7 / 140
7
しおりを挟むにっこりとお手本のような微笑みを浮かべた。
慇懃無礼に見えず、柔らかで、だけど品を感じさせるような笑みを。
敵意も下心もありませんよー!アピールをしてからカイルへと向き直る。
「折角だけど今日は遠慮するよ」
「えっ」
面倒臭いのが御免なのはこっちも同じ。
いやまぁ、ミーハー心としては若干お話し、いやいや近場で観察してみたいなーなんて気持ちも皆無ではない。
だけどこのままランチしたってぜってぇ気まずいっしょ?
取り繕うぐらいはしてくれるかもだけど確実に迷惑だし。
第一、俺の信条としてはあんまし目立ちたくないのよ。
なによりお偉方さんたちに悪印象持たれたくねぇ。
だって相手、国のトップ中のトップじゃん。
ランチごときで将来棒に振るとか嫌すぎる。
ってことで、一人黄昏てる系男子といたしましてはどっかでぼっち飯してきます。
別に友達いねぇわけじゃねぇからな。
誰に言い訳してんだ俺。
「初日で皆様もお疲れだろうし、昼食の時間ぐらい気心の知れた相手同士の方がいいだろう。さ、ただでさえ混んでいるから早く並んだ方がいいよ」
「……ラファエル」
「誘ってくれてありがとう」
一応礼を言ってから、王子たちに食堂の隅を指した。
窓際に面した食堂の奥、観葉植物とパーテーションの側のエリアはここから見る限り空席がありそうだった。
「あの辺、穴場なんですよ。いい感じに周囲の視線も遮れますしお勧めです」
さらりと告げて礼をするとその場を去った。
向かうは食堂の入り口から向かって右側。
食堂はフードコートのような造りになっている。
幾つかの配膳口があり、食べたいメニューがある場所に並び受け取るスタイル。
フードコートと呼ぶには内装もメニューも豪華すぎるが……。
俺が向かったのはテイクアウト用の軽食のコーナだ。
並んでいるのは大体が新入生でなく在学生だ。
その列に並びながらさて、なにを食べるかと頭を悩ます。
あれもこれもと目移りしてしまう俺は即決できないタイプだ。
さくさく進む列の順番が来る頃にはなんとかギリ昼食決定。
本日のランチはサンドイッチにカップの日替わりスープ。
本日はショートパスタ入りミネストローネ。
さんざん悩んだわりに無難な選択に落ち着いた。
外すのが怖くて意外と冒険できないタイプですがなにか?
おばちゃんから包みを受け取りちらりと目に入った隣の列にはズラッーと長い大行列。
なにせ生徒はお貴族様。
座ってりゃ目の前に食事が運ばれる生活が当たり前な彼ら彼女らにとって自分で並んで運ぶなんてはじめての経験な奴が大半。
もたもた手間取ったり、トレーを両手で支え零さないよう牛歩の歩みで進んだりと大変そうだ。
学園名物、新入生あるあるである。
王子ら昼休み間に合うといいけど……。
他人事のようにそう思いつつ、やっぱり他人事なのでそう深くは気に留めもせず昼食片手にその場を去った。
248
お気に入りに追加
994
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます
はるはう
BL
突然の過労死。そして転生。
休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。
転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。
そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・
知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
悪役に好かれていますがどうやって逃げれますか!?
菟圃(うさぎはたけ)
BL
「ネヴィ、どうして私から逃げるのですか?」
冷ややかながらも、熱がこもった瞳で僕を見つめる物語最大の悪役。
それに詰められる子悪党令息の僕。
なんでこんなことになったの!?
ーーーーーーーーーーー
前世で読んでいた恋愛小説【貴女の手を取るのは?】に登場していた子悪党令息ネヴィレント・ツェーリアに転生した僕。
子悪党令息なのに断罪は家での軟禁程度から死刑まで幅広い罰を受けるキャラに転生してしまった。
平凡な人生を生きるために奮闘した結果、あり得ない展開になっていき…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる