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第2話 運命の出逢い①
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いつ眠ったか覚えていなくても、重い瞼を持ち上げて太陽の光を感じた時に、眠っていたという事実だけが横たわっている。そんな朝を何度迎えたか知らない。
ベッドから身体を起こし、窓を開け放つと、わずかに湿り気を帯びたひやりとした風が頬を撫でた。眩しいほどの光に照らされて、中庭の噴水が輝いている。小鳥が切り揃えられた木々の上で羽繕いをし囀る。
舌打ちをしたくなるほどの光景に、すぐに窓を閉めた。少しして足音がドアの外から聞こえてくる。
「お目覚めですか、旦那様」
ノックの後、声を掛けられる。執事長のクラウスだ。
「ええ、クラウス。どうぞ」
ドアが開き、銀色の巻毛のカツラに水色のジュストコールとウエストコート、グレーの半ズボンを着用した初老の男性、クラウスが部屋に入ってくる。そしてクローゼットを開けて今日の服をどうするか尋ねられる。いつもなら「君のお勧めで頼むよ」と適当に済ますが、今夜晩餐会に呼ばれているから、あまり着替えないで済むようにある程度合わせておこうと考える。
「今日の晩餐会はいつもの青のテールコートで揃えるつもりなので、ウエストコートやブラウスはそれに合わせてもらえますか?」
「畏まりました」
クラウスが手際よく服を選んでいる間に寝巻きの白のシャツとズボンを脱ぎ、ベッドの上に置いた。順に手渡される服を着用する。濃紺のブラウスに青の同系色の糸で刺繍の施されたモーニングコート、ウエストコートに、濃紺のブリーチズだ。晩餐会の時にはモーニングコートとウエストコートを変えるだけで済むように配慮されている。
白のタイツと黒の革靴を履いて、着替えが終わると部屋を出た。階段を下り中庭を通って礼拝堂に向かう。
──どうか、この世に神が御座すのならば、僕の詰まらない人生を一日も早く終わらせてください。
祭壇に向かい十年以上毎日同じ祈りを捧げ続けているが、神が応えてくれる気配は未だに無い。恐らく神など居ないのだろう。もしくは僕のような人間の願いは聞き入れないのか。どちらにしろ最早信仰心など失っていて、形だけの行為だった。
礼拝堂を出て食堂に向かう。途中すれ違ったメイドのアンネとビアンカに挨拶をし、クラウスが椅子を引いていつもの独りのテーブルついた。
給仕係のドミニクが前菜を運んでくる。少食なのであまり出さないでくれと頼んでいるから、皿の真ん中に小さく生ハムとチーズが盛られていた。
じゃがいものスープ、牛肉の煮込みとパンを食べると満腹状態になってしまった。
「今日も美味しかったとグスタフに伝えてください」
「かしこまりました」
ドミニクにそう声を掛けつつ、朝から肉なんて重過ぎる、半分残せば良かった、と思う。そして午後にはヴェールマン伯爵の晩餐会のため出立しなければならないため、早速仕事に取り掛かろうと食堂を出た。
領内の作物の生育状況や納税率、隣国との国境警備の状況、昨年から拡大した絹織物の商いの確認など。終いには取りまとめた住民の陳情について対応を判断しなけばならない。
国王から与えられた領土が広い分仕事量も膨大だ。父が適当に熟してきたツケが、僕の代で山程舞い込んできているせいでもあるのだけれど。
ベッドから身体を起こし、窓を開け放つと、わずかに湿り気を帯びたひやりとした風が頬を撫でた。眩しいほどの光に照らされて、中庭の噴水が輝いている。小鳥が切り揃えられた木々の上で羽繕いをし囀る。
舌打ちをしたくなるほどの光景に、すぐに窓を閉めた。少しして足音がドアの外から聞こえてくる。
「お目覚めですか、旦那様」
ノックの後、声を掛けられる。執事長のクラウスだ。
「ええ、クラウス。どうぞ」
ドアが開き、銀色の巻毛のカツラに水色のジュストコールとウエストコート、グレーの半ズボンを着用した初老の男性、クラウスが部屋に入ってくる。そしてクローゼットを開けて今日の服をどうするか尋ねられる。いつもなら「君のお勧めで頼むよ」と適当に済ますが、今夜晩餐会に呼ばれているから、あまり着替えないで済むようにある程度合わせておこうと考える。
「今日の晩餐会はいつもの青のテールコートで揃えるつもりなので、ウエストコートやブラウスはそれに合わせてもらえますか?」
「畏まりました」
クラウスが手際よく服を選んでいる間に寝巻きの白のシャツとズボンを脱ぎ、ベッドの上に置いた。順に手渡される服を着用する。濃紺のブラウスに青の同系色の糸で刺繍の施されたモーニングコート、ウエストコートに、濃紺のブリーチズだ。晩餐会の時にはモーニングコートとウエストコートを変えるだけで済むように配慮されている。
白のタイツと黒の革靴を履いて、着替えが終わると部屋を出た。階段を下り中庭を通って礼拝堂に向かう。
──どうか、この世に神が御座すのならば、僕の詰まらない人生を一日も早く終わらせてください。
祭壇に向かい十年以上毎日同じ祈りを捧げ続けているが、神が応えてくれる気配は未だに無い。恐らく神など居ないのだろう。もしくは僕のような人間の願いは聞き入れないのか。どちらにしろ最早信仰心など失っていて、形だけの行為だった。
礼拝堂を出て食堂に向かう。途中すれ違ったメイドのアンネとビアンカに挨拶をし、クラウスが椅子を引いていつもの独りのテーブルついた。
給仕係のドミニクが前菜を運んでくる。少食なのであまり出さないでくれと頼んでいるから、皿の真ん中に小さく生ハムとチーズが盛られていた。
じゃがいものスープ、牛肉の煮込みとパンを食べると満腹状態になってしまった。
「今日も美味しかったとグスタフに伝えてください」
「かしこまりました」
ドミニクにそう声を掛けつつ、朝から肉なんて重過ぎる、半分残せば良かった、と思う。そして午後にはヴェールマン伯爵の晩餐会のため出立しなければならないため、早速仕事に取り掛かろうと食堂を出た。
領内の作物の生育状況や納税率、隣国との国境警備の状況、昨年から拡大した絹織物の商いの確認など。終いには取りまとめた住民の陳情について対応を判断しなけばならない。
国王から与えられた領土が広い分仕事量も膨大だ。父が適当に熟してきたツケが、僕の代で山程舞い込んできているせいでもあるのだけれど。
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