です...