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第4章 元カレとお世継ぎ問題
第8話
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作業を終えて一階へ戻ると、二人の王様が中庭の方から歩いてくるところだった。黒と白の長身の一対が、マントをふわりと揺らし、仲睦まじく語らっている。世界を半分ずつ背負って。
ドキンと胸が強く打った。ドキドキドキドキ……音はどんどん大きくなる。周りに響いたらどうしよう。アントス様と打ち解けて話すラトゥリオ様。大人同士の寛いだ空気が漂っている。
十代で世界の反対側に別れ別れになってしまったけど、彼らの時間は育っていたんだ。思いやり、支え合い、同じ早さで成長してきた。だから今、同じ歩調で、同じものを見て、前へ進んでいける。会うのは十五年ぶりでも、心の中で手を携えて、お互いのことを毎日想ってきたんだ。恋人ではなくなっても、親友として、盟友として、相手の人生の中に存在し続けることを選んだ。運命に翻弄され、仕方なく追いやられた道ではなく、彼らの選択なんだ。だからこそ、僕のために命を賭けて、アントス様に後を任せるという案も生まれた。思いつく方も、承諾する方も普通じゃない。絶大な信頼関係の証だったんだ。
二人が醸し出すのは、過去の悲しみではなく、『今』から『未来』をつくり出す生命力。彼らが国のトップなら安泰は約束されていると、何の疑いもなく信じられる。統治者としての存在の大きさをあらためて実感し、ラトゥリオ様に惚れ直してしまった。僕に見せる甘々な顔と違いすぎる!
「レオ」と、彼の口が動いた。難しいことは考えず、駆け寄った。二人に優しく見下ろされ、アントス様の柔らかい声が降ってきた。
「今から地下に行くところだったんだ。帰る前に、君に挨拶をしたくてね」
「えっ。もうお帰りになるんですか」
まだ数時間しか経っていないのに。
「目的は果たせたからね。ありがとう。君のおかげで、本当に久しぶりにラトゥリオに会えたよ」
「アントス様……」
何か言いたい。僕の方こそ? お会いできて嬉しかったです? いや、会えたら聞きたいと思っていたのは――。
ラトゥリオ様は、僕たちの視線が交わるのを黙って見守っている。緑の瞳がキラリと光り、白と金の王様が僕の名を呼んだ。
「レオ」
「はい……ンッ!?」
な、何でキス!? 避ける間もない早業。翠玉が細められ、舌がちろりと唇をなぞった。花の中心に囚われて抜け出せなくなるような口づけ。片腕で腰を抱かれているだけなのに、すごい力で逃げられない。離してくださいー!
ぐいっと肩を引かれた。ラトゥリオ様だ。はぁ……こっちもすごい力だ。
「ハハッ、焦ってる」
「どういうつもりだ、アントス!」
「君は僕のハートを持ち去ってしまった。だから君が愛する存在は僕のものだ」
「なぜそうなる」
ラトゥリオ様は僕を背中に隠して凄んだ。あの、気持ちは分かりますけど穏便に。これじゃ十五年ぶりの感動の再会が台無しに……僕のせいじゃないけど! 絶対!
「うーん。前半の部分にもう少し反応が欲しいところだね。……レオ」
「はい……」
おずおずと顔を出すと、アントス様は晴れやかに笑っていた。
「ラトゥリオのこと、頼んだよ」
それだけ言って、マントを翻して歩いていく。
「あいつは、まったく……」
額に手を当てて頭痛を堪えるような仕草を見せながらも、黒の王は僕の肩を抱いて微笑んだ。
「あの」
「うん?」
「お見送り……してきていいですか」
あの人は、反対側の世界へ帰ってしまう。
「構わんが、キスは駄目だ。それ以上のこともな」
「気を付けますっ」
ドキンと胸が強く打った。ドキドキドキドキ……音はどんどん大きくなる。周りに響いたらどうしよう。アントス様と打ち解けて話すラトゥリオ様。大人同士の寛いだ空気が漂っている。
十代で世界の反対側に別れ別れになってしまったけど、彼らの時間は育っていたんだ。思いやり、支え合い、同じ早さで成長してきた。だから今、同じ歩調で、同じものを見て、前へ進んでいける。会うのは十五年ぶりでも、心の中で手を携えて、お互いのことを毎日想ってきたんだ。恋人ではなくなっても、親友として、盟友として、相手の人生の中に存在し続けることを選んだ。運命に翻弄され、仕方なく追いやられた道ではなく、彼らの選択なんだ。だからこそ、僕のために命を賭けて、アントス様に後を任せるという案も生まれた。思いつく方も、承諾する方も普通じゃない。絶大な信頼関係の証だったんだ。
二人が醸し出すのは、過去の悲しみではなく、『今』から『未来』をつくり出す生命力。彼らが国のトップなら安泰は約束されていると、何の疑いもなく信じられる。統治者としての存在の大きさをあらためて実感し、ラトゥリオ様に惚れ直してしまった。僕に見せる甘々な顔と違いすぎる!
「レオ」と、彼の口が動いた。難しいことは考えず、駆け寄った。二人に優しく見下ろされ、アントス様の柔らかい声が降ってきた。
「今から地下に行くところだったんだ。帰る前に、君に挨拶をしたくてね」
「えっ。もうお帰りになるんですか」
まだ数時間しか経っていないのに。
「目的は果たせたからね。ありがとう。君のおかげで、本当に久しぶりにラトゥリオに会えたよ」
「アントス様……」
何か言いたい。僕の方こそ? お会いできて嬉しかったです? いや、会えたら聞きたいと思っていたのは――。
ラトゥリオ様は、僕たちの視線が交わるのを黙って見守っている。緑の瞳がキラリと光り、白と金の王様が僕の名を呼んだ。
「レオ」
「はい……ンッ!?」
な、何でキス!? 避ける間もない早業。翠玉が細められ、舌がちろりと唇をなぞった。花の中心に囚われて抜け出せなくなるような口づけ。片腕で腰を抱かれているだけなのに、すごい力で逃げられない。離してくださいー!
ぐいっと肩を引かれた。ラトゥリオ様だ。はぁ……こっちもすごい力だ。
「ハハッ、焦ってる」
「どういうつもりだ、アントス!」
「君は僕のハートを持ち去ってしまった。だから君が愛する存在は僕のものだ」
「なぜそうなる」
ラトゥリオ様は僕を背中に隠して凄んだ。あの、気持ちは分かりますけど穏便に。これじゃ十五年ぶりの感動の再会が台無しに……僕のせいじゃないけど! 絶対!
「うーん。前半の部分にもう少し反応が欲しいところだね。……レオ」
「はい……」
おずおずと顔を出すと、アントス様は晴れやかに笑っていた。
「ラトゥリオのこと、頼んだよ」
それだけ言って、マントを翻して歩いていく。
「あいつは、まったく……」
額に手を当てて頭痛を堪えるような仕草を見せながらも、黒の王は僕の肩を抱いて微笑んだ。
「あの」
「うん?」
「お見送り……してきていいですか」
あの人は、反対側の世界へ帰ってしまう。
「構わんが、キスは駄目だ。それ以上のこともな」
「気を付けますっ」
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