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第二話 あんたんトコのメイドでしょ⁉ はやくなんとかしなさいよ!

パーティの始まり

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 ドクロの馬車に乗って、伯爵の統治する街まで到着する。

「何よこれ……」
 エリザは絶句した。

 街を埋め尽くさんばかりに、魔物が溢れかえっている。道にだけではない。空からも降下してきた。
 インプやゴブリンなど、力の弱い魔物ばかりだが、量は計り知れない。街をあっという間に壊滅させてしまう数だ。

「おののくヒマはございません。パーティと行きましょう」
 場に臆することなく、ミレイアは車を降りた。ムチを高々と上げて、勢いよく地面を叩く。

 魔法陣がミレイアの足元に現れ、衣装を大胆なものに変形させる。ポニーテールの魔女が完成した。



「あんた、魔女だったの⁉」
 あわあわと、エリザがうろたえる。
 当然だろう。かつて魔王と双璧をなすといわれた魔女が、目の前に現れたのだから。


「まだまだ。新参者ですわ。それより」

 カバンから突き出たのは、マシンガンだ。カバン自体が武器となるとは。

「ゴリラにしては、素敵なプレゼントですわね」

 ミレイアは、カバンから飛び出ている銃身を突き出し、一斉掃射した。

 魔族たちが、面白いようにハチの巣になっていく。反撃しようとした魔物には、顔に穴を開けてあげる。

「これは愉快ですわ!」
 銃撃すると吹っ飛ぶ魔物たちを見ているのが、楽しい。思わず、撃ったままカバンを振り回す。踊るように。

「あっぶないわね! こっちに当たるところだったじゃない!」
 跳弾にビックリしたエリザが、物陰に避難した。

「あら、いらしたんですね? ごめんあそばせ」

 あれくらいなら、避けると思っていたのだが。 

「さて、お手並みを拝見いたしますわ。エリザ様」
「ええ、まとめて蹴散らすわよ!」

 エリザが大剣を構えた。柄に翼が生えている。エリザが羽根に吐息を吹きかけると、翼から刀身にかけて、炎に包まれた。

「天昇・炎武!」
 空を埋め尽くしていた魔族が、一瞬で消し炭に。

「さすがお姫様ですわ」

 大して感動していないが、乾いた拍手を送る。

「感心している場合じゃないわ! はやく伯爵を見つけないと!」
「待ってください、たいちょー。街の人の避難も大事ですぅ!」

 そうだ。街に血を流させないために、ここまできたのだから。

「これだけの魔物も、早く撃退しないといけません!」
「ですわね。しばしお待ちを」

 ハイヒールのカカトで、ミレイアは勢いよく地面を踏んづけた。


「終わりましたわ」


「はあ⁉」
 ミレイアの報告を、ただのジョークと思ったのだろう。エリザが食ってかかる。


「遊びに来たんじゃないのよ! もう少し、まじめにやりなさい!」
「ワタクシは、至って大真面目ですわ」
「どこがよ!」
「ならば、ご確認あそばせ」

 エリザは「ぐぎぎ」という擬音を口で言いながら、住民の避難を急ぐ。しかし、その足がピタリと止まる。

「あんた、何をしたの?」

 魔物たちの様子を見て、エリザは絶句していた。

 街中の魔物たちがすべて、亀甲縛りで壁にくくりつけられていたのだから。

「この街に潜む瘴気を確かめて、捕獲しました。魔力もすべて抜き取ってありますわ」

 足で地面を踏み抜き、ムチを分散させたのである。

 魔物たちを絡め取ったのは、ミレイアのムチだ。

「チートじゃないですか……一〇〇〇匹からいたんですよ? それだけの魔物を、三分も経たずに無力化するなんて」

「まだ、終わってはいません」
 ミレイアは、道端で腰を抜かしている少女に歩み寄る。魔物に襲われそうになったらしい。

「どうぞ」
 落ちていた短剣を、ミレイアは少女に持たせた。

「何をさせる気なの?」
「決まっているでしょう。魔物退治ですわ」
「こんな小さな子に?」
「親の仇を取らせるのです」

 エリザが、おぞましい物を見る目でミレイアを見る。

 少女の隣には、両親とおぼしき亡骸が。

「あんた、マジで言っているの?」
「この手の憎しみは、一生消えません。ならば、自らの手で葬り去るのが道理」

 エリザの歯が、怒りで震えていた。
「こういう仕事のために、騎士団はあるのよ⁉」

「誰かが手を貸しただけでは、ダメな時があるのです。さあお嬢様、思い切って」

 少女の瞳に、暗い色が映る。
 意を決した小さな手が、魔物にナイフを突き刺す。
 憎しみのせいか、すでに事切れているのに何度も刃物を突き刺した。

「もういいのよ。いいの」
 エリザが少女を止めると、少女は膝から崩れ落ちる。

「弱体化させれば、人間でも殺れますね。お嬢さん、そうお伝え願えますか?」
 ムチを分割して武器を拾っては、ミレイアは少女に持たせた。

 少女は嬉々として、武器を住民に配り始める。

 武装した街人たちの雄叫びと、魔物たちの断末魔が、街にこだました。

「正気なの、あんた⁉」

「いたって当然な行為かと」
 ミレイアは、まったく悪びれない。

「家族を魔物に殺された子に、敵討ちさせようって気持ちはわかるわ。とはいえ、こんな非人道的なこと||」




 唐突に、ミレイアは指を鳴らす。




 なおも抗議しようと詰め寄ったエリザに、「本当の姿」を見せてあげた。


「こ、これは」

 少女は丸太に向かって、一心不乱に刃を刺している。

 魔物の方は丸太の隣にいて、すでに事切れていた。魔物の魔力を吸い尽くしたのだ。
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