552 / 869
552:撤収
しおりを挟むホームビデオ?8mmビデオ?
いや、名前だけしか知らない。なんで8mmって言われてるかも知らない。
カメラはそこそこ興味があったが、ビデオ系には一切興味はなかった。
家にはビデオデッキなるものはない。
ビデオに撮っておく?
レンタルビデオ?今はDVD?
それもしたことがない。
映画はいいよ、テレビでやるものとかはね。
その時に見れなかったものをわざわざ時間を作ってみるというのがなんか面倒だった。
だから、見逃したものが再放送であるってわかるとうれしかったな。
と言ってもそれはドラマではないけれど。
いつからか、人が作ったものを見てもなにも思わなくなった。
見るのはニュースか、自然もの。
でも、時代劇は見てたな。なんだろ、この区別は。
アニメも昔のはいいね。
最近のはダメだったな。
なんだろか?声優?
んー、不思議だ。単に歳をとったということかな?
アニメって1秒に24コマっていうのは聞いたことある。
1分なら、ん?1440枚?すごいな!
戦闘時間は10分として14400枚?
砂漠石の板は無理。それを1秒24回持ち替えることなんぞできん。
ロール状に伸ばして、1秒24コマ移動で記憶!
これだ!
ここまで、0.3秒!
マティスが下に降りる間だ。
我天才なり!!
フレームを作ってそこに薄い砂漠石を通す。
『1秒に24の速さ。外側の景色を記憶すれば、次に!
我らの処女作だ!
基本ピントはマティスに!
アップでマティスの顔、アウトで全体に!
手振れは無しで!』
わたしは絨毯で上空から。もちろん気配は消している。
マティスは地面に降りたけれど、浮いているのか?
しかし、気付くだろう。
真正面で対峙した。
中央にいるトラ。その左右。
その前の2頭。
1頭が立上り、こちらに歩いてきた。
向こうもこちらとの闘いを望んでいる。
気をあげている。
もちろんマティスもだ。
ああ、これはすごいな。
(師匠!)
(え?モウ?どうしました?マティス君は?)
(マティスが闘います。呼びます)
(!)
『ワイプ!来い!』
「なにごと!」
「トラです。濃いトラ。あ!」
始まった。
フレームを持ちながら、アップ、アウトと念じる。
声は出せない。
かなり大きな砂漠石を前に置いて、シュルシュルとフレームを通り、
上部で丸まっていく。
マティスは棒と拳だ
皮を切ることができないから。
突き、蹴り、躱されるが、向こうの攻撃も当たらない。
牙と爪を躱す。しっぽも自在か。
爪がマティスの腕をかすめる。
血しぶきが飛び、それを目で追うトラの隙をマティスが見逃すはずがない。
後ろに廻り、首元に棒先をのめり込ました。
こちらまでゴキリと音が聞こえる。
うぉおおおおおおおおーーーーーーーん。
同じように見ていたトラ、4頭が吠えると、
一斉に飛び掛かる。
『マティス!来い!』
『この荒野の主、トラよ!すばらしき戦いだった。
これはそちらも望んだものだ。
よくぞ最後まで見届けたな!
が、これ以上はできない。悪いな!
撤収!!』
そのままサボテンの家まで移動した。
「マティス!腕!毒?はないね。治すよ?」
「血止めだけでいい。傷は証だ。そのまま。」
「骨もいってるよ?そこは治すから。」
『血は止まり、神経、骨は元に。
表面の傷は誇り高きトラとの戦いの証だ。そのままに。』
「マティス君。」
「・・・ワイプ。見てたのか。血を流してしまった。まだまだだ。」
「毛皮の為でしょう?仕方がありませんね。剣でしたら問題は無いはず。
わたしも棒術だけでは同じようなものでしょう。
体術はまだまだ不得手ですから。
良いものを見せてもらいましたよ。
が、戻らないと。モウ、ありがとう。
あとで、ゆっくり検討できるんですよね?それ?」
「んー、おそらく?」
「確実に見れるように。では。」
とりあえず、コーヒー、いや、カフェイン摂取は良くないかもしれない。
ホットミルクに、土蜜を入れよう。
香りづけはキトロスで。
「難しいね。皮に傷をつけないっていう条件だから。
三日月で、一太刀なら問題ないでしょ?」
「いや、それも分からないな。
ワイプを呼んだのは?」
「ん?わたし一人で見るのはもったいないと思ったから。
棒術だったしね。あとで、師匠の意見を聞こう。
ほんと忙しいんだね。何も持たずに帰ったのは初めてじゃない?」
「そうだな。はー・・・。」
「ん?」
「あの5頭の中で一番格下だ、こいつは。それに傷を付けられた。
タロスが石になってから傷なぞ付けたことないのに。」
「ははは!その慢心ですよ?マティス君?」
「そうか、そうだな。」
「剣を使わずに棒と体術だけで挑む時点で舐めてるってことだね。
皮を傷つけないって条件があったとしても、腹から切ればいい。
うっ、えぐいけどね。」
「あー、そうか、そうだな。」
「でも、さすが、わたしのマティスだ。次は一撃必殺で行こう。
もしくは2-2でわたしも参戦するよ。」
「・・・もっと鍛えてからだな。あなたの動きを意識してしまうだろうから。」
「あー、いかんね。うん、わかった。頑張るよ。」
「で?木の枠をもって何をしてたんだ?」
「んー、これはしばし待たれよ。ちょっとゴソゴソしないとダメだから。」
「・・・ゴソゴソか。」
「はは!凹んでるね。マティス?己を何だと思っていたの?
まだまだ小童。精進せねばなるまいて。」
「小童!あはははは!それもそうだ。さ、トックスのところに行こうか?」
「んー、先になんか食べよう。緊張しておなかすいたよ。」
「ああ、そうしよう。なにがいい?」
「んー、おうどん!カレーうどん!!連続でカレーだけどいい?」
「私はかまわないよ?」
「お昼の残りがあるから、それをお出汁で薄めてお肉を足そう。
作るよ。」
「一緒にな。トラの肉も煮込んでおこう。
あのマンザスの枝で香りづけしてもいいかもしれないな。」
「おお!あの話ね、トラがマンザスに来るのは、
マンザスを食べる動物狙いなんだよ。
だから、マンザスの葉の煙を吸ったり食べている人間を襲ったんじゃないかな?
マンザスにお肉をおいしくする成分があるとか?
荒野のボットと豚はおいしかったでしょ?」
「そういうこともあるのか?」
「んー玉葱とか、果物に漬け込むとか?
そういう成分があるからとかなんとか。
キトロスのマーマーレードに漬け込んだお肉
やわらかくておいしくなったでしょ?そんな感じ?」
「なるほどな。物は試しだ、やってみよう。」
「うん。半分は干し肉にしようね。」
「好きだな、干し肉。」
「いつでもお肉が食べれるっていうのは画期的だよ?
故郷じゃ、食べなかったもの。
んー、でも、マティスの作った干し肉が好きなのよ?」
「はは。ではたくさん作ろうな。」
「うん。」
昆布とカツオもどきの出汁でのばしたカレーうどんは絶品だった。
ネギかわりの香草が効いている。
もちろん食べる前に濃いめの色のシャツに着替えている。
マティスは傷の手当の後シャワーを浴びたが、
砂漠の民の服は大体が生成りだ。
それを着ようとするのでストップをかけた。
「どうして?」
「飛ぶ。」
「なにが?」
「カレーが」
「?」
「濃いめの、緑で染めたのあったでしょ?それね。
わたしもそれで。」
「?」
食べた後、思いもよらないところに飛んでいた。
「ね?」
「なるほど。」
なぜか2人とも、肩の後ろに飛んでいた。
生きのいいうどんだこと。
最初に解体したトラの肉は一晩掛けてマンザスの枝と一緒に
低温で煮込むことにした。
朝が楽しみだ。
この日はこのままサボテンの森で泊まることにした。
マティスの腕に付いた3本の傷。
完全に治っているが、傷はそのまま。
「んー?この傷の感じはどこかで見たよ?
マティスの背中のここ。似たような動物にやられたの?」
「どこ?」
「ここ、背中。見えないよね。
合せ鏡で見れるかな?」
「合わせ?」
手鏡を用意して、扉君の家に置いてある鏡を呼び寄せた。
「ここに立って、これ持って、反射させたら見える?」
「ああ、見える。背中なんぞ初めて見た。」
「まぁ、そうだよね。ここ、ちょっと色が違うでしょ?
3本。砂トカゲ?ではないよね?」
「・・・・覚えていないな。」
「結構古いよね。腰の傷跡より古い。
子供のころ、どっかに引っ掛けたかな?わたしもさ、あーなくなってるか。
向う脛のところに傷があったよ。」
「え?なにと戦ったんだ?」
「あははは!違うよ。ただどんくさくこけたの。
こけた場所に、石がってね。尖った。で、ぱっくり切れたのよ。
結構血も出てびっくりしたよ。
痛さじゃなくて、そっちに驚いたね。
それに寒くなると傷が痛むというか、
こんな寒い日は古傷が痛むぜって子供ながら思ったもんだよ。」
「ああ、雨の日は古傷が痛むな。それか?」
「うん、寒いからね、きっと。
この傷も痛むかな?あったかくして過ごそうね。」
「あなたと過ごすんだから、暖かいだろ。
おいで。今日も寒いから。」
「ん。」
ああ、あったかい。
13
あなたにおすすめの小説
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした
think
ファンタジー
ざっくり紹介
バトル!
いちゃいちゃラブコメ!
ちょっとむふふ!
真面目に紹介
召喚獣を繰り出し闘わせる闘技場が盛んな国。
そして召喚師を育てる学園に入学したカイ・グラン。
ある日念願の召喚の儀式をクラスですることになった。
皆が、高ランクの召喚獣を選択していくなか、カイの召喚から出て来たのは
リビングメイルだった。
薄汚れた女性用の鎧で、ランクもDという微妙なものだったので契約をせずに、聖霊界に戻そうとしたが
マモリタイ、コンドコソ、オネガイ
という言葉が聞こえた。
カイは迷ったが契約をする。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”
どたぬき
ファンタジー
ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。
なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる