いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
551 / 869

551:持ち出し

しおりを挟む
「サリア!なんだいこの品の並べ方は!
色で並べりゃいいってもんじゃないよ!」
「ドロイン!え?来れたの?連れてきてもらったの?」
「お間抜けなことを言うんじゃないよ!言っただろ?この店には自分の脚で来ると。
それができないようなら来ないとね。
もちろん、歩いてさ!だが、座らせてもらうよ。」


3人、トックス、マティス、ソヤで椅子をセッティングする。
座高は一般の高さだが、プカプカクッション付きのオットマンを用意。
もちろん、樹石入り。
椅子も親方に作ってもらったものだ。
マティスにドロインさんの身長等、特徴を伝えてもらって作ってもらった。
1脚だけだったので、店に置いてほしいということになった。
杖の方は満足してもらったようだ。
なぜに、杖を持ったご老人はこんだけ早く歩けるのだろうか?


ドロインが店に来たということで、
この店に働いている人、奥からゾロゾロと出てきて恐縮?
いや、ものすごく喜んでいる。
だが、商品の展示の仕方が問題らしい。
次々と指示を出していく。
孫娘のサリア、その娘、アルミントには夜会のドレスを持ってくるように言う。

「まだ仮縫いだよ?」
「かまわないよ。トックスに見せてやんな。」


それはそれは刺繍布をこれでもかというくらい使ったものだった。
派手である。好みの問題だろうな。
わたしよりも大柄な姐さんたちなら着こなせるだろな。

「あいよ。了解した。」
「じゃ、帰りましょうか?あ!お土産買っていかないと!
香辛料と布。椅子の張地!」
「トックスは先に帰りたいだろ?
ソヤはどうする?トックスと先に帰るか、私たちとバザールを廻るか?」
「バサールがいいな!」
「もう戻るのかい?」
「ああ。いい仕事もらったからな。
200のコートも売りだすんなら作らないとな。」
「そうかい。ソヤは?バザールを廻るのかい?」
「うん。こんなにいっぱい布見たの初めてだよ。きれいだね。」
「ああ、あんたは素直だね。それで?あんたたちはどこにいるんだい?」
「ん?コットワッツだ。」
「いや、それは知ってるよ。今だよ。タトートにいるんだろ?
その話がちっとも入ってこないからね。
事情があるんだろうけど、ここではそんな心配はいらないよ?
もっと、気軽に来てくれればいい。」
「ん?いや、さすがに頻繁には来れんさ。
俺はコットワッツに工房を持ったって言ってなかったか?」
「いや、知ってるさ。今だよ、今。
刺繍布でドレスを作ってるんだろ?タトートのどこにいるんだって話だ。」
「コットワッツだ。
やっぱり耄碌してるんじゃないのか?」
「?ああ!わかった!ドロインさん!刺繍布の持ち出しに成功したんですよ。
で、鋏も入れれるし、加工もできる。」
「!!!」

話してなかったかな?

そこから騒然となった。
会合が終わってから出発したであろうタフトの人間もまだこっちに来ていないようだ。

布のバザールは会合を開くようなので、
他の店も閉店となる。慌てて、椅子の張地をこの店で買った。
高いよねーと思うが、息子へのお土産だ。
赤紫の厚めの布地にした。
毛足が長いのがいい。
布というより絨毯?の軽め?
毛の長さをもう少し短くしようか。それで、長いのと短いので模様を付けよう。
金襴緞子だね。
薄く砂漠石の膜も張っておこう。

「ソヤは?どれか欲しいのない?」
「見るのはいいけど、いらない。」
「そう?小さな端切れがあればいろんなことを思いつくよ?」
「そうなの?」
「ここにあるの買っていこうか?ひと籠1リングだって。
2つね。わたしも欲しい。」

ガイライのお土産と端切れを買って、ドロインさんに声をかけた。

「これ、端切れと布代です。
わたしたちはこれで帰りますね。また、寄りますよ。」
「ああ、すまないね。持ち出しの話はここでは一大事なんだよ。
また来ておくれ。ん?じゃ、コットワッツから来てくれたのかい?」
「ええ。だから、急いで戻ります。」
「そうかい。気を付けてお帰りよ。」
「ええ。」
「ドロイン。次は、雨の夜会前だ。」
「ああ、それでいいよ。楽しみしているよ。
招待状もコットワッツに送ればいいんだね?」
「そうなるな。領主さん宛てで届くから。」
「わかったよ。」
「ウォーマーは出来上がり次第お持ちしますね。」
「無理はしないでいいから。会合の後寄ったんだろ?
ついでの時でいいさ。」
「ええ。こちらにも回りますから。」

マティスが移動できるということまで伝わっていないようだ。
でも、いずれ伝わるだろうな。
雨の後に必ず砂漠石の取引に制限がかかるはずだ。
その時にできなくなったと持っていこうか。
できるということにあまり疑問を持たずに受け入れるのと同時に、
出来なくなったというのも受け入れる。
なんで?というのが少ないな。
いいのか、悪いのか。




それから、建物の陰に入って、トックスさんとトラの皮、
そのままのトラを2頭送り届けた。
香辛料を一通り仕入れて、ここで、ソヤとクーちゃんたちと別れた。
クーたちは酔ってご機嫌なのか、袋の中から、
あれを買え、これがいいと言ってきた。
んー、見事に虫が原料の物ばかりだった。

ソヤは店の人、皆に好かれていた。
あれか、天然コマシか?

「わたしたちは?」
「もう一度荒野に行こう。
色の濃いトラがいると思う。それを狩りたい。」
「あ、個別にいるのね。」
「強い個体だとトックスが教えてくれた。」
「そりゃそうだね。派手だと擬態も何もないものね。強いってことか。
故郷でもね、色が濃いっていうか、色がない動物が生まれることがあるのよ。
白いんだけどね。それはめったに自然界では生き残れない。
運がいいか、強いかだよね。
ああ、あと神様のお使いだって敬うことがあるとか、
逆に排除するとかって聞いたことあるよ。
自分と違うものは受け入れられない。
そう思うとさ、石使いっていう括りが寛大だよね。」
「?」
「石使いだけが偉いみたいになって支配するわけでなく、
石使いを奴隷のようにいいように使うわけでなく、
職業として認めてるところがさ。」
「支配?奴隷?・・・愛しい人?」
「物語ね、そういうのあるよ。力があるものは支配するってこと。
逆もね。」
「・・・。
ここには王がいる。それが絶対だ。疑問に思わないほどに。
私にはあなたが絶対になったからなんとも以前ほどの感覚はないな。
が、あれの名前は言わなくていいぞ?」
「あはははは!あれね。
あー、あれにその色の濃いトラの毛皮は似合いそうだ。
売りつけようか?100万で!」
「いいな!やはり金は必要だ。
私は腕試しができればいい。
トックスは毛皮の加工ができれば満足するからな。」
「おう!!」



ガイライ達と狩りをしたところよりもさらに奥。
荒野の中央あたり。
これから南に下れば、ベリアバトラスの砂漠ある。
この国の人たちが住まうのはその砂漠の廻りだ。


「どう?いるよね?5?」
「いるな。ああ、5だ。」
「5頭とも同じぐらい?
群れ?これさ、リーダーを狙うの?あの中で一番弱いものを狙うの?」
「はは!愛しい人!慢心しているぞ?
あのトラたちとは違う。一番弱いであろうトラもどうだろうか?
5頭すべてで来られたら撤収だ。」
「おお!そうだね。まったりしている状態でこれだから、うん。
気合を入れていこう!」


近づくとまさしく赤と黒。
マティスはこれだという。記憶の中のトラの毛皮というのはこれだと。
それをいま思い出すこともない。
強い気なのだが、小柄なのだ。
いや、それでも、サイぐらいだろうか?
どちらにしろ下に潜り込むこむことはできない。

「少し離れたところに降りる。
愛しい人は見ていてくれ。」
「まずいと思ったらすぐに引き上げるよ。」
「ああ、頼む。」


・・・・写真撮れるかな。
ん?ムービーとか?



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき
ファンタジー
 ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。  なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...