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しおりを挟むつんのめるようにたたらを踏んだ先にいたのはレイヴァンで……。
なにやら冷気が全開だ。
「探しましたよ」
アイスプリンスのあだ名に恥じることないその貫禄に思わず謝る。
やたらと鋭い視線でゼリファンを睨むレイヴァンと、軽く手を挙げ肩を竦めるゼリファンに挟まれ非常に居心地が悪い。
束の間の睨みあいの末(睨んでいるのは主にレイヴァンだが……)、グイグイと俺の手を引き路地からでる彼の後を追う。
「ラインハルトたちも心配してます」
言外にはぐれたことと遅い戻りを責めるレイヴァンにことの経緯を掻い摘んで説明する。
……もちろん先程のやり取りのことでなく、その前の騒動についてだ。
ズンズンと大股で進むレイヴァンに握られたままの手に視線が向いた。
それに気づいた彼により一層ギュっと手を握られる。
「またはぐれてしまうでしょう?」
不満そうに「あなたは危なっかしいので」と続けられた言葉が耳に痛い。
祭りを堪能し終え、別荘に戻って軽い夕食を頂いた。
露店でも色々と口にはしたが、カイルやアレンはともかく生粋の王族・高位貴族である面々は歩きながらの買い食いなど不慣れもいいところで主食系にはほぼ手を出さなかったし。
談笑も終え、各自部屋へと引き上げ、シャワーや着替えも済ませてベッドについた……のだが、何故かすぐに目覚めてしまった。
クイーンサイズはあるだろう広々とした寝台の上を寝直そうとコロリと転がる。
横向きになったり、仰向けになったり体制を変えて瞼を閉じるものの、一度去ってしまった睡魔はなかなか訪れてくれそうもない。
諦めてベッドから体を起こした。
本でも読むかとランプへと伸ばしかけた手を止め、窓の方へと向かいカーテンを開けた。
つい数時間前に見た星空を求めて見上げた視線は、違うものへと釘付けられた。
星が散りばめられた夜空へと浮かぶ巨大な蒼い月。
冴え冴えとした光を投げ掛けるその月の美しさに一瞬呼吸すら忘れて見惚れる。
「すごっ……」
思わずそんな声が漏れた。
ただ一つ残念なのは、位置的にその全容が見えないこと。
建物が邪魔して夜空に浮かぶ月はどうしてもその全てが見えない。
一瞬考え、上着を羽織り部屋を出た。
蒼い光が照らす廊下を一人歩く。
灯りも持たずに出てきたが、窓から差し込む月明かりのお陰で足元に困ることもない。
勝手に歩きまわる許可は得ているとはいえ、夜分人様のお宅をうろつくのは気が咎めるがどうしてもあの月をじっくり見たかった。
「どうしました?」
聞き慣れた声に振りむけば、同じく夜着姿のレイヴァンが廊下に立っていた。
「あなたの姿が見えたので」
先回りするように自分がここに居る理由を告げて近づいてくるレイヴァンに申し訳なさから困ったような笑みを浮かべた。
「夜分にごめんね?あまりにも月が綺麗だったから」
「ああ」
窓の外を眺める横顔が蒼く清い光に照らされる。
ここからも月は正面から見えない。
家主に迷惑をかけるの本意じゃないし、諦めて戻ろうかとしたところで手を握られた。ひやりとした指先が指に絡む。
「こっちです」
長く続く蒼い廊下を、その手に引かれ進んだ。
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