いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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556:海と砂漠

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メーウーが乗った馬車が2台。
先頭がドーガーで、後ろは御者無し。
ロクがちゃんとついていく。
その後ろに、ルグが御する馬車。
これにはもちろんセサミンが乗る。

わたしたちはその横に。
走ってついていく。
試しに乗ったのだが、やはり酔うのだ。
テンが申し訳なさそうにしたけど、直接乗るなら問題ないし、
浮くわけにもいかないからね。この服だと浮いているのが丸見えだ。
護衛も兼ねているからと、走る、走る。
その後ろに開発院の馬車、2台。

残念ながらサイとの遭遇はなかったが、仕方がない。
閉鎖している門を開けて、ティータイに。

サイが突進しても大丈夫なように補強はしておこう。

ちょうど食事時なので、
開発院の方々とセサミンは会食に。

メニューはサイのステーキらしい。
毛を焼いた状態の物ではなく、
ゴム手袋でむしったもの。
脂がのっておいしい方だ。

王都の方でもサイの家畜化に力を入れてほしいというのがある。
草原、ラーゼム領国もそれを一大産業にしてしてほしいということだ。

従者にはない。
なので、控えの間で、ハンバーガーとラーメンだ。
護衛は領主館のなかでする仕事はない。
マティスは気配を消して傍に控えるが、
わたしは西馬たちとおしゃべりだ。


「テンたちもお疲れ様。
お水出しとくね。メーウーたちは?
ちょっと元気ないよね?
元気になってからラルトルガ?そうか。
そのほうがいいね。」

綿花はコットワッツ。メーウーはラルトルガ。
これは前回の会合で決まったことだ。
元気になったら、ラルトルガに行って、乳を出す。
刈り取った毛はコットワッツに。
卵からかえったばかりのメーウーはある程度大きくなるまで、こっちで。

「かーわーいー!!」
手乗りメーウー。
 メーウーは年に数回、卵を産む。
これは動物、それぞれで違う。ガルッスは年がら年中だしね。
少し小さなメーウー。雨の日前にはもう普通の大きさになるとか。
その小さなメーウーたちの中に、今回引き取ったメーウーがいる。
仲間が沢山いるので、見た目にも元気になっている。
それ以外は雨の日以外で数回というこのようだ。へー。
トリヘビは雨の日だよね。数年に1回、珍しいタイプのようだ。

じゃ、馬も?
馬も毎年ではなく、数年に1回。
寿命が関係しているのか。
是非とも手乗り馬を体験したい。


西馬はやっぱり元気がない。
干し肉をあげると喜んだ。
テンたちは要らないって。
ほんとにしょっちゅう食べるわけじゃないのね。
では、また今度で。

西馬たちの話では、やはり最近ニバーセルにやって来たと。
出身地はザナスだそうだ。そういっていたと教えてくれた。
賢い!
いままで、西だ、と言われていたけど、はっきりと答えてくれなかったのだ。
向こうだよ、といった答えだったから。

丸い実がおいしいということもタフトの馬たちが言っていたのと同じだ。
で、肉を食べると。テンたちよりももっと頻繁に。
今食べた肉の方がおいしいと言ってくれた。
これだったら、たまにでいいなって。
「あー、わかる。
おいしいものと、毎日食べたいものってちょっと違うよね。
たまに食べるおいしいものなんだ、これは。
わたし?わたしは旦那様が作ってくれるものをだったら、なんでも。
もちろん、毎日食べたい!!」

はいはい、と軽く流された。
この対応は馬共通だ。

(愛しい人?食事が終わった。領地の話がはじまる)
(わかった)

「じゃ、またね。」


会議室にちょうど向かう途中で合流できた。

「護衛の方が同席される必要はないのでは?」

護衛がマティスだと知っていてあえて聞いてくる。

「ああ、そうですね。兄上、姉上、面布を。
今回草原の代わりに得た領土を兄に渡したいのですよ。」
「それはどうして?とお聞きしてもよろしいですか?」
「ご存じでしょ?兄は成人後、領家を出ました。
普通はその時に土地の贈与があるんですが、いろいろありましてね。
うやむやになっていたんですよ。
変動後わたしの護衛として傍にいてくれている。
もちろん、その報酬としてもね。コットワッツの領土を託したいのですよ。
が、ここではない。すでに皆が住んでいますから。
兄は一から開拓していきたいというのでね。ちょどいいかと。」

この時のものの言い方がすごい。
さも、めんどくさそうに、
さも、適当な土地を与えておけばいいっていうぐらい。
笑ってしまう。
だって、こころの中では、ごめんなさい、なんて嫌な奴なんだの連呼だ。
マティスと2人で笑いを押さえるのに苦労した。

「なるほど。では贈与という形ですね?」
「ええ。領土としてはコットワッツです。
税は資産院のほうで決めてもらったものを
納めてもらいましょう。それをこちらから納めるという形で。」

さまざまな形態があるようだ。
イリアス、フェルトナで習得した土地はどこにも属していない。
税は中央とのやり取りになる。仲介はクスナさんだが。
今回はあくまでも領土はコットワッツ。
税金等の通知は直接来る。それをコットワッツに払えばいい。
その都度対応してきたんだろうな、支払方法が多岐にわたる。


「では、規模としてはどのぐらいの大きさで?」
「それはもともと、草原の税分と同じぐらいと考えていましたから、それで。
しかし、ミクナ殿?結局ニバーセルとしては税の減収はなかったんだ。
むしろ領土なってしまった分、1000リングでは済まないでしょう?
わたしどもとしては、今回でなくても、
ゆっくり検討して習得するということもできるのですが?」
「いえ、それは。今回たまたまこうなっただけで。
逆に未開発の土地を領土化して税が増えるというのは良いことですよ。」
「基本税は同じぐらいで。その土地での収益はそちらで確認管理してください。
現地でね。」
「それは当然ですね。資産院の仕事ですから。では。」


会合の時に広げた地図だ。
すでに、ラーゼム領土となっている。
同じような土地の大きさで、どこにも属していないところ。
そこから、沼地、池、川があるところは外す。
どこにつながっているかわからないから。
余程のことがないと習得は出来ない。

会合で見た場所が候補だ。

「これ、根回しなく宣言してもよろしいか?」
「この地図の印が付いているところは、かまわないですよ。
むしろ、中央から習得をせかされている場所なので。」

不良物件の押し売りですね。


「兄上?どうされますか?
宣言も兄上がなさってください。
文言にコットワッツ領としてと入れていただければいいので。」
「むしろ、ラーゼムのように独立なされては?」
「それはダメですね。兄上は各地を回られる。
一つのところに留まるのは勿体ない。
それに、収益が上がれば、コットワッツの資産になるので。」
「それはそれは。」

土地を与える。だが、それはコットワッツ。
収益がでればそれもコットワッツ。でなければでないで、マティスが払う。

(あー、なんていやな奴なんだ!)
(いや、領主として当然。がんばれ!)
(はぁ)

ここは会議室。
誰が聞いているかわからないのだ。
なげくセサミンをなだめておく。

「愛しい人?どこがいい?
私はどこでもいいんだ。愛しい人が選んだところで。
習得できればすぐにでも出立しよう。」
「わたしが選んでいいの?あんまり地図ってよくわからないんよね。
んー、これは?海?ここは砂漠?
あ、ちょっと皆さん、頭どかしてもらえます?ちゃんと見たい。
はい!今ね!
うん、良く見える。
ああ、ここがコットワッツ?
で?この印のついてるどれか?
海と砂漠があるのがいいね。
うん、ここ。ここにしよう。」

思いっきりバッカプルだ。
頭をどかしてもらったのは天井から写真を撮るためだ。
将棋の中継のように頭がかぶってきたら嫌だもの。

あーあ、そんなところを選んで間抜けだなーという顔を
一瞬だけミクナが見せた。

「やはり、砂漠の近くがいいですね。
流石兄上だ。では、宣言を。」



『宣言!マティスが欲する。
グラシオル大陸、所有者なき地を我は欲する。
上空、地中すべて。
その地はコットワッツに属し、我らマティスと愛しい人が管理する』

「はい。これで、この土地はコットワッツ領、管理者マティス殿と、えっと?」
「私が愛しい人と呼ぶものだ。」
 「え?あー、わかりました。
しかし、上空と地中ですか?その宣言は初めて聞きましたよ。」
「その土地の産物で収益が上がるかどうかは、
きちんと視察に来てくれ。
想像だけで課税されても困る。
日程を指定してもらったら、我らもそこに居よう。
できれば、雨の日以降がいいな。」
「えっと。そうですね。
おそらくは年に2000リングでしょ。」
「2000?」
「あのマティス殿が習得したということで、その土地の価値が上がります。
が、なにも産みださないのであれば、それ以上上がることはありません。」
「ミクナ殿は詳しいですね。」 
「あははは!その都度必要なことはお話しできますよ?」
「ラーゼムではわざと話さなかったと?」
「あははは!そんなことはありませんよ。わたしよりも詳しいものが、
数日後には来ますよ。教育係りは明日ですね。」
「明日?準備のよろしいことで。」
「当然です。」


草原の民の性格から己の土地にするというのは分かっていた話。
あの場で詳しいことを説明できる人間がいれば、もめにもめただろう。
資産院は後日。一緒だと、またごねるからと。

教育係は心得を叩きこむ。お金に関することは分からないと逃げる。
資産院が税について説明する。
当然そんなのは知らないというだろうが、領国、領主というのはそうです逃げる。
受け入れないのなら、王都返還してください、が、石の契約は継続です、となる。
コットワッツには戻れない。


ミクナはお土産に冷蔵庫、冷凍庫、タオルと買ってくれた。
手土産の焼き菓子も人数分。
従者の人も喜んでいる。
今日はコットワッツに泊り、明日の月が沈んですぐに来るであろう、
教育係りと打合せをしてから帰るそうだ。
従者がラーメンを食べたと言ったので、それを今から食べに行くそうだ。
従者も一緒に街に繰り出すと。
案内はルグとドーガー。
ザ・接待。




焼肉祭りはあの広場で行われることになった。
草原のことも報告しないと行かないからだ。

「じゃ、サイは5頭と、ボット、豚と海鮮、ああ、エビとカニもね。
置いていくよ。」
「え?一緒ではないのですか?」
「いや、せっかく土地をもらったんだ。先に挨拶に行く。
それで、ちょっとゆっくりするよ。はは!いつもだけどね。
マティスたちはその土地に向かって出立したってことにしてね。
きっと、いろいろ動きがあると思うよ。
わたしたちがいる時には動けなかった人たちがね。
いつでも連絡はちょうだい。こっちもするから。」
「妻たちがその、集まりはいつだと。あと、爺たちも。」
「あははは!そうだね。会わずの月の日の前にしよう。
そうそう、雨の夜会ね。2日前に現地集合になったの。」
「どうして2日前に?」
「ああ、ドロインさんとこに行ったらね、新たに招待状を送るって。
準備があるから2日前。トックスさんとソヤも行くよ。
マティスはマティスで、で、師匠とガイライとも別に送ってくれるって。
セサミンにも届くよ。届いたら、ソヤに渡してね。
トックスさんはドロインさんのエスコートだから。
エスコート?あってる?
マティスが招待状で、師匠を呼ぶのがいやだって駄々こねるから。
あと楽しませてくれる前払いだって!ひどいよね?」
「・・・・・。」
「セサミン?」

たぶん貧血だね。
レバーを食べないと、レバニラ炒めがいいかな?


セサミンは崩れるように倒れ込んだ。
もちろん、マティスが支えるよ?
お姫様だっこだ。
いいねー。




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