いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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522:肉食

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「ドーガー殿ですね?」

ラフルが話しかけてきた。

「ええ。」
「わたしはタフト領国、衛兵隊隊長ラフルともうします。
イネーが世話になったようで。」
「いえいえ。逆ですよ。親切に境界線を越えているのを教えてくださって。
盗賊の武器の始末もしてくださると言ってくれたんですが、
それはご迷惑かと。ああ、しかし、あのあと、会合の館に預けたんですよ。
そしたら盗まれたそうで。
王都の治安ってどうなっているんでしょうね?
ボヤ騒ぎもあったし、これ、内緒なんですが、
館に泥棒が入ったんですよ?」
「それは災難ですね。それで、その泥棒は?」
「それが、気付いたらいなくなっていたので。」
「ドーガー!こちらの恥になるようなことを言うな。」
「あ!そうですね。」
「ラフル殿、護衛のマティスだ。
今の話はご内密に。」
「マティス殿、ラルフです。先日は失礼しました。
あの時の馬は?それと同じく護衛の方は?」
「あの馬はもともとボルタオネの馬なんだ。
引き取りに来られたよ。もう一人の護衛というのはモウだな?
そこに。西馬と話をしているだろ?あれは馬に好かれるからな。」


愛しい人はドレスが崩れないように、
西馬とじゃれ合っている。


「そうなの?それはよかった。
うん、ちょっとね、酔うんよ。ああ、馬車だから。
直接乗るのは大丈夫。うん、馴れだね。」
「なるほどね。葡萄、キトロス。うん。そんなに?
食べたいねー。え?メーウーっておいしいの?うそ!
丸い実?いやいや、その前に肉食ですか?そうなんだ。
いや、聞かないから?うん、リンゴとかカンランとか?
お茶葉とサボテン、トウミギも。
え?そうなの?そうなんだ。じゃ、こっち来てからは?
ああ、ゆっとく?うん。それぐらいお安い御用だよ。」




愛しい人は馬としゃべっているのだが、
私には西馬がなにを言っているかわからない。
傍から見ればひとりごとを言っているようだ。


「・・・あれ、ですか?」
「そうだが?愛しい人!」
「うん。その実、そっち方面行った時聞いてみるよ。
ありがとねー。
なに?マティス?」
「ラルフ殿が、あの時の護衛はどこだと聞いているぞ。」
「ん?あの時?ああ、街道であった時ですか?
あの後すぐに王都に入られましたか?」 
「!あの時の?」
「ええ。髪を下しているからわかりませんでしたか?」


今日はまっすぐにしてもらった。
きれいだ。
こんなにまっすぐな髪は見たことがない。

「マティスが手入れしてくれるからね、
わたし史上一番きれいな髪だ。ありがとう。」


と、てぃもててぃもてとなぞの言葉をつぶやきながら
喜んでいた。

きれいな髪という意味なのだろうか?

─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


今日の髪型は、まっすぐストレート。
髪飾りはクレオパトラのような?
ヘッドチャーム?
もちろんダイヤが使われている。

それに赤いドレス。
どこの悪の組織だという感じだ。
下品ではないはずなんだけど。


「髪型で変わるものなんですよ?」
「そのようですね。とてもあの3人を切り捨てた方とは思えない。」
「そうですか?領主殿の両脇に陣取っている方々の方が、
とても護衛とは思えない気配です。わたしも見習わなければと。」
「あははは!そうですね。」

その笑いは、
どっちに取ればいいのだろうか?
話を変えよう。

「そうそう、あの西馬。
ちょっと元気がないんじゃないですか?」
「?そうですか?」
「ごはんが合わないようですよ?」
「?」
「わたしの特技なんですが、食べたいものが分かるんですよ。
お肉とかが食べたいみたいです。
西馬は草食動物ではないと。
でも、カンランとトウミギは好きだといってますね。
いろいろ出されて試してみれば?
お肉と言っても人様が食べるものではないとか。
こちらに来る前はメーウーとか食べていたと。
うー、ちょっとあれですが。
何分、こっちに来てから食べてないので、力が出ないそうです。」
「・・・・そうなのですか。」
「試しに干し肉食べてもらいます?
人が食べる分だから贅沢ってなりますけど。
今日はいつもよりたくさん乗せたから、ご褒美ですね。
あげてもいいですか?
ああ、もちろん塩分控えめです。」
「ここで?どのようなものか先に見せてください。」
「あ、食べます?ドーガーもいる?」
「いります!」

ジャーキータイプの沼トカゲの干し肉。
みんなで食べる。
だいたい夜会と言えど、護衛と従者が食べれるものでもない。
ついでに、こっちもパウンドケーキを食べよう。
クリーム無しだが、そのかわりドライフルーツたっぷり。
これ好きなんだ。
もちろん、マティス作だ。

「うまいですね!」
タフトの別の2人が喜んでいた。
「ほんとうだ。うまいな。」
ラフトもだ。




「じゃ、あげてもいいですか?
ああ、今日は特別だっていいますよ。
じゃないと、贅沢になっちゃうから。」
「そうなんですか?」
「そうでしょ?」


「今日はありがとうね。
お礼にこれ。食べてもいいって。
ラルフさんが言ってくれたよ。
ほんと、特別ね。あと、ご飯はどれがいいか試してみるって。
よかったね。」


4頭の馬もおいしそうに食べてくれた。
肉食なんだね。
あとでスーに聞いておこう。




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