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第5章 家族
第6話
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ひと月が過ぎた。ラトゥリオ様と僕、それにイレミオの三人は、ゾイさんの休暇に合わせて父さんの実家を訪ねた。例のことは伏せてある。がっかりさせるといけないから。
「これは陛下! レオ様、イレミオ様も」
「そのままでよい。体はどうだ」
父さんの父さん、つまり僕のおじいちゃんに当たる人は、河川の護岸工事の監督をしている時、遊んでほしくて出てきたドラゴンに押し倒されて足を折ってしまった。
「明日辺りからは起きてみてもよいだろうと。先ほど、ハーラ先生が」
「それは何よりだ」
ラトゥリオ様が話している隙に、僕は父さんの母さん――僕のおばあちゃんだよね!――を手伝ってお茶の用意をした。イレミオは、ベッドの下にしゃがみ込んで遊ぶ振りをした。
お茶を人数分、ベッドのそばのテーブルに置いた時、イレミオが叫んだ。
「できた!」
あの玉が手の中に浮かんでいる。イレミオは慎重に向きを変え、おじいちゃんに手の中のものを見せた。
「何でしょうか、これは? ……カルディオ? まさか……」
「何ですって!?」
おばあちゃんも、おじいちゃんの横から覗き込んだ。そこへ、扉が開いてゾイさんが現れた。
「ただいまー。お買い物してたら遅くなっちゃって。町でハーラ先生に会ったわ。あら、陛下! 一体どうなさったんです?」
「ゾイ、来てみなさい! カルディオよっ」
「ええっ!?」
三人がそろったところで、玉の向こうの父さんが口を開いた。
「父上、母上、姉上。心配をかけて申し訳ない」
三人は手を握り合い、涙を浮かべた。無理もない。彼らにとっては十八年も行方が知れなかった家族なんだ。
「夢ではないのか、これは……」
「現実ですよ、父上。私はあの時、別の世界に飛ばされて命が助かったのです。よき伴侶を得て、幸せに、元気に暮らしております。妻の理恵です」
紹介された母さんが、三人に頭を下げた。ゾイさんは「あら?」という顔で僕と母さんを見比べた。僕は母さん似だから。小さく頷くと、今にも叫び出しそうに顔を真っ赤にした。
「おや、どうしました? 姉上」
「どうしましたじゃないわよ! その笑い方、分かってるくせにっ。カルディオ、あなた息子がいるのね!? 名前だって当ててみせるわよっ」
「礼生」
父さんが告げた名に、おじいちゃん、おばあちゃんがそろってこっちを見た。僕はさっきよりもはっきりと頷いた。
「その子は、あなた方の孫です。元々、そちらの世界にお返しするべき子だったのです。かわいがってやってください」
「どうかよろしくお願いいたします」
何度も頭を下げる母さんに、おばあちゃんが優しく話しかけた。
「孫をありがとう。みんなに好かれて、元気で暮らしていますよ」
「ありがとうございます」
涙ぐむ母さんの肩を抱きながら、父さんはラトゥリオ様を見た。
「ところで陛下、そちらではあれからどのくらいの時が流れたのですか?」
「ひと月だ」
「こちらは一週間です。一定の間隔でずれているというわけでもなさそうですね」
「ああ。今後はその辺りの検証が必要になってくるだろう」
「こちらからの通信手段はありませんが……もしまたこうして繋がれるのならば、私がこちらの世界で感知した異変をお伝えするぐらいはできるでしょう」
「それは助かる。無論、何事もないよう祈っている」
ふたつの世界は、ほぼ同時に存在しているんだ。物凄い過去でもなければ、手の届かない未来でもない。僕は本当に、結婚して遠くに引っ越したぐらいの感覚で、父さんとも協力して務めを果たしていけるんだ。
「これは陛下! レオ様、イレミオ様も」
「そのままでよい。体はどうだ」
父さんの父さん、つまり僕のおじいちゃんに当たる人は、河川の護岸工事の監督をしている時、遊んでほしくて出てきたドラゴンに押し倒されて足を折ってしまった。
「明日辺りからは起きてみてもよいだろうと。先ほど、ハーラ先生が」
「それは何よりだ」
ラトゥリオ様が話している隙に、僕は父さんの母さん――僕のおばあちゃんだよね!――を手伝ってお茶の用意をした。イレミオは、ベッドの下にしゃがみ込んで遊ぶ振りをした。
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「ゾイ、来てみなさい! カルディオよっ」
「ええっ!?」
三人がそろったところで、玉の向こうの父さんが口を開いた。
「父上、母上、姉上。心配をかけて申し訳ない」
三人は手を握り合い、涙を浮かべた。無理もない。彼らにとっては十八年も行方が知れなかった家族なんだ。
「夢ではないのか、これは……」
「現実ですよ、父上。私はあの時、別の世界に飛ばされて命が助かったのです。よき伴侶を得て、幸せに、元気に暮らしております。妻の理恵です」
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「おや、どうしました? 姉上」
「どうしましたじゃないわよ! その笑い方、分かってるくせにっ。カルディオ、あなた息子がいるのね!? 名前だって当ててみせるわよっ」
「礼生」
父さんが告げた名に、おじいちゃん、おばあちゃんがそろってこっちを見た。僕はさっきよりもはっきりと頷いた。
「その子は、あなた方の孫です。元々、そちらの世界にお返しするべき子だったのです。かわいがってやってください」
「どうかよろしくお願いいたします」
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「ありがとうございます」
涙ぐむ母さんの肩を抱きながら、父さんはラトゥリオ様を見た。
「ところで陛下、そちらではあれからどのくらいの時が流れたのですか?」
「ひと月だ」
「こちらは一週間です。一定の間隔でずれているというわけでもなさそうですね」
「ああ。今後はその辺りの検証が必要になってくるだろう」
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「それは助かる。無論、何事もないよう祈っている」
ふたつの世界は、ほぼ同時に存在しているんだ。物凄い過去でもなければ、手の届かない未来でもない。僕は本当に、結婚して遠くに引っ越したぐらいの感覚で、父さんとも協力して務めを果たしていけるんだ。
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