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僕の部屋で風呂に入る!!※エイシオ視点

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 はぁ……やっと着いた。
 久しぶりに帰った僕の部屋。
 
 部屋の前に食事係が待機していたが、料理の乗ったワゴンだけ部屋に入れて休ませた。
 簡単なスープとサンドイッチだけど、夜中に作らせてコックには悪い事をしたなと思う。
 
「す、すごい豪華……映画の王様の部屋だぁ」

 えいがって確か、劇みたいなものの事だ。
 
「すごい広さですね。絨毯の刺繍もすごいし、わー大きな絵も……」

 キョロキョロするアユムももちろん可愛い……でも。

「さぁアユム……ゆっくりゆっくり……そのアラ……そのバッグを起こさないようにゆっくり降ろして……風呂へ行こう」

 アユムの背中のリュックでは、ザピクロス様が寝ている。

 アユムと心で結ばれてから……幸せに浸りたいのにアライグマに邪魔されてばかりだ!!

 僕だってなぁ僕だってなぁ~~~! 
 我慢の限界ってもんがあるんだ!
 アユムと二人でイチャイチャしたいんだよ!!

 ……って思ってしまうんだよ……。

 もう、今はちゅっちゅする!!
 アユムの頬にキスすると、また照れて……可愛いな。

「ぐーか……………………ふぐっ!……ぐ……ぐかー」

 アライグマのいびきが止まったかと思うと、うめき声をあげてからまた眠りだした。
 睡眠時に、呼吸が止まってるんじゃないか……?

 いや、またアライグマの事を考えてしまった。
 今はアユムの事だけを考えたい。

「二人でゆっくりお風呂に入ろう」

「は、はい……」

「静かに……静かに……そう、ゆっくり~降ろして……ヨシ」

 ゆっくりとリュックを降ろして、とりあえずソファに置く。
 目に入る場所へ、サンドイッチを置いた。
 腹が減ったと、アユムへ言う前に食べるだろう。

「ぐーか…………ぐぐぐぐ!……ぐ……ぐかー」
 
 ……良かった、起きる気配はない!

「行こう」

「はい、エイシオさん」

 やったー!!
 僕はアユムの手と手を繋いで、自室のバスルームに直行する。

「こ、ここもすごいですね~」

 大理石のバスルーム。
 大きな風呂から湯気が立っている。
 あぁ懐かしい匂いだ。
 僕の好きなオレンジのオイルの香り。

 まさか、この風呂にアユムと一緒に入る事になるとは……。
 
「アユム……」

 風呂を見て立ち尽くすアユムを、後ろから抱き締めた。
 細い肩に、ぬくもりに……ドキドキする。
 長旅の疲れは相当あるのに、それでもこの想いは止められない。

「さぁ入ろうか」

「は、はい……」

 アユムも疲れているだろうし、まだまだゆっくり二人のペースで進んでいきたい……。
 でも僕はアユムをお湯のなかで抱き寄せて、キスをした。
 少し舌を絡ませると、少し驚かせたようだけどアユムも応えてくれて嬉しかった。
 
「恥ずかしいですね……なんだか」

「そうだね……」
 
 『照れて恥じらう』アユムがもう僕の性嗜好になってしまうよ……。
 
 この部屋で過ごしていた時に、こんな愛が手に入るなんて思いもしなかった。
 人生は不思議だ。
 昔の孤独だった僕に教えたい……未来の僕は幸せだよって。

「あの……耳と尻尾を洗わせてもらってもいいですか……?」

 えっ……そんな……ちょっと恥ずかしい……幸せ……。
 
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