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1章 変わる日常

39話 公爵邸での生活(8)

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 そうして目を温めているとベスが何か言いたそうにこちらを見てきていた。目でどうしたのか問うと、あの、と口を開いた。

「セイット様がいらっしゃっているのですが」

「セイットが?
 ……通して大丈夫よ」

 ベスは戻っていくとすぐにセイットを連れて戻ってきた。なぜだろう、嬉しそうな笑顔を浮かべている。

「こんにちは、ウェルカ!
 結果を見ましたか?」

「はい。 
 初等専門部から入ることになりました。
 と言っても学ぶのは基本的に魔法についてになりそうです。
 それに、3年間学んだら高等専門部の卒業資格ももらえるみたいです」

「そうですか、僕とほとんど同じですね。
 僕は高等専門部から入りますが、魔法の授業は初等専門部からやるみたいです。
 これで学園でも一緒にいられますね」

 私はそれを望んではいないのですが、とはなんとなく言えず、そうですねとあいまいに返事をしてしまう。それでもセイットは気にしていなさそうだ。

「そうだ、今日はウェルカにこれを渡しに来たのです」

 手渡されたのは髪飾りだ。私の瞳に合わせたエメラルドグリーンの石がたくさん使われたものでとても可愛い。

「あの、これは?」

「ぜひ、使ってください。
 きっとウェルカに似合います」

 そういって私に髪飾りを渡すとセイットは嵐のように去っていってしまった。


「ウェルカ様、夕飯までお茶会の準備をいたしましょう。
 新調したばかりですので大丈夫かとは思いますが、今は成長期ですからね。
 丈が足りなくなる場合もございますので」

 お茶会……。イルナの言葉で嫌なことを思い出した。そう近々同年代の子が集まるお茶会があるのだ。
 まだ社交の場に出ない私たちにとってはこれが初めて他家の同年代の子と会う場になる。親同士が仲がいい場合はその前にお互いの家を行き来することはあるみたいだけど、私はそんな人はいない。そう、どんな子たちが来るのか全く分からないのだ。

「それ、行かなきゃダメかしら」

「もちろんです」

 すぐにきっぱりと返されてしまうと、さあ行きますよ、と背を押されてしまう。とても動けるようになって成長したイルナだけれど、こういった行動力も成長してしまったのね。

「当日、天気が良いようでしたらこちらの風通しの良いドレスを着て、悪いようでしたらこちらの少々生地が厚くなっているドレスを着ましょう」

 淡い紫のドレスと黄色のドレスを前に出すとイルナが紹介していく。たしかにどちらとも最近仕立ててもらった覚えがある。

 さあ、来てみてください! というとさっそく今のものを脱がせにかかり、紫のドレスを着せられていた。素早い……。

「丈は大丈夫そうですね。
 アクセサリーは何を合わせましょうか」

「そうね、せっかくだからセイットにいただいた髪飾りを使おうかしら。
 それだと後はこれとこれかしら」

「とても良いと思います。 
 手入れをしておきますね」

 ワルクゥベ様に教えていただいたことも思い出しながらさっと選ぶとイルナは満足そうにうなずいていた。気に入ってくれたようで何よりです。

 黄色のドレスの方も調整はいらなかったようで、早々に開放してもらえて助かりました……。

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