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<ノーブラッド編>
第三話 II
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「で、どこ行くんだ?」
放課後、能力の前に白旗をあげるしかなかった紅白は、天姫に連れられ街を歩いていた。
「え~、聞きたい?」
「うわめんどくせぇこの女」
「あんたってホント口悪いわよね」
「褒め言葉として受け取っておこう」
「どこをどう解釈したらそうなるのよ」
もはや見慣れた痴話喧嘩を勃発させながら、二人は街を闊歩していく。そして、とある服のショップに着いた。
「まぁ、とりあえずはここね」
『とりあえず』という言葉に紅白は引っかかったが、ここで話の腰を折ると、さらに面倒臭くなりそうなので、のど元で言葉を留める。
「なんで服屋?」
「ここは、今までに行方不明者になってた人が働いていた場所の一つなの」
その言葉で紅白は全てを察した。と、同時に、昨日の昼休みに蓮と話した会話の内容を思い出し、大きくため息をついた。
「やめとけって言ったよな?」
「だって~」
いつもよりかなり目つきを悪くして、語気を強めた紅白に、天姫も少しバツが悪そうな顔をしたが、天姫も思いつきの行動ではない。自分で考えての行動だ。そして、単独で行動しなかったのも、安全を考慮してのこと。の、はずである。
「だってもクソもない。帰るぞ」
「いやだ」
踵を返して帰ろうとする紅白に、天姫が素直に従うはずもない。
「いやだとかじゃない。危ないって言ってんだ」
「何かあったらコウが守ってよ」
「お前の方が強いだろうが」
「うん、そうね。だったら逆らわない方がいいんじゃない?」
間髪を入れずに述べられた脅迫まがいの言葉と共に、紅白の肩が少し重たくなる。
「うーわこの女は…」
「いつの時代も力は権力よ」
あまりにも女の子には似合わない、そして自治会副会長には似つかわしくない言葉を並べる天姫。
「きったねぇ」
「褒め言葉として受け取っておくわ」
「お前の解釈も大概じゃねぇか」
二人はお店の中に入り、店員とも話をしてみる。
今の時代は、昔に比べて店舗営業の機械化が進み、無人の店も増えている。しかし、少数だが店員を配置する店も多い。人がいる方が、警備の面やシステムの不具合に関してすぐに対応が出来、さらにこういう服などのアイテムを販売している店だと、実際に客と話した方がいいという面がある。
「ありがとうございました」
急な訪問に対応してくれた店員にお礼を言って、お店を出る二人。しかし、その表情から察するに、あまりいい結果は得られなかったようだ。
「よし、他の場所も行ってみよっか」
「……………」
紅白は、眉をピクリと動かしたが、何も言わなかった。なんとなく予想していたことだ。そして今ここで反抗しても、さっきのようなやり取りが繰り返されるだけだ。同じ轍を何度も踏んでいては、疲労が蓄積していくだけである。時には諦めも肝心だ。
その後、ショップの周辺や、そのほかの場所も回ってはみたが、芳しい結果は得られなかった。
「うーん、やっぱり何もわからないね」
「そりゃそうだろ。場所を回って手がかりが掴めるなら、苦労はねぇし、その程度なら警察がとっくに見つけてる」
「それもそっかぁ」
天姫は少し落胆しつつも、うーんと思考を巡らせている。
「まぁ時間も遅くなってきたし、今日はここまでにしよっか。続きは明日だね」
すでに日は傾いていて、空は鮮やかな赤に染まっている。
「………明日?」
「うん」
「……………」
紅白はもう何も言わなかった。反抗を放棄した。しかし、だからと言って何が変わるわけでもなく、どっと疲労が押し寄せてきた気がした。
放課後、能力の前に白旗をあげるしかなかった紅白は、天姫に連れられ街を歩いていた。
「え~、聞きたい?」
「うわめんどくせぇこの女」
「あんたってホント口悪いわよね」
「褒め言葉として受け取っておこう」
「どこをどう解釈したらそうなるのよ」
もはや見慣れた痴話喧嘩を勃発させながら、二人は街を闊歩していく。そして、とある服のショップに着いた。
「まぁ、とりあえずはここね」
『とりあえず』という言葉に紅白は引っかかったが、ここで話の腰を折ると、さらに面倒臭くなりそうなので、のど元で言葉を留める。
「なんで服屋?」
「ここは、今までに行方不明者になってた人が働いていた場所の一つなの」
その言葉で紅白は全てを察した。と、同時に、昨日の昼休みに蓮と話した会話の内容を思い出し、大きくため息をついた。
「やめとけって言ったよな?」
「だって~」
いつもよりかなり目つきを悪くして、語気を強めた紅白に、天姫も少しバツが悪そうな顔をしたが、天姫も思いつきの行動ではない。自分で考えての行動だ。そして、単独で行動しなかったのも、安全を考慮してのこと。の、はずである。
「だってもクソもない。帰るぞ」
「いやだ」
踵を返して帰ろうとする紅白に、天姫が素直に従うはずもない。
「いやだとかじゃない。危ないって言ってんだ」
「何かあったらコウが守ってよ」
「お前の方が強いだろうが」
「うん、そうね。だったら逆らわない方がいいんじゃない?」
間髪を入れずに述べられた脅迫まがいの言葉と共に、紅白の肩が少し重たくなる。
「うーわこの女は…」
「いつの時代も力は権力よ」
あまりにも女の子には似合わない、そして自治会副会長には似つかわしくない言葉を並べる天姫。
「きったねぇ」
「褒め言葉として受け取っておくわ」
「お前の解釈も大概じゃねぇか」
二人はお店の中に入り、店員とも話をしてみる。
今の時代は、昔に比べて店舗営業の機械化が進み、無人の店も増えている。しかし、少数だが店員を配置する店も多い。人がいる方が、警備の面やシステムの不具合に関してすぐに対応が出来、さらにこういう服などのアイテムを販売している店だと、実際に客と話した方がいいという面がある。
「ありがとうございました」
急な訪問に対応してくれた店員にお礼を言って、お店を出る二人。しかし、その表情から察するに、あまりいい結果は得られなかったようだ。
「よし、他の場所も行ってみよっか」
「……………」
紅白は、眉をピクリと動かしたが、何も言わなかった。なんとなく予想していたことだ。そして今ここで反抗しても、さっきのようなやり取りが繰り返されるだけだ。同じ轍を何度も踏んでいては、疲労が蓄積していくだけである。時には諦めも肝心だ。
その後、ショップの周辺や、そのほかの場所も回ってはみたが、芳しい結果は得られなかった。
「うーん、やっぱり何もわからないね」
「そりゃそうだろ。場所を回って手がかりが掴めるなら、苦労はねぇし、その程度なら警察がとっくに見つけてる」
「それもそっかぁ」
天姫は少し落胆しつつも、うーんと思考を巡らせている。
「まぁ時間も遅くなってきたし、今日はここまでにしよっか。続きは明日だね」
すでに日は傾いていて、空は鮮やかな赤に染まっている。
「………明日?」
「うん」
「……………」
紅白はもう何も言わなかった。反抗を放棄した。しかし、だからと言って何が変わるわけでもなく、どっと疲労が押し寄せてきた気がした。
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