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第一章 第一の秘密
第十二話
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「これ新商品なんだよ。サラミ味だって。食べてみようよ」
そう言って子供のような笑顔を見せて、近くにあったスナックの袋を開封する。俺はユンに言われるまま、スナックを口に放り込んだ。人工肉のサラミよりも、サラミ味の方が味が濃くて美味しい。
「ビールに合いそうだな」
「じゃあ、ビール飲もうか。冷えてないけど」
冷蔵庫はなかなか捨てられないし電気を消費し過ぎるので、この秘密基地には置いていない。流石に地下電線からくすねたら、ここがバレてしまう。冷えたビールが飲めない、それがこの場所で唯一残念なところだ。
「温くても美味い!」
早速ビールをプラボトルのまま飲む。ビールもやはりαにしか支給されていないものだから、質が全く違う。
「今日は目一杯飲もうぜ!」
「ははっ、そうだね!」
――俺達が会うのは、今日で最後かもしれない。そんなことを考えそうになる度に、酒を煽った。昔話をして、笑い転げて、ずっとこの時間が永遠に続くような気さえするほど、楽しかった。
気が付くと、俺はユンの膝を枕にして眠っていた。ちょっと浮かれて飲み過ぎたようだ。
身体を起こすと、ユンも静かに目を閉じていた。じっとその横顔を見詰める。
「ユン」
声を掛けたが、呼吸音以外は何も聞こえない。外はすっかり太陽光が消されて、夜になっている。眠っているようだ。
俺は起こさないようにそっと顔を近付け、ユンの唇に唇を重ねた。
――俺には、二つ「秘密」がある。一つは――親友のユンベルト・フォルスターを愛していること。
唇を離した瞬間、感情が溢れて俺は廃工場の外に駆け出した。真っ暗な空と工場の明かりだけが灯る中、蹲って声を殺して泣いた。
どうして俺はβなんだと思わない日は無かった。俺がΩだったら、ユンと番になれたかもしれない。せめてαだったら、ずっと親友として一緒に居られたかもしれないのに、と。
ああ、俺が城の機械に測定器を忍ばせたのは、世界の真理を知りたいだけじゃない。きっと、少しでもユンの居る場所と繋がりを持っていたかったからだ。もう側に居られなくても、会えなくなっても、ユンを想っていたかったから。
一言、好きだと言えばよかった? そうしたら、少しの間でも恋人で居られたかもしれない?
そんなのは、夢物語だ。αであるユンが俺を受け入れるはずがない。拒絶されて親友でいられなくなるくらいなら、俺のこんなちっぽけな感情は押し込めておくべきだ。
ユンはおとぎ話の王子だ。城のお姫様と結ばれて幸せに暮らさなければ可笑しい。俺のように、小汚い工場労働者と結ばれる話なんて、世界のどこを探してもないのだ。
大きく息を吐き出す。呼吸を整えて、涙を拭って立ち上がった。人工太陽が灯るまで、あと数時間。ユンと居られる最後の夜だ。少しでも、側に居たい。
工場の中に戻ると、ユンはさっきと同じ格好のまま眠っていた。俺はその隣に寄り添うように座り、彼の手を握った。これくらいのわがままなら、許されるだろうか。
ユンのごつごつとした大きな、温かい手をぎゅっと握り締めて、目を閉じた。どうか、このまま目が覚めないでくれと願いながら。
そう言って子供のような笑顔を見せて、近くにあったスナックの袋を開封する。俺はユンに言われるまま、スナックを口に放り込んだ。人工肉のサラミよりも、サラミ味の方が味が濃くて美味しい。
「ビールに合いそうだな」
「じゃあ、ビール飲もうか。冷えてないけど」
冷蔵庫はなかなか捨てられないし電気を消費し過ぎるので、この秘密基地には置いていない。流石に地下電線からくすねたら、ここがバレてしまう。冷えたビールが飲めない、それがこの場所で唯一残念なところだ。
「温くても美味い!」
早速ビールをプラボトルのまま飲む。ビールもやはりαにしか支給されていないものだから、質が全く違う。
「今日は目一杯飲もうぜ!」
「ははっ、そうだね!」
――俺達が会うのは、今日で最後かもしれない。そんなことを考えそうになる度に、酒を煽った。昔話をして、笑い転げて、ずっとこの時間が永遠に続くような気さえするほど、楽しかった。
気が付くと、俺はユンの膝を枕にして眠っていた。ちょっと浮かれて飲み過ぎたようだ。
身体を起こすと、ユンも静かに目を閉じていた。じっとその横顔を見詰める。
「ユン」
声を掛けたが、呼吸音以外は何も聞こえない。外はすっかり太陽光が消されて、夜になっている。眠っているようだ。
俺は起こさないようにそっと顔を近付け、ユンの唇に唇を重ねた。
――俺には、二つ「秘密」がある。一つは――親友のユンベルト・フォルスターを愛していること。
唇を離した瞬間、感情が溢れて俺は廃工場の外に駆け出した。真っ暗な空と工場の明かりだけが灯る中、蹲って声を殺して泣いた。
どうして俺はβなんだと思わない日は無かった。俺がΩだったら、ユンと番になれたかもしれない。せめてαだったら、ずっと親友として一緒に居られたかもしれないのに、と。
ああ、俺が城の機械に測定器を忍ばせたのは、世界の真理を知りたいだけじゃない。きっと、少しでもユンの居る場所と繋がりを持っていたかったからだ。もう側に居られなくても、会えなくなっても、ユンを想っていたかったから。
一言、好きだと言えばよかった? そうしたら、少しの間でも恋人で居られたかもしれない?
そんなのは、夢物語だ。αであるユンが俺を受け入れるはずがない。拒絶されて親友でいられなくなるくらいなら、俺のこんなちっぽけな感情は押し込めておくべきだ。
ユンはおとぎ話の王子だ。城のお姫様と結ばれて幸せに暮らさなければ可笑しい。俺のように、小汚い工場労働者と結ばれる話なんて、世界のどこを探してもないのだ。
大きく息を吐き出す。呼吸を整えて、涙を拭って立ち上がった。人工太陽が灯るまで、あと数時間。ユンと居られる最後の夜だ。少しでも、側に居たい。
工場の中に戻ると、ユンはさっきと同じ格好のまま眠っていた。俺はその隣に寄り添うように座り、彼の手を握った。これくらいのわがままなら、許されるだろうか。
ユンのごつごつとした大きな、温かい手をぎゅっと握り締めて、目を閉じた。どうか、このまま目が覚めないでくれと願いながら。
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