いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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セサミナの気配の近くに行けば、
女がいた。
違う、セサミナだ。

かわいいな!!
じっくりとシャシンをしたいが、
それは後だ。
セサミナに約束をさせて、ドーガーの傍に。


こちらは面白いことになっている。
ワイプはこの3人が欲しいのか?



銃は?
愛しい人を撃ったものと同じか?
この銃はやはりほしいな。
細工がきれいだ。
貝細工だな。

弾はチョッキを着ていないなら、
ドーガーにあたることなく砂漠に行く。

が、狙いが狂えば棚にあたるな。
弾だけ先に回収しようか?

─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


銃弾はわたしには当たらない!
跳ね返りの弾、跳弾もだ。
大丈夫だ!


「その場から動くな。」
「えーっと、それって強盗ですか?」
「まさか!我々は王族だぞ?」
「どちらの?」
「イボン家だ。」
「ああ!由緒ある王族ですね?
たしか、先代王の?」
「よく知っているではないか!」
「ありがとうございます!こう見えても、お傍付き次席!
さわりだけだとは思いますが、
王家の歴史等勉強させていただいております。」
「当然だな。」
「はい。それで、やはりまだまだ勉強不足。
その、銃を人に向ける、
これ、イボン家の独特のあいさつなのでしょうか?」
「そうだよ?動くなと、王族が言っている。
なのに動くのは不敬だろ?それを咎めるのは時間の無駄だ。
なので、動いたらすぐに死んでもらう。
効率がいいだろ?」
「なるほど!では、清算しましょうか?
どれをお買い求めで?」
「ここにあるもの全てもらっていく。」
「え?全て!それはありがとうございます。
いくらになるんだろ?
あの?こちらに持ってきてもらえますか?
動けないんで。」
「全部だ。全部。
そうだな、100リングあれば足りるだろう?」
「あー、申し訳ないです。全部となると、その正面に飾っているものもですよね?
あれ、一番小さいもので一つで100万リングです。
別に売るつもりはないんですが、欲しいとおっしゃるならこの金額です。
先程の方々は欲しいとも言わずにお帰りなりましたが、
さすがイボン家の方々!
お目が高い!
なので全部となると100リングではなく、
1億リングです。資産院経由でも結構ですよ?」

モウ様が作ったガラスは砂漠石製。
それが棚の全面にはめ込んであり、
許可なく開くこともできない。もちろん壊すことも。
先に出ていった盗人どもは、欲しかっただろうな。
が、こっそりポッケに入れることもできずに、
見ていただけだった。
もの欲しそうに。

「これ一つが?なるほど。
おい!」
手あたり次第商品を袋に詰めていた2人に
入れろという。

「開かないのならたたき割れ!!」
「やめて下さい!そのガラスは特注で、一枚当たりの値段なんか、
わからないんですよ!!」

砂漠石だから!!
当然割れない。

「おい!開けろ!」
「え?動いたら死んじゃう!」
「こっちが開けろと言っているんだ。撃たないよ。
が、いらぬことをするなよ?」
「それもそうですね!」

わたしの頭に2つの銃口が向いている。
開ける傍からもう一人が宝石を袋に入れていく。
せめて、箱ごと入れてくれ!

袋ではなく、自分のポッケにも入れているな。

名を騙るのは重罪だ。
名乗れば、それだけで責任が生じる。
が、王族の名をだして何も起こらないのなら
イボン家で間違いはないが、下っ端だな。


「あの?」
「なんだ?」
「お支払いの方法はどうされますか?
資産院経由?小袋?砂漠石?リングはお持ちではないですよね?」
「はははは!そうだな!
イボン家に取りに来てくれ。」
「そうですか!では、あなた方のお名前を教えていただけますか?」
「高貴な名を庶民に教えるわけにはいかないだろ?」
「しかし、わたしがイボン家にお伺いして、
1億リングはどなたから頂けばよろしいですか?」
「当主でいいぞ?」
「またまた、ご冗談を!
あなた方が言う庶民が直接ご当主に会えるわけがないでしょ?」
「どうして?当主、イヤル様が求めているんだから。
払うに決まているではないか!」
「いや、それはおかしいですよ?
ご当主殿が求めているのなら、
直接、セサミナ様にお話が来るはずだし、
それこそ、セサミナ様がお持ちしますよ?
どうぞ、お名乗りを。
でないと、ただの盗人ってことですよ?」

1人が砂漠石を出している。
?防音を掛けたか!

「ははは!だったらそれでいい!」

そう笑ったと同時に2人が発砲だ。


カチン!カチン!

え?音小さくない?

撃った2人も驚いている。

「全部だ!!」

カチンという音だけが響く。

それ、弾がないんじゃないの?
うん。
とりあえず、寝てもらおう。

あて身3発。

「お見事!!」
「ひえ!え!マティス様!!」

驚いた。
マティス様が満面の笑みで拍手している。
うわぁ、ものすごくうれしい!!

「いらしてたんですね!!」
「少し前にな。
弾は抜いたんだよ。お前に当たらなくても、
外れて、棚に傷がついたら問題だろ?」
「あ!本当だ!!よかった!
ありがとうございます!!」
「そろそろここを出るぞ。
その袋の中身は元に戻そうか。」
「あ、こいつらの前に金を払わず盗んだ商品が、
戻って来てますからそれも。
わたしやってみます!!」
「そうか?」

『戻れ!』

数個しか戻らない。
なんで?

「展示してあった場所の記憶通りに、
あらためて配置しようとしたのか?」
「そうです。すべて記憶したつもりなんですが。」
「あやしいな。記憶なんて常にあいまいだぞ?」
「ではどうやって?あ!元に戻れと?」
「それだと、どこまで元に戻る?
研磨する前に戻るかもしれないぞ?」
「ああ!えっと、えっと、
盗人に盗まれる前の状態?」
「あはははは!それでやってみろ。」

え?なんで笑うの?
そしてやっぱり戻らない。

「移動はそこに移動した状態を思い浮かべないと
移動できない。元に戻すのなら、元の状態を
正確に記憶して、その状態を思い出さないとな。
これだけの量を全て一度に思い描けるか?
無理だろう?」
「では、少しずつ?」
「そうなると、記憶があやしくなる。」
「あー、そうか。」
「なので、移動ではなく直接この商品たちに
お願いするんだ。」
「?元に戻ってくれと?移動ではなく?」
「コンブ取りの時と同じようにしていてはダメだ。
移動とお願い、言霊は違うぞ?」

トックス師匠にタオルの上着を頼みに行く前に、
先にわたしとマティス様はコンブを海に取りに行った。
見えているコンブを陸に移動させたのだ。

「今は時間がないからな。
私がするから、あとは練習しておけ。」

『美しきコットワッツの商品たちよ
トックスがいちばんきれいに見えるようにと
並べた位置に戻ってくれ
次回、良き客人たちに
よりよく見えるようにな』


すごい!
モウ様のようだ。
同じなんだ。
マティス様はモウ様なんだ。異国の方ではないのに!
ここまでできるのか!
理解できて練習すればわたしもできるようになるはず!!


「ああ、きれいだな。
ありがとう。
お前たちの仲間にも、また無理を言うがその時も頼むな。」
「?無理ってなんですか?」
「ん?愛しい人をより美しくすることだ。」
「それが無理なんですか?」
「無理に美しくするという意味ではないぞ?
愛しい人は美しいし、この石たちも美しい。
糸に留まってほしいとか、薄くなってほしいとか、
そういうのだな。」

それは無理なことだ。
これはわたしにはできないな。
いや、できると思えばできるのか?
だって、モウ様は浮ける。ということはマティス様もだ。
では、飛べる?

「マティス様?」
「なんだ?」
「マティス様って飛べますか?」
「飛べる?これ?」

上に飛んだ。
高い!!でも、違う!!

「空を!!」
「ふふ。飛べるとしたら?」

ニック殿が言うように、
飛べるんだ!!!

「どうするかは教えないぞ?」
「どうしてですか!!」
「わたしが教えてもお前は理解できない。
疑問に思うとできない。
愛しい人も教えない。
この先、移動も呼寄せもだ。オーロラで最後だろう。
なぜかわかるか?
セサミナを守る為だ。
これ以上教えれば、どこかでほころびが出る。
それは、セサミナを危険にさらす行為だ。
オーロラにはルグがいたからだ。
自分で気付いたんだ。
誰にも言わず黙って鍛錬してみろ。
ニックたちは空気蹴りはできるぞ?
それの応用だな。
そして、我が弟、セサミナを守ってくれ。」
「!はい!お任せください!!」


3人を縛り上げ、ワイプ様の元に送ることになった。
その準備をしていると、セサミナ様が入ってきた。
女性の姿のままだ。
あ!マティス様がいるのに!!

「・・・ドーガーさん。この2人を広間に。
セサミナ様がお会いしますので。
・・・・。
に、マティスさん?
あとで話をしましょう。なので、いらぬことは言わぬように。
ね、モウさんに!!」
「ははははは!ああ、失礼。
そうしよう。」

そういうと、奥に入っていった。
いいのか?
マティス様とモウ様には絶対に秘密だと言っていたのに。

マティス様はものすごくご機嫌だ。
それがちょっと怖い。




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