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第5章 家族
第7話
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通信は、前よりほんの少しだけ長く続いた。再会の約束はしない。お別れも言わない。「元気で」「ありがとう」と言い合って、邂逅は終わった。
玉が消えた後、ラトゥリオ様は疲れたイレミオを抱き上げて労い、僕は祖父母と伯母にもみくちゃにされた。
「事情があったにしても、ひと月も黙ってるなんて人が悪いわっ」
「うわっ、ゾイさん苦しいっ」
「なーに? ちゃんと呼びなさい。ゾイ伯母さん、でしょ?」
「うん……ゾイ伯母さん。おじいちゃん、おばあちゃん」
「レオ様……ああ、何ていうことでしょう」
「話し方の端々に、同じ年頃のカルディオを思い出していたものだが。まさか孫とは」
黙って見守っていたラトゥリオ様は、イレミオを下ろしておじいちゃんたちに頭を下げた。
「すまぬ。俺の不手際で、お前たちから息子を奪ってしまった。あらためて詫びを言わせてくれ」
息子を、弟を失った三人は、顔を見合わせて優しく微笑んだ。代表して口を開いたのは、おばあちゃんだった。
「陛下、お顔をお上げください。私共は、確かに寂しい思いをいたしました。息子がどこかで生きていてくれるようにと、祈らずに過ごした日はありません。けれど、陛下を責めたことは心の中でさえも一度もございません」
「……なぜ」
「お耳をお貸しくださいませ。レオ様も」
「ん? 何?」
僕たちの耳に囁かれたのは、シンプルな真実。
「人を好きになることは、止められません。そうでしょう?」
「おばあちゃん……」
アントス様との恋が引き起こした事態を、一切責めるつもりはないと。何て強い人なんだろう。おじいちゃんも頷いている。きっとおじいちゃんとおばあちゃんにも、素敵なロマンスがあったんだな。
「なーに? 僕も聞きたいー!」
内緒話に入れてもらえなかったイレミオがじたばたしている。
「はいはい、大人におなりになったらね。イレミオ様、おやつにいたしましょう。お手伝いしてくださいますか?」
「うん! 僕、最後に残ったクリーム舐める!」
二人の賑やかな声に、日常が戻ってくる。僕は姿勢を正し、祖父母に丁寧にお辞儀をした。
「おじいちゃん、おばあちゃん。孫のレオです。よろしくお願いします。これから、いろいろ教えてください。アストゥラのこと、父さんのこと。僕が務めを果たせるように、力を貸してください」
「ああ。私たちにできることなら、何でも」
「陛下と喧嘩をしたら、ここへ逃げていらっしゃい。あなたのお家だと思ってね」
「いいの?」
「アエラ、それは……まあ、仕方なかろう。息抜きの場所は必要だからな」
ちょっと慌てて、拗ねて。ラトゥリオ様のそんな顔は初めてで、いとおしく思った。関わる人が増えるたび、彼の新しい面を知って、もっと好きになる。
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