オメガの城

藤間留彦

文字の大きさ
3 / 45
第一章 第一の秘密

第三話

しおりを挟む
 二百年前、地球に隕石が衝突した。隕石を観測できたのがわずか数時間前だったため、隕石衝突時に発生した津波と衝撃波で地球上の多くの物が薙ぎ倒され、人間を含む地球上の八割以上の生物が死滅した。そして、このシェルターに避難した数千万の人間だけが生き残ったのだ。

 しかし、人類を襲ったのは、それだけではなかった。次々と女性が、高熱を出して倒れていったのだ。
 荒廃した世界で必死に原因を突き止めようと生き残った医者、研究者達は力を尽くした。そして、その原因は隕石によって撒き散らされた宇宙由来の未知のウイルスだと判明した。そのウイルスは女性の子宮に感染すると細胞を侵食、腐敗させる、感染すれば致死率百パーセントの恐ろしいものだったという。

 原因が判明した頃には、ほとんどの女性は死に絶えていた。数十名の女性は以前に子宮を取り除く手術をしていたためウイルスに感染せずに済み、生き残ったとされる。

 そうして次に人類が考えたのは、どうやって生活するかということだった。そもそも隕石が衝突した後、シェルターの外は風速八十メートルの暴風が吹き荒れる荒野となっていて、外から物資を補給することはできない。一年余りでシェルター内にあった様々な物資は枯渇、暴徒と化した一部の人間による強奪と殺人が起こったが、元軍人と元政治家たちの手によって鎮圧された。

 食糧の恒久的な確保のため、様々な野菜類の生産を試みたが、シェルター内にある種と人工太陽と名付けられた天井に取り付けられた灯りで栽培できたのは麦と大豆だけだったという。そのため必要な栄養素を摂取できるサプリメントと麦、大豆を混ぜ合わせた合成食品が、この世界の主食となり、嗜好品は人工甘味料と麦や大豆から精製されるビールと焼酎だけ。それでも、味は人工調味料で変えられるし、大豆から人工肉を生成することができたから、さして問題はなかったという。

 その上、麦と大豆からバイオ燃料や紙なども製造できた。燃料も確保され、更にバイオ燃料からはプラスチックを製造、俺達の工場で生産している組み込み機器も大部分がプラスチックで作られている。鉄は城の周辺の地下で採取されるものがあるが、あと百年ほどで枯渇すると言われているから、回路や配線部分にしか使われない。

 こうして資源を得ることができ、辛うじて命を繋ぐことができた人類にとって、最終命題は「どうやって子孫を残すか」ということだった。

 生き残った女性の中で卵巣の残っていた者から採取した卵と男性の精子から、受精卵を作ることはできたそうだ。まだまだ資源が乏しい中ではあったが、子宮を模した羊水の中で初めての子供が人工的に作られた。
 しかし、成長過程でその子供が女性であった場合、ウイルス感染により亡くなる事例が多発。遺伝子の研究をしていたジョン・ステイシーなる人物によって、精子の中でY染色体を持つものだけを選り分けて受精させるようになった。そうして女性は生まれなくなり、百年以上前に絶滅した、とされる。

 更にステイシー教授は人工的に受精させ人工的に成長させた者のうち八割が健康面に問題があることを指摘。記録によると初年度に誕生した子供十名のうち四名は一年と経たず亡くなり、三名は五年以内に亡くなっている。最長の者でも十一歳だった。

 試験管ベビーからの脱却を図るため、教授主導のもと、男性の遺伝子に変異を起こし、腸管を変形させて疑似子宮と卵巣を作る研究が行われるようになる。これが、後にΩと呼ばれる存在である。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

処理中です...