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第1章 大罪人と救世主
第4話
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「ん……もうちょっと」
意識が覚醒してきたけど、まだ眠い。今日の講義のスケジュールは……あれ? 僕の枕、こんなに大きくない。ベッドも沈み具合が違うし……誰かと、寝てる……?
「……あ」
目を開けると、顔が整いすぎて怖いぐらいの王様が、眩しそうに僕を見ていた。
「おはよう。かわいい寝顔だった」
「おはようございます……」
キュンッと胸が鳴る。母さん似の女顔だとはよく言われるけど、こんな風に甘い瞳で言われたことはなかったな。そうだ、昨夜この人と。で、僕は異世界にいるんだっけ。
「起きられるか? 食事の前にひと風呂浴びようと思うんだが」
「お風呂……入りたいです」
この世界が元の世界に比べてどういう段階にあるのか不明だけど、あっちじゃローマ帝国に風呂があったわけだし、うん。
「よし」
「あ、抱っこは、その」
「恥ずかしいか?」
「はい」
「尤もだとは思うが、明日までは我慢してくれ」
「うぅ」
「ハハッ。ちょっと待っていてくれ」
明日までって、何なんだよ……。手を繋ぐとか、くっついてるならほかにもやり方あるだろっ。
彼は床に落ちた二人の服を拾い集めながら、壁に取り付けられた扉を開けた。クローゼットのようだ。そこからガウンを二着出して、戻ってきた。
「袖をまくれば、まあ着られるだろう。じきにサイズの合ったものが届く」
「お姫様抱っこ以外なら何でも我慢できる心境です」
「かわいいことを言う。うん、似合うじゃないか」
ガウンを着せてくれて、嬉しそうに僕の顔を見る。チュッと触れるだけのキス。
「そういうの、反則です……」
気持ちが傾きかけてしまう。この人との関係、何ひとつ分からないのに。まるで夜だけじゃない、朝も昼も僕が必要だって言われているみたいで、期待する。彼は無言で僕の手を取り、指の付け根にもキスしてきた。薬指、左手の。いやいやいや、偶然だよな!? そんなの世界によって意味が違うだろうし!
「お風呂、お風呂いきましょう!」
わざと元気な声で立ち上がり、用意されたスリッパをはいた。
「ああ」
ガウンをサッと纏う彼は、朝から気絶しそうなくらい、かっこよかった。
たくましい腕の中におさまって、移動した。お風呂は、寝室よりも奥にあるという。お城の佇まいは中世ヨーロッパかなっていう感じだけど、トイレの作りは僕から見てまったく違和感がない。つまり、僕にとって現代的。水まわりって大事だもんな。電気も使われていて、その点も助かる。
建物の建て方は光をうまく採り入れるようになっていて、朝の自然光が気持ちいい。窓が大きめで、風通しもよさそうだ。ラトゥリオ様は、窓から見える山の名前などを教えてくれた。
言語は、僕は日本語を話しているつもりだ。ちゃんと通じてる。外来語(トイレ、とか)も通じるので、言語体系や発達の過程が同じなのかもしれない。そんな都合のいい話ってあるだろうか。でも、今困ってないんだから別にいいよな、うん。
季節は、初夏の関東地方というところ。花も木も、日の光で輝いてる。これから、どんな風に変わっていくんだろう。ん? 僕、そんなに長くここにいるのか?
「どうした」
「え、あ、いえ。すみません、何かすっかり寛いじゃって」
王様の腕の中にすっぽりおさまって、この目の高さに慣れてきている。
「謝ることはない。気に入ってもらえて何よりだ」
それが、この体勢をってことなのか、この国をっていうことなのか。両方かもしれない。こくんと頷きながら、頬が赤くなるのを感じた。
意識が覚醒してきたけど、まだ眠い。今日の講義のスケジュールは……あれ? 僕の枕、こんなに大きくない。ベッドも沈み具合が違うし……誰かと、寝てる……?
「……あ」
目を開けると、顔が整いすぎて怖いぐらいの王様が、眩しそうに僕を見ていた。
「おはよう。かわいい寝顔だった」
「おはようございます……」
キュンッと胸が鳴る。母さん似の女顔だとはよく言われるけど、こんな風に甘い瞳で言われたことはなかったな。そうだ、昨夜この人と。で、僕は異世界にいるんだっけ。
「起きられるか? 食事の前にひと風呂浴びようと思うんだが」
「お風呂……入りたいです」
この世界が元の世界に比べてどういう段階にあるのか不明だけど、あっちじゃローマ帝国に風呂があったわけだし、うん。
「よし」
「あ、抱っこは、その」
「恥ずかしいか?」
「はい」
「尤もだとは思うが、明日までは我慢してくれ」
「うぅ」
「ハハッ。ちょっと待っていてくれ」
明日までって、何なんだよ……。手を繋ぐとか、くっついてるならほかにもやり方あるだろっ。
彼は床に落ちた二人の服を拾い集めながら、壁に取り付けられた扉を開けた。クローゼットのようだ。そこからガウンを二着出して、戻ってきた。
「袖をまくれば、まあ着られるだろう。じきにサイズの合ったものが届く」
「お姫様抱っこ以外なら何でも我慢できる心境です」
「かわいいことを言う。うん、似合うじゃないか」
ガウンを着せてくれて、嬉しそうに僕の顔を見る。チュッと触れるだけのキス。
「そういうの、反則です……」
気持ちが傾きかけてしまう。この人との関係、何ひとつ分からないのに。まるで夜だけじゃない、朝も昼も僕が必要だって言われているみたいで、期待する。彼は無言で僕の手を取り、指の付け根にもキスしてきた。薬指、左手の。いやいやいや、偶然だよな!? そんなの世界によって意味が違うだろうし!
「お風呂、お風呂いきましょう!」
わざと元気な声で立ち上がり、用意されたスリッパをはいた。
「ああ」
ガウンをサッと纏う彼は、朝から気絶しそうなくらい、かっこよかった。
たくましい腕の中におさまって、移動した。お風呂は、寝室よりも奥にあるという。お城の佇まいは中世ヨーロッパかなっていう感じだけど、トイレの作りは僕から見てまったく違和感がない。つまり、僕にとって現代的。水まわりって大事だもんな。電気も使われていて、その点も助かる。
建物の建て方は光をうまく採り入れるようになっていて、朝の自然光が気持ちいい。窓が大きめで、風通しもよさそうだ。ラトゥリオ様は、窓から見える山の名前などを教えてくれた。
言語は、僕は日本語を話しているつもりだ。ちゃんと通じてる。外来語(トイレ、とか)も通じるので、言語体系や発達の過程が同じなのかもしれない。そんな都合のいい話ってあるだろうか。でも、今困ってないんだから別にいいよな、うん。
季節は、初夏の関東地方というところ。花も木も、日の光で輝いてる。これから、どんな風に変わっていくんだろう。ん? 僕、そんなに長くここにいるのか?
「どうした」
「え、あ、いえ。すみません、何かすっかり寛いじゃって」
王様の腕の中にすっぽりおさまって、この目の高さに慣れてきている。
「謝ることはない。気に入ってもらえて何よりだ」
それが、この体勢をってことなのか、この国をっていうことなのか。両方かもしれない。こくんと頷きながら、頬が赤くなるのを感じた。
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