いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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523:詩人

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馬車の中では食べ物、わたしの飾り、セサミン服、
そんな当たり障りのない話だ。
内容はマティスがチェックし、こちらにもつなげてくれている。
アイスクリームを特に気に入ったようだ。
当然、冷蔵庫と冷凍庫の営業だ。
見本市の時には接触はしていない。
本来なら、鶏館で装飾品を見てもらいたいが、
新しい館に移ってしまったのでそれが出来ない。
念のため、その部屋は作ったが、
それはアポなしで訪問してきた人の為だ。
基本、今回はお断りを入れる。
館を改築しているので、次回にお越しくださいと。
うまい感じで断った。
そうしないと、こんな感じで入れ替わり立ち代わりやってくるだろう。
あの館ではあとで何を言われるかわかったもんじゃない。
今回は明日で帰る。ソヤと豆ソースのこともある。
冷蔵庫、冷凍庫の売り出しもだ。
新館への招待は次回だ。


そろそろ、皆が集まっているのだろう。
わたし達はかなり早めについたようだ。
タフトはコットワッツだけでなく、他の領国にも声掛けをしたかったようだが、
甘味に負けてしまったのだ。仕方なし。

ぞろぞろと、館の入口に向かう。
まー、なんということでしょう、だ。

豪華だ。
ここか王城と言われれば、さすがニバーセルだと誰もが言うだろう。
会合の館、謁見の館よりも荘厳でございます。
実際、ニバーセルで二番目に豪華な館らしい。
王城は一番だ。
懇談会があった場所は王城の中でもかなり手前で、
奥に行くほど、えらいさんがいるという。
そこが一番荘厳で豪華だとか。
王族、貴族は王城の周辺に館を構えている。
郊外の貴族のお城を想像したが、
密集しているのだ。
庭をきれいにすればうらやましかろうな。うむ、そうしよう。


名前を読み上げられることなく、
ガヤガヤする大広間に入っていく。

皆が好き勝手に話したり、食べたり飲んだりしていた。


「では、セサミナ殿、明日の投票は良く考えて。」
「ええ。お話しありがとうございます。」


タフト組と別れて、奥へと進む。

「マリーーーー!!!」

テールは元気いっぱいだ。
心なしかつやつやしている。

「テール様。先程ぶりですね。うふふふ。」
「そうだ。先程ぶりだ。ふふふふふ。」
「コクの乗り心地はいかがでした?」
「ふふふ。マリー、マリー!すごいんだ!!」
「テール様。それ以上は。」

カーチとマーロが止める。
香木を見つけたとか?
それはここで話すのはまずいな。

「なにか良きことがあったんですね?
お話しなさらなくてもいいですよ?テール様が嬉しそうなのは分かりますし、
カーチ殿もマーロ殿もお顔色がいいようです。」
「セサミナ様、モウ殿。何もかもがうまく進んでいるのです。」
「それはいいですね。便座の開発も楽しみにしていますよ?」
「ええ。それに、鉛筆も。木工製品に力を入れていくことになるでしょう。」
「いいですね。」
「ええ。」

だったら、他の話はいいのかと、
コクの話をいっぱいしてくれた。
楽しかったことはすぐに誰かに話したくなるものだ。


「セサミナ殿!テール殿!」

ファンファンもやってくる。
「セサミナ殿、遅かったですね?やはり移転先は遠くで?」
「いえいえ。タフトのメラフル殿が送ってくださったんですよ。
早めについたのですが、そこで長話を。」
「タフトですか。」
「ええ。」
「いろいろと?」
「ええ、いろいろと。タフトは王都の情報に詳しい。
ファンロ殿は?」
「わたしのほうは、ルカリアが近い関係で。」


話は明日の投票のことだ。
どちらに入れてもこの3領国はあまりメリットはない。
マトグラーサに付くかタフトに付くかだ。
どちらも御免こうむりたいのが本音。
3領国はそれぞれで産業を確立しているからだ。
駆け引きは当たり前の世界、おそらくこの3領国は無投票だろう。
相手に入れないのならそれでいいというところだ。

3者はそういう暗黙の了解の元、
各自営業に。


音楽が流れ、軽い食事もある。もちろんお酒も。

「音楽。弦楽器だ。これは同じだね。
ピアノじゃないんだ。なんていう奴だっけ?チェンバロ?
考えることは同じか。そりゃそうか、お脳様があって、手が2本、指がある。
進化の過程はだいたい一緒だね。」
「あれのことですか?」
「うん。故郷にもあるよ。」
「姉さん、それは言わないほうがいい。
あれはわたしも初めて見ます。」
「おお!それは危険だ。」
「姉さんは楽器は?」
「ダメです。これは断言できるね。」
「歌はうまいぞ?」
「歌と演奏とは違うと思うよ?ドーガーは?」
「まったく。」
「ははは!こういう芸術というか、この分野ってどこが一番なの?」
「ジットカーフでしょうか?スパイルがその工房をもっていました。
独立してからもその分野の提携は継続されていますね。」
「へー。マトグラーサはジットカーフと仲が良いと。」
「そうなりますね。」

演奏が終わり、皆がその音楽を称えている。
いいのかどうかまったくわからん。


次は歌手が出てきた。
歌手でいいんだよね?

「詩人が出てきましたね。」
詩人?詩か、なるほど。

なんだか、国の繁栄?
すばらしいとかなんとか?
王様万歳的な詩だ。
神様よりも偉大な王。そうなんだ。
そうなると、王は神なんだな。妖精の世話役だけど。
しかし、音程に乗せるということはしないのか。



「愛しい人の詩か歌のほうがいいな。」
「それは、ダーリン。身内のひいき目だ。」
「そうか?」
「姉さんの歌はアヒル以外では、うんてんしゅ?」
「いろいろ。あれは楽しい歌だね。
歌はいろいろあるのよ。」
「そうなんですか?
歌よりも詩の方が多い。
それも、国を称えるもの、王を称えるもの、神を称えるものですね。」
「いや、もっとあるでしょ?男と女の恋とか愛とか、
子守歌とか、それこそ運転手のうたとか。」
「ないですよ。だから、あのアヒル、ぶ!はおかしいんですよ!」
「あーー!!はじめて後悔する!
音楽やってればよかった!
だったらここでぼろ儲け!!」
「いや、姉さん?姉さんは稼ごうと思えばいくらでも。」
「ん?あ、そうなの?そうだねー。んー、めんどいね。」
「そうなりますか。」



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