いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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831:婦人

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セサミナ様は横で待機している。
セサミナ様の領域で、セサミナ様がなにもいわず見つめる。
これが怖い。


「だから!入ることはできないんだ!」
「そんなことないでしょう?あなたが入れないだけでは?
そこで大騒ぎしているから後ろの方々が遠慮してはいれないのかも?
ちょっと、そこ開けてください。
ほんとうに誰も入れない?
複数だから入れないかも?だって、わたしたちは出入りで来てますから。
それで考えたんですが、
だれか一人でも問題のある方と一緒だと入れないとか?
ご本人は問題なくても、遠い親戚筋とか?かかわっている人が問題とか?
例えば、コットワッツの商品に文句を言った方の親戚が上司とか?
加減は分からないんですよね。
入れ無くても決してご本人のせいではありません。
もちろん、コットワッツの商売仇は、うーん、どうなんだろ?
おそらくは入れないかな?
この地は旧王都。
この地を昔から守っている呪いがあるのだろうと考えています。
なので、この地の主、コットワッツですね?
それに仇なす方は入れない!
なので、1人ずつどうぞお入りください!!」

しかし、セサミナ様が求めるんだ、皆はいってこれるのでは?

が、ここで一斉にざわついた。
入れないのは中にいるものより自分が強いから、
こちらが守れないから、呪いで守っていると思っているはず。
入れないのは己が強いからだと言えた。
だが、コットワッツに仇なすものが入れないとなれば、
あとあと問題だ。
だから抜け道も用意した。
文句を言った方の親戚が上司?
かなり広い範囲で確認しようがない。
なにも敵を作りたいわけではないんだ。
あとは、モウ様はけがをしている、重症だとでも思っているのだろう。
だったら騒がしくここに尋ねてくることをしなければいいのに。
いや、本当に心配して様子だけでも見に来た人たちもいるかもしれない。
ボルタオネのテール殿、ラルトルガのファンロ殿からは丁寧な手紙が届いた。
その使いをしたトリヘビはなんの問題なくこの館に届けられている。
何かの使いで、問題ないものならこちらに入れるだろう。
なるほど、この騒がしい連中に遠慮しているというのも考えられるな。


「では、どーぞー!」





みなが、一番最初に入れないということを証明したくないのか、
遠慮している。
やっと後ろの方で待機していたご婦人がやってきた。



その婦人が入ると皆が一斉に声をあげた。

やはり、商売仇が入れないだけだったんだ、と。


(そもそもコットワッツの商売仇は今時点でいないんだがな)
(あ!メジャートのラーメン屋さんは?)
(それは入れんな!が、兄上の作るものの敵ではない!!)

メジャートのラーメン屋はタオルの追加注文をしてくれた。
そのときに、なかなかうまいと教えてくれたのだ。
今度行ってみようと思う。



「わたくし、下町で白馬車を営んでいるハニカの妻、リガーナと申します。」

白馬車!あのハニカさんの奥方なんだ!

「ハニカさんの馬車にはわたしも乗りましたよ!
いろいろ落ち着いたらわたしの妻2人と一緒に乗りに行く予定です!」
「あら!それはうれしい。夫に伝えておきますね。」
「ええ!さ、お座りください。」

とても上品に椅子に座る。

そんな話をしてしまったが、セサミナ様もハニカさんのことはご存じなはず。
横を見ると、いつの間にか立上り、深々と頭を下げていた。
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