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第四章 革命
第三十七話
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この一通りの流れを各ブロックで同時に約千人の構成員が行い、軍人達をβ居住区へ釘付けにする。
そして、残りの千人の構成員は手薄になったα居住区に潜入し、それぞれオメガの城を目指すことになっている。
「『GHOST』――実体は無くても、組織としての機能は確かに存在したんだな」
城の者達も、まさか幽霊に襲われるとは、思いもしなかっただろう。しかし、城に対する積年の恨みは大きな一つのうねりとなり、今眼前に実体として現れるまでになった。それはまもなく、結実することになる。
最後の門を突き破り、城へ続く橋に差し掛かったところで車が停車した。俺はずっと身に付けていた腕時計を外し、オリヴァーに手渡す。
「本当にいいのか?」
「ああ。その代わり上手くやってくれよ」
俺は笑ってオリヴァーの腕を肘で小突いた。今俺が笑っていられるのは、ユンが必ず俺を守ってくれると信じられるからだ。
出会った日から今まで何度救われたか知れない。今回もきっと、ユンと一緒なら上手くいくと根拠のない自信が湧いてくるのだ。
オリヴァーとリェンを降ろし、運転をユンに代わってもらって再び車が発進する。
「運転上手いじゃねえか。本当に初めてか?」
リェンの滅茶苦茶な運転と比べて、左右に振れないから気持ち悪くならないし、安心して任せられる。
「エイクが僕によく言うだろう。器用なんだ」
「はははっ、嫌味な奴!」
城の正面を守っている警備兵が全速力で近付いてくる車に慌てて逃げ出すのを見る。
「エイク、タイミングを間違えないで!」
「ああ、行くぞ!」
車がそのまま正面入り口に突っ込む、衝突する寸前に車のドアを開けて飛び出した。爆発炎上する車を横目に地面を転がる。
「エイク! 頭から血が……!」
俺の側に心配そうに駆け寄るユンを見て、無事だったことに安堵する。俺の方はと言うと、転がった時に擦ったのか、額から血が垂れていた。
数分すれば固まって止まるようなかすり傷だが、ユンはまるで骨が折れたぐらいの心配の仕方で、思わず苦笑する。
「そんなことより、こいつらぶっ倒さなきゃ先に進めねえぞ」
血相を変えて逃げ出していたはずの警備兵が戻ってきていて、俺達は十数人に取り囲まれていた。
「また十年前の僕の特技を披露するだけさ。今の方がずっと上手くできるよ」
「あのガキどもと違って、今回は全員が電流の流れる武器を握ってるけどな」
電流棒はリェンに渡してある。俺達は何の武器もない、丸腰の状態だ。俺が心配して声を掛けたのを、ユンは笑いながら腕を回し、「見てて」とにじり寄ってくる警備兵に何の躊躇もなく近付いた。
そして電流棒の間合いに入り、一人の警備兵が電流棒を振るった瞬間、ユンはさっきまでの歩みが嘘だったのかという速度で間合いの内側に入り、警備兵の腕を掴んで投げ飛ばした。
その先に居た警備兵数人にぶつかり、電流が運悪く流れてしまったのだろう。全員倒れた警備兵数名が気を失って動かなくなった。
そして、残りの千人の構成員は手薄になったα居住区に潜入し、それぞれオメガの城を目指すことになっている。
「『GHOST』――実体は無くても、組織としての機能は確かに存在したんだな」
城の者達も、まさか幽霊に襲われるとは、思いもしなかっただろう。しかし、城に対する積年の恨みは大きな一つのうねりとなり、今眼前に実体として現れるまでになった。それはまもなく、結実することになる。
最後の門を突き破り、城へ続く橋に差し掛かったところで車が停車した。俺はずっと身に付けていた腕時計を外し、オリヴァーに手渡す。
「本当にいいのか?」
「ああ。その代わり上手くやってくれよ」
俺は笑ってオリヴァーの腕を肘で小突いた。今俺が笑っていられるのは、ユンが必ず俺を守ってくれると信じられるからだ。
出会った日から今まで何度救われたか知れない。今回もきっと、ユンと一緒なら上手くいくと根拠のない自信が湧いてくるのだ。
オリヴァーとリェンを降ろし、運転をユンに代わってもらって再び車が発進する。
「運転上手いじゃねえか。本当に初めてか?」
リェンの滅茶苦茶な運転と比べて、左右に振れないから気持ち悪くならないし、安心して任せられる。
「エイクが僕によく言うだろう。器用なんだ」
「はははっ、嫌味な奴!」
城の正面を守っている警備兵が全速力で近付いてくる車に慌てて逃げ出すのを見る。
「エイク、タイミングを間違えないで!」
「ああ、行くぞ!」
車がそのまま正面入り口に突っ込む、衝突する寸前に車のドアを開けて飛び出した。爆発炎上する車を横目に地面を転がる。
「エイク! 頭から血が……!」
俺の側に心配そうに駆け寄るユンを見て、無事だったことに安堵する。俺の方はと言うと、転がった時に擦ったのか、額から血が垂れていた。
数分すれば固まって止まるようなかすり傷だが、ユンはまるで骨が折れたぐらいの心配の仕方で、思わず苦笑する。
「そんなことより、こいつらぶっ倒さなきゃ先に進めねえぞ」
血相を変えて逃げ出していたはずの警備兵が戻ってきていて、俺達は十数人に取り囲まれていた。
「また十年前の僕の特技を披露するだけさ。今の方がずっと上手くできるよ」
「あのガキどもと違って、今回は全員が電流の流れる武器を握ってるけどな」
電流棒はリェンに渡してある。俺達は何の武器もない、丸腰の状態だ。俺が心配して声を掛けたのを、ユンは笑いながら腕を回し、「見てて」とにじり寄ってくる警備兵に何の躊躇もなく近付いた。
そして電流棒の間合いに入り、一人の警備兵が電流棒を振るった瞬間、ユンはさっきまでの歩みが嘘だったのかという速度で間合いの内側に入り、警備兵の腕を掴んで投げ飛ばした。
その先に居た警備兵数人にぶつかり、電流が運悪く流れてしまったのだろう。全員倒れた警備兵数名が気を失って動かなくなった。
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