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800:聞こえた話
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ワイプに話を聞き、軍部でルカリを捕まえ、
生徒を呼んでもらうことにした。
今は20人ほどだが、7,8人はすぐに集まるという。
例の劇の話も、雨の月、
合わさりと離れはじめの月の真ん中だそうだ。
それ、俺たちも見たいな。
頼んでみよう。
あー、リーズナも見たがるかな?
サッチの石にも会いに行かないと。
が、こっちが先だ。
「わたしたちにもなじみの店があるもの。
そこは、3つ買ったら、2つ分の金額にしてくれるわよ?
これもそうしてくれる?
だったら、買ってもいいわ。」
(そう来るか!!)
(ニック任せろ!この場合の対処法も習得済みだ!)
「はははは!それはさすがに酷というもの。
いつもお相手しているお得意さんでしたら、
それでも利益をあげれるんでしょうが、新参者には厳しい。
3つ買っていただいても、利益が出るか出ないか。
ギリギリなんですよ。しかし、それでも買っていただけるのなら、これ、
少し小さい目の籠を付けますよ。ちょっとしたものを置くのに便利で、
布で撒いてますから、小物を置くのにもいい。
どうですか?まだ、これはまだ売り出していない商品なんです。
評判良ければ、もっと作っていこうかなと。
どうですか?」
「ふーん。でも、3つもいらないわ。」
「ああ、そうですね。では、2つで?
しかし、うーん、2つお買い上げで、これを?
これを作るにも手間と時間がかかっているんですよ。
3つならなんとか、持ち出しにならないんですが、
2つとでこれをつけると、厳しいのが正直なところ。
今回は諦めたほうがいですね。
次回、いつになるかわかりませんが、
もっと勉強させていただいてから寄せてもらいますよ。
ルカリ!悪かったな!折角、生徒さんを呼んでもらったのに!」
「ガイライ殿!そんな!
だったら、わたしが買いますよ!」
「あははははは!それでは商売にならないだろ?
まだまだ勉強しないといけないな。
ニック、ニック隊長、ダメでした。
帰りましょう。」
「え?ダメなの?帰るの?
折角作ったのに?ダメなの?」
(ほんとに帰るの?)
(まさか!)
「ティーナ?いい品よ?わたしは買うわ。
3つ?母さんたちも欲しがると思うから6つください。」
「ありがとうございます!
これ、色や大きさも多少違うので好きなのを2つ選んでください。
青が人気だとか。」
「あら!それは古い話よ?」
「え?そうなんですか?こういう話も仕入れないといけないですね。
今後の商売のために今、何が流行りか聞いても?」
(なんだよ、その笑顔!胡散臭い!!)
(そうだが、売れただろ?他の者も買うぞ?)
「わたしも、これ、3つ。
流行りはやっぱり刺繍布かしら?ね?」
「そうね、それと密封器?それはないのね?」
「あー、それはな。これは、俺たちが作ってるんだよ。
この炭はどう?籠に入れておけば、なんとなく匂いが取れるって。
これは感じ方が人それぞれだから試してみて?」
「匂い?どんな?」
「靴とかさ、服とか?それをしまっておくとなんとなく臭わないか?
その時に入れておけばいいみたい。
んー、嬢ちゃんたちはきれいにしてるからいらないか!
おい!ルカリは?お前は臭いだろ?買えよ!」
「な!ニック隊長!その言い方!
わたしが臭いみたいじゃないですか!!」
「あはは!間違いではないだろ?」
「わたしはこっちとこれとこれ。
この組み合わせでもいい?」
「もちろん。好きなの選んでください。」
「ありがとう!この炭も。先生はまだましよ?
でも、軍の方はちょっとね。」
「・・・まだ、なんだ。」
(このまま軍のことを聞いていこう!)
(なるほど!)
「あー、3軍体勢になったの知ってる?
俺たちは第3軍で2人なんだよ。
で、ルカリが最初に言ったように、
予算が出ないから行商してんのね。
あとの2軍は王族のスダウト家とタレンテ家だ。
いいよな、予算も出るし、王族だし。」
「軍隊長は決まったんでしょ?
でも、その両家は当主問題で揉めてるんですよ?
ご存じ?」
「それ、聞いた話?いいの?ここで話しても?」
「ふふ!だって、聞こえた話ですもの。知りたいですか?
これ、おまけしてくれます?」
「あはははは!なるほど!どうする?ガイライ?
こっちが上だぞ?」
「そのようだ。が、商品はおまけできないんですよ。
面白そうな話だから聞きたいんで、
頂き物の焼菓子とお茶でどうですか?」
「素敵!!!!」
(おまけでよかったんじゃないの?)
(それは絶対にダメらしい。茶菓子は今回はないと言えるが、
商品をおまけにすると、
次回もそうなる。茶菓子は貰い物だと言えるからな)
(あー、なるほど)
ルカリには最初に情報を集めると言ってあるから、
話が逸れていくのをうまく両家の話に戻してくれる。
タレンテ家の当主はブラート、これは高齢だということで
一線を引いている。
トウキンがしゃしゃり出ているが、当主代行でもない。
セサミナ殿がタフト領主メラフルから聞いたネンサーの名はでなかった。
スダウト家はクラビットの代わりにアリンだろうということ。
アリンの父親は死んだことになっていた。
半日前の話だ、アリンが自滅したことはまだ知らない。
マルアルがブラートに面会を申し込んだこともだ。
それが今外に漏れることはない。
当然、モウちゃんが撃たれたこともだ。
「え?じゃ、ブラートは高齢ではなく、病気になったから、
マルアルは当主を辞めたの?」
「そう聞いてますよ?
マルアル様が崇拝する人がブラート様で、
そのブラート様がご病気になったから、当主なんかしてられないって!
毎日お祈りしてるって!」
「?」
「わたしが聞いたはなしは逆よ?
マルアル様が当主を退いたのが原因でブラート様は病気になったって!
だから、マルアル様が当主に戻ればブラート様は元気になるのにって!」
「?」
「わたしのは呪いって聞いたわよ?
本当はブラート様は死ぬ呪いを掛けられたって!
死なないようにするにはマルアル様が当主を退くことが条件だったって!」
「?」
「みんないいわね!じゃ、これ!
ブラート様がご病気になって、マルアル様はやる気をなくしたのよ。
だって、2人はとても仲が良かったから!」
「それもいいわね!」
「え?みんな嘘なの?」
「王族様の本当の話なんてわかりませんよ?
いま、この両家のお話を作るのが流行りなんです!」
「なんだ!びっくりしたよ、どれも本当みたいだ。」
「先にブラート様がご病気になったのは本当ですよ?
それから、マルアル様が当主をやめたって。これは本当。」
「へー。俺がやめてからだよな?ガイライ?」
「ブラート殿がご病気になったかどうかはわからないが、
一線を引いた、それは事実だ。
確かにそのあと、マルアル殿が息子に譲った。
だから、こうなんじゃないか?
呪いをかけられたかもしれない。
病気かもしれない。どちらにしろ、体は思うように動かない。
そうなると気弱なるものだ。
それで、ブラート殿とマルアル殿は競い合う好敵手なんだな。
ブラートが言う。
自分が病の間にお前は躍進していくんだろうな、と。
さみしそうに言うんだ。
それを聞いたマルアルは?
お前が病気を克服するまで、わたしは当主を退こう
ブラートは驚くだろうな。
なんのために?お前は当主になるべくしてなった男だ、
それが、わたしが病になったからと言って、退くことはないだろう!
とな。
だったら、早く病を治すことだな、そうすればわたしはまた当主に戻れる
頑張ってくれ、わたしの為にも
2人はきっと涙しただろう。
ああ、もちろんだ。すぐに、良くなる。
待っててくれ。
もちろんだ。早く、2人でニバーセルを盛り立てていこう、とな。
こんな感じはどうだ?」
「「「「「それがいい!」」」」」
(なにそれ?)
(モウに作ってもらった。さっき連絡が来た。
今から飯だそうだ。いつもと変わりない、主で母であった。
安心したよ)
(そうだろ?最初から緑の眼なんだよ、モウちゃんは)
女どもはそこからまた話を作っていく。
結局、分からんな。
そして話がどんどん変わっていく。
修正はルカリでもできないな。
1人だけ、その話に参加しない女がいた。
笑っているが、目が笑っていない。
間者だ。
その女が声をあげた。
「あ!そう言えば!
会合があったんでしょ?その時の食事が良かったって話!
カレエ?っていうの?どんなのか知ってます?」
「知ってる!!うちの旦那が屋台の組み立てを手伝って、食べたって!
持って帰ることもできないほどっていうのよ!
その前は資産院の前でも売ってたって!」
「ああ!辛いのだろ?あれはうまいんだよ。」
皆が一斉にこっちを見た。
・・・怖い。
「食べたいわ!」
「あれ、コットワッツが扱うの?モウモウ商会?」
「いや、聞いてないな。モウに聞いておこうか?」
「あ!モウって、赤い塊のモウ、さん?」
「知ってるの?」
「ええ!スダウト家とタレント家が競うように調べてたから!」
「調べてどうするんだろ?軍を支える王族家だ。
なんか依頼するのかな?石使いとして?」
「聞いた話だけど、お抱えにしたいみたいね。
で、剣のマティスも。」
「あれも?」
「あ!やっぱりご存じなんだ!」
「お前たち!言っただろ?ガイライ殿は1番隊長だったし、
マティス殿がいらした時の所属部隊の隊長だ。
ニック隊長は、わたしの上官だったんだぞ?
で、マティス殿の上官でもあったんだ。
そして槍術をニック隊長から教わっている!
この前、新旧の弟子対決もしたんだぞ?わたしとマティス殿は!」
「えーー!!先生は剣のマティスのお相手できたんですか?」
「槍だったが、引き分けだぞ!」
「キャー!!先生!以外とお強いんですね!!」
「・・・・以外なんだ。」
「ルカリ?頑張れよ?そう見えなくしてるんじゃなくて、
そう見えてるってことだから。」
「・・・はい。」
「いいんですよ!先生はそれで!」
(話がルカリに行く!戻して!)
(わかった!)
「いや、で、モウちゃん、ああ、彼女も俺が槍を教えたんだよ、
モウちゃんとマティスを雇いたいってこと?」
「そうなんです!だから、ちょっと強引に進めるみたいですよ?」
「強引?無理だろ?
何か手があるんなら、こっちだってほしいよ、マティスとモウちゃんは。
だけど、コットワッツが許すはずがないしな。」
「でしょ?だから、なにかするみたい。」
「おいおい、怖いな、それ。だけど、何ができる?なにもできないだろ?」
「でも、モウさん、撃たれたんでしょ?」
あの女が、にやりと笑いながら言った。
「え?それ知ってんの?すごいな!」
「ニ、ニック隊長!それ本当なんですか?そ、それで?容態は?」
「いやだ!先生!臣の腕を捧げたっていうガイライ様がこうして、
行商してるんですよ?無事に決まってるじゃないですか!」
「あ!そ、そうか、びっくりしましたよ!」
「いや、容態はわからんのよ?な?ガイライ?」
「え?」
「わたしがこうして商売をしているのは、
主がそう望んでいるからなんだよ。
主の望みなんだ。主の為に生きてはダメだと。
仕事が優先だと、ね。これが唯一主が望んでいることなんだ。
臣の腕を捧げたものには、
主の命よりも主の命の方が優先なんだ。」
「え?では、モウさんは?」
「わからん。マティスも動いてないしな、セサミナ殿もだ。
死んではいないと思うが何とも。」
「ニック隊長!そんな暢気な!」
「仕方がないだろ?動けないんだよ。
こっちは軍だ、それで一領国の領主護衛が撃たれたからって
どうすることもできなんだよ!」
「それはそうですが!」
「ガイライなんて、顔に出ないようにしてたのにな。
やぱり、そんな話すぐ広まるんだな。
師匠のワイプも知らねえんじゃないか?
マティスはもちろん言わないし、
付きっ切りだろうから、それどころじゃないだろう?
こっちも知りたいんだけど、なんか知ってる?」
「え?撃たれたってことだけ。みんなが話してましたよ?」
「モウちゃんが撃たれたと?」
「ええ。」
「うーん、そうか。もっと詳しく知りたいな。
モウちゃんは死んでないよな?これは、ガイライはわかるんだな?
でも、その容態まではわからんと?」
「ええ。」
「撃った奴を探さないといけないのは軍の仕事なんだよ。
が、手がかり無しだ。
んーと、あとなんかある?」
「ニック隊長!!彼女たちを使わないでください!!」
ルカリはあくまでも先生の立場。
守る側だ。
「だって、何かしておかないと立場ないだろ?」
「そんな情けないこと言わないでくださいよ!!」
ルカリは本気で怒るが、ほら、あの女の眼が笑ったぞ?
「先生!いいですよ?聞いた話なんですもの。
えーと、なんでも、屋根の上から狙ったとか?」
「え?屋根?そこから狙ったってこと?」
「ニック隊長では無理ですね?」
「ガイライ?お前の主が撃たれた話なんだぞ?
嬉しそうに言うな!」
「主、モウは無事ですよ!
それで、その相手をこちらが探すのも望んでないから。」
「なんで?」
「主、いや、マティスがどうにかするんじゃないか?
その邪魔はしたくない、臣として。」
「あー、それもあるな。緑目だしな。」
「え?誰がですか?」
ルカリは本当にいいな。
意識しないで、こちらの望むように話を持っていってくれる。
あれか、運ぶ人か?リーズナのような?
いや、ちょっと違うか。
流れに乗ってくれる人?
それはほとんどの人間だな。
望む流れに乗る人か。みなを引き連れて。
こういう奴はたくさんいる。
それを制御しないといけない。
悪い方の流れに乗るのを止めないといけない。
「いや、マティスが緑目で、対象はモウちゃんな。
これは、薄々皆が思っていたことだ。
そう見えなくしていたんだとは思うよ?
面布をつけてることが多かったし。
それを見せたんだよ、皆の前で。
で、モウちゃんも緑目だって。マティスが言ったんだ。」
「た、対象は?」
「マティスだ。」
「・・・そうですよね。」
「だから、緑目の対象を排除した行為がどういうことか
よく考えろといって、移動した。」
「!?」
ルカリはマティスとモウちゃんが移動できることは知っている。
それをここで言うことに怪訝な顔をした。
「移動な、それこそ皆が知ってる話だ。セサミナ殿は移動ができる。
部屋の端から端ではなくな。
その兄、マティスもできるとな。
セサミナ殿は領主だ。移動は領主の力だと本人が言うんだ、
領主の力を浄化の力以外に他の者が使うことはできない。
マティスは緑目だ。対象のためにしか使わないだろうな。
で、その対象を害したんだ、そいつは近いうちに死ぬだろうな。
もちろん指示した奴も、その関係者も。
それをコットワッツは領国挙げて正統化する。
セサミナ殿ってけっこう容赦ないから。」
「ああ。それは、ええ、わかります。」
「な?」
(その話は知らないようだ。心音が早い)
(じゃ、撃った奴関連?マティスがワイプに話した奴だな、
すぐにその場を離れたと)
(本人ではないな。だったら、マティスの気をうけているはず。
暢気に話なんぞできないだろ)
(近いもの?気もわからん奴かもしれんぞ?)
(それもあるだろうな)
(話だけを聞いた部類か。どちらにせよ、ルカリの周辺を探っていると)
(だろうな)
「マティスが今動いていないってことは、
相手のことを把握してるんだろうな。
いつでも探せるってことだな。
怖いな!俺だったら、すぐ逃げるね。
別にモウちゃん恨みがあるわけじゃないだろ?
誰かに頼まれたんだな。
しかし、屋根の上からだろ?
うまいよな。なんか鍛錬したんだろうか?
そっちの意味で確保したいよな。」
「確保してどうするんだ?」
「いや、銃の腕わるいっていうから、練習?
教えてもらうんだよ。」
「・・・情けない。」
「ガイライ!お前だって似たようなもんだろ?
ルカリは?銃の支給があったんだろ?どう?」
「どうと言われても、ニック隊長?そこらへんの話はまずいですよ?
わたしも軍内のことはここでは話さない。」
「あ!それもそうだ。
わるいな。なんにせよ、そいつの関係者は早いこと始末されるな。」
「え?」
「だってそうだろ?そこから、足が付く。
逃げるにしても、大門、通用口、裏門と閉鎖してるだろう?
気もわからない素人で、銃の腕がだけがいいってだけなら、
どこかで自慢気に話してるかもしれないしな。
さすがに依頼主のこと言わないだろ?
だけど、いつ話すかわからない。
だから始末する。
それらと敵対関係者につかまって見ろ、
石を使って白状させるんならまだましだよ。今、石は高騰してるから、
拷問を掛けるかもしれない。死ぬな。」
「ニック隊長!!やめてください!!
彼女も顔色が悪い。軍人じゃないんですから!」
「いや、悪い、悪い。
屋根から狙われたって話だけでも、収穫だよ。
ありがとな。
菓子もないし、商品のおまけもできないけど、
簡単な護身術なら教えてやれるぞ?
ルカリでも投げとばせる!どうだ?」
「キャー!やってみたい!!!」
「・・・・やってみたいんだ。」
(俺はこっちでやってる。あの女を抑えろ)
(承知)
(・・・殺すな?今は)
(・・・)
(これ、上官命令)
(・・・・承知)
ガイライも容赦ないからなぁ。
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
「大丈夫ですか?ニック隊長は配慮というものはしらない。
ここに座って。コーヒーはまだありますから。」
震えているな。
素人だ。これに銃を持たせて?
オーロラの話だと、すぐに逃げたと。
屋根の上だぞ?それだけ素早く動けたと?
屋根も外れている箇所があったと。その力もない。
・・・・。
ああ、わざとか?
後からではないな、先に外してたんだ。
「あ、あの?ニック様は確保したいって?
それは、それは、保護したいということでしょうか?」
「ああ!さっきの話?ニックは銃の腕がちょっと問題で。
それで、そういったんでしょうね。
保護というより、教えてほしいということですよ?」
「・・・・殺されるんでしょうか?か、彼は!」
ほら、わざとらしく彼といった。
こいつだ。
「その撃ったものが?それは、そうでしょ?
その彼が貴族王族でない限り。
権力者が己の身内を使うことはまずないですよ?
罪は身内にまで及ぶ。
いい様におだてられ、使われたんでしょうね。かわいそうに。」
「・・・助かる方法は?頼まれたからしただけなのに?」
「ん?そうですね。死ぬはずがないとおもって?
脅しだからと?」
「ええ!!」
「しかし、主は血を流して倒れた。
その後すぐにニックに気絶させられたから、
その後どうなったかは知らない。
ただ、マティスが緑目でモウ、主もそうだと聞かされた。
死んでいないことは分かる。
だけど、体に傷が付いたのは事実だ。
それを、緑目のマティスが許すはずもない。」
「・・・・・ど、どうしよう!!!!」
もちろん、モウに腕を捧げている、わたしとセサミナ殿もだ。
モウからの指示とニックの命令がなければ、関係者共々粉々だぞ?
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
(ほい!ガイライ!母さんは復活したよ!今からご飯!!)
(モウ!)
(緑目のこと言えんでごめんね。
色物を目に付けたってぐらいの変化だから、普段と変わらんからね)
(それとおなじですか?)
(うん。あ!)
(え?)
(黒髪に緑目はちょっと色っぽいよ?)
(ははははは!ええ、そうでしょうね。見せてくださいね?)
(もちろん。今なにしてんの?)
(行商です。それと情報収集と。いきなり値切りの洗礼を受けました)
(お?それで?)
(退くように見せて、別のものが購入、うまく売れましたよ?)
(良し!でかした!!)
(さすが、モウですね)
(いや、わたしもザバスさん、あの雑貨屋さんに教わったよ?)
(ああ!なるほど)
(あ、今話してても大丈夫なの?)
(2軍の両家の話を聞いてるんですが、その話が・・・)
大まかに生徒たちの話を伝え、
喜びそうな話を作ってもらった。
あとは、狙撃犯のことは、捨て置けという。
滅する必要もない。その価値もない。
モウが銃で倒れたという流れを作ったということで、
それに乗るだけだと。
(だからね、臣としてなにもしなくていい)
(・・・はい)
(ふふふ。でも、仕事としてはきっちりね。息子よ?頑張れ?)
(はい!)
生徒を呼んでもらうことにした。
今は20人ほどだが、7,8人はすぐに集まるという。
例の劇の話も、雨の月、
合わさりと離れはじめの月の真ん中だそうだ。
それ、俺たちも見たいな。
頼んでみよう。
あー、リーズナも見たがるかな?
サッチの石にも会いに行かないと。
が、こっちが先だ。
「わたしたちにもなじみの店があるもの。
そこは、3つ買ったら、2つ分の金額にしてくれるわよ?
これもそうしてくれる?
だったら、買ってもいいわ。」
(そう来るか!!)
(ニック任せろ!この場合の対処法も習得済みだ!)
「はははは!それはさすがに酷というもの。
いつもお相手しているお得意さんでしたら、
それでも利益をあげれるんでしょうが、新参者には厳しい。
3つ買っていただいても、利益が出るか出ないか。
ギリギリなんですよ。しかし、それでも買っていただけるのなら、これ、
少し小さい目の籠を付けますよ。ちょっとしたものを置くのに便利で、
布で撒いてますから、小物を置くのにもいい。
どうですか?まだ、これはまだ売り出していない商品なんです。
評判良ければ、もっと作っていこうかなと。
どうですか?」
「ふーん。でも、3つもいらないわ。」
「ああ、そうですね。では、2つで?
しかし、うーん、2つお買い上げで、これを?
これを作るにも手間と時間がかかっているんですよ。
3つならなんとか、持ち出しにならないんですが、
2つとでこれをつけると、厳しいのが正直なところ。
今回は諦めたほうがいですね。
次回、いつになるかわかりませんが、
もっと勉強させていただいてから寄せてもらいますよ。
ルカリ!悪かったな!折角、生徒さんを呼んでもらったのに!」
「ガイライ殿!そんな!
だったら、わたしが買いますよ!」
「あははははは!それでは商売にならないだろ?
まだまだ勉強しないといけないな。
ニック、ニック隊長、ダメでした。
帰りましょう。」
「え?ダメなの?帰るの?
折角作ったのに?ダメなの?」
(ほんとに帰るの?)
(まさか!)
「ティーナ?いい品よ?わたしは買うわ。
3つ?母さんたちも欲しがると思うから6つください。」
「ありがとうございます!
これ、色や大きさも多少違うので好きなのを2つ選んでください。
青が人気だとか。」
「あら!それは古い話よ?」
「え?そうなんですか?こういう話も仕入れないといけないですね。
今後の商売のために今、何が流行りか聞いても?」
(なんだよ、その笑顔!胡散臭い!!)
(そうだが、売れただろ?他の者も買うぞ?)
「わたしも、これ、3つ。
流行りはやっぱり刺繍布かしら?ね?」
「そうね、それと密封器?それはないのね?」
「あー、それはな。これは、俺たちが作ってるんだよ。
この炭はどう?籠に入れておけば、なんとなく匂いが取れるって。
これは感じ方が人それぞれだから試してみて?」
「匂い?どんな?」
「靴とかさ、服とか?それをしまっておくとなんとなく臭わないか?
その時に入れておけばいいみたい。
んー、嬢ちゃんたちはきれいにしてるからいらないか!
おい!ルカリは?お前は臭いだろ?買えよ!」
「な!ニック隊長!その言い方!
わたしが臭いみたいじゃないですか!!」
「あはは!間違いではないだろ?」
「わたしはこっちとこれとこれ。
この組み合わせでもいい?」
「もちろん。好きなの選んでください。」
「ありがとう!この炭も。先生はまだましよ?
でも、軍の方はちょっとね。」
「・・・まだ、なんだ。」
(このまま軍のことを聞いていこう!)
(なるほど!)
「あー、3軍体勢になったの知ってる?
俺たちは第3軍で2人なんだよ。
で、ルカリが最初に言ったように、
予算が出ないから行商してんのね。
あとの2軍は王族のスダウト家とタレンテ家だ。
いいよな、予算も出るし、王族だし。」
「軍隊長は決まったんでしょ?
でも、その両家は当主問題で揉めてるんですよ?
ご存じ?」
「それ、聞いた話?いいの?ここで話しても?」
「ふふ!だって、聞こえた話ですもの。知りたいですか?
これ、おまけしてくれます?」
「あはははは!なるほど!どうする?ガイライ?
こっちが上だぞ?」
「そのようだ。が、商品はおまけできないんですよ。
面白そうな話だから聞きたいんで、
頂き物の焼菓子とお茶でどうですか?」
「素敵!!!!」
(おまけでよかったんじゃないの?)
(それは絶対にダメらしい。茶菓子は今回はないと言えるが、
商品をおまけにすると、
次回もそうなる。茶菓子は貰い物だと言えるからな)
(あー、なるほど)
ルカリには最初に情報を集めると言ってあるから、
話が逸れていくのをうまく両家の話に戻してくれる。
タレンテ家の当主はブラート、これは高齢だということで
一線を引いている。
トウキンがしゃしゃり出ているが、当主代行でもない。
セサミナ殿がタフト領主メラフルから聞いたネンサーの名はでなかった。
スダウト家はクラビットの代わりにアリンだろうということ。
アリンの父親は死んだことになっていた。
半日前の話だ、アリンが自滅したことはまだ知らない。
マルアルがブラートに面会を申し込んだこともだ。
それが今外に漏れることはない。
当然、モウちゃんが撃たれたこともだ。
「え?じゃ、ブラートは高齢ではなく、病気になったから、
マルアルは当主を辞めたの?」
「そう聞いてますよ?
マルアル様が崇拝する人がブラート様で、
そのブラート様がご病気になったから、当主なんかしてられないって!
毎日お祈りしてるって!」
「?」
「わたしが聞いたはなしは逆よ?
マルアル様が当主を退いたのが原因でブラート様は病気になったって!
だから、マルアル様が当主に戻ればブラート様は元気になるのにって!」
「?」
「わたしのは呪いって聞いたわよ?
本当はブラート様は死ぬ呪いを掛けられたって!
死なないようにするにはマルアル様が当主を退くことが条件だったって!」
「?」
「みんないいわね!じゃ、これ!
ブラート様がご病気になって、マルアル様はやる気をなくしたのよ。
だって、2人はとても仲が良かったから!」
「それもいいわね!」
「え?みんな嘘なの?」
「王族様の本当の話なんてわかりませんよ?
いま、この両家のお話を作るのが流行りなんです!」
「なんだ!びっくりしたよ、どれも本当みたいだ。」
「先にブラート様がご病気になったのは本当ですよ?
それから、マルアル様が当主をやめたって。これは本当。」
「へー。俺がやめてからだよな?ガイライ?」
「ブラート殿がご病気になったかどうかはわからないが、
一線を引いた、それは事実だ。
確かにそのあと、マルアル殿が息子に譲った。
だから、こうなんじゃないか?
呪いをかけられたかもしれない。
病気かもしれない。どちらにしろ、体は思うように動かない。
そうなると気弱なるものだ。
それで、ブラート殿とマルアル殿は競い合う好敵手なんだな。
ブラートが言う。
自分が病の間にお前は躍進していくんだろうな、と。
さみしそうに言うんだ。
それを聞いたマルアルは?
お前が病気を克服するまで、わたしは当主を退こう
ブラートは驚くだろうな。
なんのために?お前は当主になるべくしてなった男だ、
それが、わたしが病になったからと言って、退くことはないだろう!
とな。
だったら、早く病を治すことだな、そうすればわたしはまた当主に戻れる
頑張ってくれ、わたしの為にも
2人はきっと涙しただろう。
ああ、もちろんだ。すぐに、良くなる。
待っててくれ。
もちろんだ。早く、2人でニバーセルを盛り立てていこう、とな。
こんな感じはどうだ?」
「「「「「それがいい!」」」」」
(なにそれ?)
(モウに作ってもらった。さっき連絡が来た。
今から飯だそうだ。いつもと変わりない、主で母であった。
安心したよ)
(そうだろ?最初から緑の眼なんだよ、モウちゃんは)
女どもはそこからまた話を作っていく。
結局、分からんな。
そして話がどんどん変わっていく。
修正はルカリでもできないな。
1人だけ、その話に参加しない女がいた。
笑っているが、目が笑っていない。
間者だ。
その女が声をあげた。
「あ!そう言えば!
会合があったんでしょ?その時の食事が良かったって話!
カレエ?っていうの?どんなのか知ってます?」
「知ってる!!うちの旦那が屋台の組み立てを手伝って、食べたって!
持って帰ることもできないほどっていうのよ!
その前は資産院の前でも売ってたって!」
「ああ!辛いのだろ?あれはうまいんだよ。」
皆が一斉にこっちを見た。
・・・怖い。
「食べたいわ!」
「あれ、コットワッツが扱うの?モウモウ商会?」
「いや、聞いてないな。モウに聞いておこうか?」
「あ!モウって、赤い塊のモウ、さん?」
「知ってるの?」
「ええ!スダウト家とタレント家が競うように調べてたから!」
「調べてどうするんだろ?軍を支える王族家だ。
なんか依頼するのかな?石使いとして?」
「聞いた話だけど、お抱えにしたいみたいね。
で、剣のマティスも。」
「あれも?」
「あ!やっぱりご存じなんだ!」
「お前たち!言っただろ?ガイライ殿は1番隊長だったし、
マティス殿がいらした時の所属部隊の隊長だ。
ニック隊長は、わたしの上官だったんだぞ?
で、マティス殿の上官でもあったんだ。
そして槍術をニック隊長から教わっている!
この前、新旧の弟子対決もしたんだぞ?わたしとマティス殿は!」
「えーー!!先生は剣のマティスのお相手できたんですか?」
「槍だったが、引き分けだぞ!」
「キャー!!先生!以外とお強いんですね!!」
「・・・・以外なんだ。」
「ルカリ?頑張れよ?そう見えなくしてるんじゃなくて、
そう見えてるってことだから。」
「・・・はい。」
「いいんですよ!先生はそれで!」
(話がルカリに行く!戻して!)
(わかった!)
「いや、で、モウちゃん、ああ、彼女も俺が槍を教えたんだよ、
モウちゃんとマティスを雇いたいってこと?」
「そうなんです!だから、ちょっと強引に進めるみたいですよ?」
「強引?無理だろ?
何か手があるんなら、こっちだってほしいよ、マティスとモウちゃんは。
だけど、コットワッツが許すはずがないしな。」
「でしょ?だから、なにかするみたい。」
「おいおい、怖いな、それ。だけど、何ができる?なにもできないだろ?」
「でも、モウさん、撃たれたんでしょ?」
あの女が、にやりと笑いながら言った。
「え?それ知ってんの?すごいな!」
「ニ、ニック隊長!それ本当なんですか?そ、それで?容態は?」
「いやだ!先生!臣の腕を捧げたっていうガイライ様がこうして、
行商してるんですよ?無事に決まってるじゃないですか!」
「あ!そ、そうか、びっくりしましたよ!」
「いや、容態はわからんのよ?な?ガイライ?」
「え?」
「わたしがこうして商売をしているのは、
主がそう望んでいるからなんだよ。
主の望みなんだ。主の為に生きてはダメだと。
仕事が優先だと、ね。これが唯一主が望んでいることなんだ。
臣の腕を捧げたものには、
主の命よりも主の命の方が優先なんだ。」
「え?では、モウさんは?」
「わからん。マティスも動いてないしな、セサミナ殿もだ。
死んではいないと思うが何とも。」
「ニック隊長!そんな暢気な!」
「仕方がないだろ?動けないんだよ。
こっちは軍だ、それで一領国の領主護衛が撃たれたからって
どうすることもできなんだよ!」
「それはそうですが!」
「ガイライなんて、顔に出ないようにしてたのにな。
やぱり、そんな話すぐ広まるんだな。
師匠のワイプも知らねえんじゃないか?
マティスはもちろん言わないし、
付きっ切りだろうから、それどころじゃないだろう?
こっちも知りたいんだけど、なんか知ってる?」
「え?撃たれたってことだけ。みんなが話してましたよ?」
「モウちゃんが撃たれたと?」
「ええ。」
「うーん、そうか。もっと詳しく知りたいな。
モウちゃんは死んでないよな?これは、ガイライはわかるんだな?
でも、その容態まではわからんと?」
「ええ。」
「撃った奴を探さないといけないのは軍の仕事なんだよ。
が、手がかり無しだ。
んーと、あとなんかある?」
「ニック隊長!!彼女たちを使わないでください!!」
ルカリはあくまでも先生の立場。
守る側だ。
「だって、何かしておかないと立場ないだろ?」
「そんな情けないこと言わないでくださいよ!!」
ルカリは本気で怒るが、ほら、あの女の眼が笑ったぞ?
「先生!いいですよ?聞いた話なんですもの。
えーと、なんでも、屋根の上から狙ったとか?」
「え?屋根?そこから狙ったってこと?」
「ニック隊長では無理ですね?」
「ガイライ?お前の主が撃たれた話なんだぞ?
嬉しそうに言うな!」
「主、モウは無事ですよ!
それで、その相手をこちらが探すのも望んでないから。」
「なんで?」
「主、いや、マティスがどうにかするんじゃないか?
その邪魔はしたくない、臣として。」
「あー、それもあるな。緑目だしな。」
「え?誰がですか?」
ルカリは本当にいいな。
意識しないで、こちらの望むように話を持っていってくれる。
あれか、運ぶ人か?リーズナのような?
いや、ちょっと違うか。
流れに乗ってくれる人?
それはほとんどの人間だな。
望む流れに乗る人か。みなを引き連れて。
こういう奴はたくさんいる。
それを制御しないといけない。
悪い方の流れに乗るのを止めないといけない。
「いや、マティスが緑目で、対象はモウちゃんな。
これは、薄々皆が思っていたことだ。
そう見えなくしていたんだとは思うよ?
面布をつけてることが多かったし。
それを見せたんだよ、皆の前で。
で、モウちゃんも緑目だって。マティスが言ったんだ。」
「た、対象は?」
「マティスだ。」
「・・・そうですよね。」
「だから、緑目の対象を排除した行為がどういうことか
よく考えろといって、移動した。」
「!?」
ルカリはマティスとモウちゃんが移動できることは知っている。
それをここで言うことに怪訝な顔をした。
「移動な、それこそ皆が知ってる話だ。セサミナ殿は移動ができる。
部屋の端から端ではなくな。
その兄、マティスもできるとな。
セサミナ殿は領主だ。移動は領主の力だと本人が言うんだ、
領主の力を浄化の力以外に他の者が使うことはできない。
マティスは緑目だ。対象のためにしか使わないだろうな。
で、その対象を害したんだ、そいつは近いうちに死ぬだろうな。
もちろん指示した奴も、その関係者も。
それをコットワッツは領国挙げて正統化する。
セサミナ殿ってけっこう容赦ないから。」
「ああ。それは、ええ、わかります。」
「な?」
(その話は知らないようだ。心音が早い)
(じゃ、撃った奴関連?マティスがワイプに話した奴だな、
すぐにその場を離れたと)
(本人ではないな。だったら、マティスの気をうけているはず。
暢気に話なんぞできないだろ)
(近いもの?気もわからん奴かもしれんぞ?)
(それもあるだろうな)
(話だけを聞いた部類か。どちらにせよ、ルカリの周辺を探っていると)
(だろうな)
「マティスが今動いていないってことは、
相手のことを把握してるんだろうな。
いつでも探せるってことだな。
怖いな!俺だったら、すぐ逃げるね。
別にモウちゃん恨みがあるわけじゃないだろ?
誰かに頼まれたんだな。
しかし、屋根の上からだろ?
うまいよな。なんか鍛錬したんだろうか?
そっちの意味で確保したいよな。」
「確保してどうするんだ?」
「いや、銃の腕わるいっていうから、練習?
教えてもらうんだよ。」
「・・・情けない。」
「ガイライ!お前だって似たようなもんだろ?
ルカリは?銃の支給があったんだろ?どう?」
「どうと言われても、ニック隊長?そこらへんの話はまずいですよ?
わたしも軍内のことはここでは話さない。」
「あ!それもそうだ。
わるいな。なんにせよ、そいつの関係者は早いこと始末されるな。」
「え?」
「だってそうだろ?そこから、足が付く。
逃げるにしても、大門、通用口、裏門と閉鎖してるだろう?
気もわからない素人で、銃の腕がだけがいいってだけなら、
どこかで自慢気に話してるかもしれないしな。
さすがに依頼主のこと言わないだろ?
だけど、いつ話すかわからない。
だから始末する。
それらと敵対関係者につかまって見ろ、
石を使って白状させるんならまだましだよ。今、石は高騰してるから、
拷問を掛けるかもしれない。死ぬな。」
「ニック隊長!!やめてください!!
彼女も顔色が悪い。軍人じゃないんですから!」
「いや、悪い、悪い。
屋根から狙われたって話だけでも、収穫だよ。
ありがとな。
菓子もないし、商品のおまけもできないけど、
簡単な護身術なら教えてやれるぞ?
ルカリでも投げとばせる!どうだ?」
「キャー!やってみたい!!!」
「・・・・やってみたいんだ。」
(俺はこっちでやってる。あの女を抑えろ)
(承知)
(・・・殺すな?今は)
(・・・)
(これ、上官命令)
(・・・・承知)
ガイライも容赦ないからなぁ。
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
「大丈夫ですか?ニック隊長は配慮というものはしらない。
ここに座って。コーヒーはまだありますから。」
震えているな。
素人だ。これに銃を持たせて?
オーロラの話だと、すぐに逃げたと。
屋根の上だぞ?それだけ素早く動けたと?
屋根も外れている箇所があったと。その力もない。
・・・・。
ああ、わざとか?
後からではないな、先に外してたんだ。
「あ、あの?ニック様は確保したいって?
それは、それは、保護したいということでしょうか?」
「ああ!さっきの話?ニックは銃の腕がちょっと問題で。
それで、そういったんでしょうね。
保護というより、教えてほしいということですよ?」
「・・・・殺されるんでしょうか?か、彼は!」
ほら、わざとらしく彼といった。
こいつだ。
「その撃ったものが?それは、そうでしょ?
その彼が貴族王族でない限り。
権力者が己の身内を使うことはまずないですよ?
罪は身内にまで及ぶ。
いい様におだてられ、使われたんでしょうね。かわいそうに。」
「・・・助かる方法は?頼まれたからしただけなのに?」
「ん?そうですね。死ぬはずがないとおもって?
脅しだからと?」
「ええ!!」
「しかし、主は血を流して倒れた。
その後すぐにニックに気絶させられたから、
その後どうなったかは知らない。
ただ、マティスが緑目でモウ、主もそうだと聞かされた。
死んでいないことは分かる。
だけど、体に傷が付いたのは事実だ。
それを、緑目のマティスが許すはずもない。」
「・・・・・ど、どうしよう!!!!」
もちろん、モウに腕を捧げている、わたしとセサミナ殿もだ。
モウからの指示とニックの命令がなければ、関係者共々粉々だぞ?
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
(ほい!ガイライ!母さんは復活したよ!今からご飯!!)
(モウ!)
(緑目のこと言えんでごめんね。
色物を目に付けたってぐらいの変化だから、普段と変わらんからね)
(それとおなじですか?)
(うん。あ!)
(え?)
(黒髪に緑目はちょっと色っぽいよ?)
(ははははは!ええ、そうでしょうね。見せてくださいね?)
(もちろん。今なにしてんの?)
(行商です。それと情報収集と。いきなり値切りの洗礼を受けました)
(お?それで?)
(退くように見せて、別のものが購入、うまく売れましたよ?)
(良し!でかした!!)
(さすが、モウですね)
(いや、わたしもザバスさん、あの雑貨屋さんに教わったよ?)
(ああ!なるほど)
(あ、今話してても大丈夫なの?)
(2軍の両家の話を聞いてるんですが、その話が・・・)
大まかに生徒たちの話を伝え、
喜びそうな話を作ってもらった。
あとは、狙撃犯のことは、捨て置けという。
滅する必要もない。その価値もない。
モウが銃で倒れたという流れを作ったということで、
それに乗るだけだと。
(だからね、臣としてなにもしなくていい)
(・・・はい)
(ふふふ。でも、仕事としてはきっちりね。息子よ?頑張れ?)
(はい!)
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