いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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633:屋台

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24人。すべて縛り上げて馬車に積んでいく。
ガイライ殿の相手をしたタンダートと元カリク殿の配下以外は
全てオヒルネ状態。
お嬢関連、6人はそのまま置いてきている。音石と月無し付きでだ。

カリク殿とニック殿、ムムロズ、縛り上げた者たち。
ガイライ殿、タンダートとカリク殿の元配下、
それとわたしで馬車に乗り込んだ。

「東に?国仕えか?」
「その様ですよ?腰飾りはエルトナガ独特のものだ。」

ムムロズがそう言っていたが違うだろう。
どこの世界に身元が分かるようなものを身に付けるか。

「エルトナガがニバーセルを?」
「痛み止めの原料となるものが取れなくなったと
うわさで聞こえてくるくらいですから。
砂漠石が豊富なニバーセルを欲してると?」
「コットワッツの砂漠が枯渇したのにか?」
 「マトグラーサは豊富ですからね。銃の話も行っているんでしょうね。
それをわたしたちがどうのこうのできるもんでもない。
カリク殿にお任せしましょう。」

元配下は完全に怯え切って、御者を務めている。
ムムロズ殿がここまで強いとは知らなかったのか、
戻れば始末されるからなのか。

タンダートが殺気を未だ出しているのが不思議だな。

(ガイライ殿?)
(タンダートのことか?殺気だろ?)
(ええ。どうしてここまで?)
(見張りがいるんだろうな。この3人の中か、
あの前の馬車にいるのか。手合わせ中もそこに意識を置いていた)
(ニック殿?)
オヒルネ中の者はみな寝てますか?)
(いや、3人ほど寝たふりだな)
(ガイライ殿にもつなげて)
(その中の1人だろ。呼吸が安定している。
残りの2人はまさしく息を殺しているぞ?)
(タンダートの見張りか?)
(そのようですね)
(モウちゃんが気付いたら面倒だぞ?)
(マティス君に向かってるもんでもないので、即殺はないでしょうが、
ガイライ殿ですから、どうでしょうか?
これも修行です。威嚇か本気か見極めないと)
(だけど、これ、隙あらばだろ?)
(それに気付けるかどうかですね)
(ワイプ師匠は厳しいねー)
(モウが出した課題のほうが厳しいですよ?)
(そりゃそうだ)



─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


「ニック殿はずっとお一人で?ご家族は?」
「一人だな。国に帰って、のんびりしてたよ?」
「・・・・・なんで戻ってきたんだ?」
「ガイライがな、戻って来いって。俺もいいかなーて。」
「臣の腕も持たずにか?」
「ああ、返してもらったよ?で、ガイライに捧げた。」
「なに?ご存命だったのか?会えたのか?え?」
「そうだ。で?嫁は何人で、子供は何人で孫が何人なんだ?」
「嫁は一人だ!子は12人、孫は9人だ。
雨の日に子供はもう一人増える。」
「おお!カリク殿!素晴らしいな。
息子もいたよな?それに跡を譲らないのか?」
「残念ながらみな亡くなりましてね。
後は娘のテンレのみです。引継ぎをしたいのですが、
子供が生まれますのでね。
また5年は先ですよ。
引継ぎしようとすると、子供ができる。」
「じゃ、孫は?」
「その一人が、クインタといいます。ムムロズとテンレの子です。
なんともお恥ずかしい。」
「あはははははは!そりゃ問題だな!ムムロズの躾が悪いんじゃないの?」
「子育てをしたことがないものがいうことじゃねぇ!」
「そりゃそうだ。なにがダメなんだろうな?」
「・・・・数字と武がダメな父親はダメなんだと。」
「え?隠してたの?」
「それはわたしがそうさせていたんですよ。それがこんなことになるとは。
やはり、年ですね。」
「ま、そうだな。この頃の若いもんは、って話になるな。
うちのところでもな、戻った直後に若いもんともめてな。
えらいお叱りを受けてたよ、ガイライが、モウちゃんに。」
「モウ殿に?ガイライ殿が?」
「そうよ。お前がふがいないからだって。
俺も後から聞いて、何というか、気を引き締めたよ?」
「ニック殿?よくわからないんですが?」
「ニックの話は分からん、昔から。」
「それはマティスだろ?あいつの話の方がもっと分からんぞ?」
「・・・剣のマティスだよな?あれ?で、赤い塊のモウ?」
「そう、モウちゃん。マティスの料理はうまいだろ?
モウちゃんも俺の好みを突いてくるからな。
まただしてくる酒がうまくてな!
そうだ、ピクト近くに酒を造ってるところがあるだろ?
そこにも行くつもりなんだよ。ムムロズ、知ってる?」
「・・・・残念だが、酒はないぞ。水が枯れた。」
「そうなのか。でも、ま、案内する約束だからな。場所教えてくれ。」
「そこまで行くと、王都の戻りが間に合いませんよ?
わたしとの時間も一日は作っていただきたい。」
「だから場所を先に聞いておきたいんだ。
無理ならすぐに戻るから。」
「俊足馬でないと間に合いませんよ?」
「ん?それは大丈夫だ。で?どこ?」

結構遠いな。
移動で近くまでいったとしても、時間がかかる。
気配は探れるか。手繰り寄せる?
鍛錬だ、鍛錬。
しかし、ガイライに中てるタンダートの殺気がうっとしい。


─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘

「これはうまい!!」
「ね!でも、冷蔵庫で、寝かしたものはもっとおいしいの。
冷蔵庫、いかがですか?」
「20リング?そうだな。どうしようかなー。」
「お客様!なんて買い物上手なんだ!
いまなら冷凍庫とセットなら40リング。そこに!
この窯もつきます!」
「燃料は?」
「燃料は樹石です。これもバケツ3杯分!お付けします!
これであなたは今日から荒野のパン屋さん!!」
「買った!!」


あははははは!!!!

カンターウォーマーはジェフェニさんがいったん家に帰っている間に
各地を回って調達。
皆驚いていたが、急ぎだということで。
さっくりお願いで組み立て。
みながみな、いつでもいからゆっくり来てくれと言われた。
いつの間にかマティスが、真綿の布団の注文を受けている。
在庫分全部でお布団づくり。
ジェフェニさんは小麦と卵、乳を仕入れて帰ってくる。
そこからパン作りとキャムロンの調理だ。

蓄えは本当にあるようで、冷蔵庫と冷凍庫、
カンターウォーマーをお買い上げ。
これは帳簿をつける。仕方なし。
タフトに税を納めるわけではないからだ。
コットワッツに納めるんならいいよね。

窯を荷車に設置して、屋台でパンを焼く。
燃料は樹石だからと移動も簡単。

この方法はいいよねと、
マティスと3人でいろいろ考えていく。


「特定の場所に同じ時間にいるっていうのが重要だと思う。」
「それは私たちにはむりだな。」
「うん、だから、こっちはそのときに遭遇できたお客様だけ買える。
ジェフェニさんは固定客を確保しないとダメですよ。」
「そうなるよな。」
「で、清潔に。ここで、食べてもらってもいいけど、お客さんが買ったら、
ゴミとか残しちゃダメなんだ。きちんと片付けてね。」
「いや、ここで暢気にたべることは少ないかな?持って帰ってもらう?」
「そうだね!じゃ、冷めてもおいしいものね。
飲み物も、保温性がいい容器に入れる?」
「小さな砂漠石を入れたりするぞ?」
「じゃ、こぼれないような容器だ。
ブラスとゴムで栓をする感じ?」
「それを毎回売るのか?高くつくぞ?」
「そうかー。ま、各自の入れ物に入れるほうがいいかな?
専用の入れ物も売るとか?」
「専用?」
「それ専用の。コーヒーいれて、ぴってすれば、
砂漠石が温めてくれるような。
砂漠石込みで売る。それこそ高くない?」
「小指の先より小さな砂漠石でいい。1銅貨もしないな。」
「じゃ、コーヒーいれて、専用の容器を買ってもらって、
それに入れるんだったら、
砂漠石はおまけとか?」
「いま、砂漠石は値上がりしているから、どうだろう?」
「そうだねぇ。ま、値上がりしたらやめちゃえばいい。
無理することないもん。」
それより、あの人、またきて嫌がらせとかするかな?
他の人は?」
 「この商売の仕方は誰もしていないから文句は出ないとおもう。
が、すぐに真似されるかな?」
「それも考え物だね。いいお隣さんだと、今日はこっち、明日はあっちって
毎日通ってくれる人もいるかもしれないし、
そうやって集まったら、それはそれでいいんだけどね。
邪魔されたり、嫌がらせがあったらだめだよね。
えーと、ここの顔役ってカリクさんて方だと聞いたんだけど?
さっきの人はカリクさんよりえらいさん?」
「まさか!カリク様は本当に偉い方ですよ?
卵採りはそのカリク様のお孫様の配下なんですよ。」
「ああ、お家騒動なんだ。
が、カリク殿も孫1人押さえられないっていうのはどうなの?
やっぱりもうお年だから?」
「いえいえ。若い方には誘惑が多いですからね。」
「ああ、そうなんだ。」

誘惑を跳ね返さないと後継者になれないと。
試練だね。

「でも、見極めないとね、その相手を。ティス?」
「見抜けていなかったんだろうな。
愛しい人?お前はどう思う?」
「んー。これをティスに向けてたら即殺なんだけど、
向けてるのがガイライだし、そんなのは問題ないだろうし、
もちろん、ティスもそうなんだろうけど、強さの問題じゃないからね。
殺気を放つだけで許せんって思うから。
んー、ガイライの場合はかあちゃん的には許せんから、行ってきてもいい?」
「そうだな。肉を焼かねばならんからな。ここで捌かないといけないし。
ジェフェニ殿?手伝ってくれるか?ポットの丸焼きにしよう。」
「え?お嬢ちゃんは?どこに?」
「ちょっと息子を迎えに?じゃ!」


忍者走りで、土煙を揚げて、ドロンだ!!


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