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387:見極め
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また部屋に案内してもらう。
女官さんは部屋には入らず、
コーヒーを持ってきてくれるそうだ。
それと甘味と。
なんだろう?やっぱり葡萄かな?
「遅くなりました。」
部屋に入ると、トマイザーとマレインがシーツを腰に巻いていた。
ライガーが素早くわたしたちの横に避難してくる。
目が何とかしろと訴えていた。
「それは?」
「いや、先ほどのな。やはりドレスを着るからこその体勢なのではということでな、
試しているのだ。」
「なるほど。」
突っ込みどころ満載で止めようがない。
「テルマ、女性がドレスを着てあの体勢を取るのは
以外に大変だということが分かっただけでいいのではないのか?
男がドレスを着て、あの体勢を取る、もしくは披露することは、
ないとは言い切れないが、ほぼ、ないだろう。
何かそういう予定があるのか?」
「・・・・そう言われればそうなんだが。・・・うむ、ないな。
・・・待っている間、話がなくてな。」
「ライガーは?なにかあるでしょ?
謝罪なり、なんなり。」
「・・・それは済んでいる。」
「けれども拘束されていたでしょ?」
「・・・かくまってもらっていたのだ。あの状態で国に帰れば、
このことを理由に処罰される。
自分の立場は一番よくわかっているつもりだ。
だから、こちらで拘束されているということにしてもらっていた。
向こうもその時点ではわたしを排除すれば世間体がある。
石使いをせっせと送り込んできたよ。使えない石使いをな。」
「ああ。」
「・・・ルカリアは銃の国となった。
それはいまさら否定できない。領国あげての産業品なんだ。
それを売り込まないといけない。
しかし、対人は、モウ殿の話を聞いてから、思うこともあって・・・。
売るのなら、大型獣を討伐しているこの国にと。」
「おじい様?石使いたちは?」
「ああ、解放している。が、異国の石使い、
赤い塊と名乗ったものはダメだな。」
「どうして?」
「嘘をついたからだ。」
「どのような?」
「赤い塊はモウの曾祖父のことだろ?」
「ふふふ。別に赤い塊という名を
名乗ってはいけないなんて決まりはない。
たまたま同じ名前だっただけだ。そうでしょ?
砂漠でアザレに怪我を負わしたということなら、
それはその内容での処罰です。
石使い、赤い塊という名、これらは関係ない。」
「かまわないのか?」
「わたしがどうのということではないですけど、
どういういきさつで、
その名を名乗り、ルカリアに取り入ったかは知りたいですけどね。」
「・・・マトグラーサの紹介だ。
それをそのままこちらに派遣すれば、ルカリアの面目が立たない。
だから迎えに行ってもらったんだ。」
「なるほど。」
女官さんが本場のコーヒーを持ってきてくれる。
うまい!が、ドリップで飲みたい。
甘味は葡萄の甘露煮?テオブロマの甘味だ。
これはいい!!
「気に入りましたか?
それはテオブロマの赤い綿を何十個と煮詰め甘い汁をだして
その中に葡萄を入れたものです。手間がかかるものなんですよ。」
マレインが聞いてくる。
「ええ、とても。危険認定ですね。」
「?危険?」
「いくらでも食べてしまいます。」
「ああ、そういう。
モウ殿。改めて礼と謝罪と。
ルポイド国軍 副隊長のマレインです。
数々の無礼お許しを。そして父上のこと、ありがとうございます。」
「マレイン、それなら私もだ。トマイザーだ。
父のこと、アザレのこともありがとう。」
「いえ、その礼は曾祖父に伝えましょう。
謝罪はこちらこそ、意地を張ってしまいました。申し訳ない。」
「モウ殿と、マティス殿は行商で?」
ライガーが聞いてくる。
「そうだ。セサミナの兄だが、領国は成人後に出ている。
正式にな。大会に出たのはあくまでも護衛としてだ。
砂漠の民として各地を回っている。」
「そうか。」
「ライガーは?さっきルカリアの肩書がないっていってたけど。」
「今回のことで、次期領主候補から外された。」
「なのに、銃の販売を続けるの?」
「・・・もうルカリアといえば、銃なんだ。父が納めていた国。
悪くは言われたくはない。銃も使い方次第なんだ。そうだろ?」
「そうだね。ナイフも槍も、使い方次第だ。おんなじだから。うん。」
「そうだ。使い方次第なんだ。クジラの討伐もたやすくなるはずだ。」
「クジラ!!不思議大型獣!!」
「・・・・モウ?」
「なんですか?おじい様?」
「聞かないのか?」
「んー?聞いたところですべてを話してくれるわけでもない。
全てを知ったところでどうしようもない。
けど、気になるので、安眠の為に聞きますが、
おじい様?孫娘なんていないですよね?
で、トマイザー殿とマレイン殿は元首エデト様の息子に間違いはない。
で、おじいさまからすればお孫さんだ。
4人ともよく似ていますよ?」
「・・・孫娘なぞいない。子はエデトだけだ。エデトの子はこの2人のみ。」
「何回ドルガナ公と会食したの?」
「皆で1回。それから、わたしは翌日にもう一度。
そのときに孫娘が、エデトとの子が腹にいると。安全なところにいるからと。」
「私たちも別で1度。テルマおじいさまが、わたしたちを排除しようとしているから
気を付けるように。」
「エデト様は?」
「同じだ。私は170。そろそろ引退を考え、昨年の雨の日に抱いた娘に子ができるから、
そのものが後継者に。テルマ、父上が長寿だということは内外に知れている。
テルマが後見人になるから大丈夫だと。」
「突っ込みどころ満載ですね。
最初の会合で、血のつながり云々、4人同時に顔を合わせない、
そこら辺をしこまれたか?んー、娘さん云々は?」
「ない。ルポイドの元首は長寿だが、妻は生涯一人。
妻がなくなったからといって、別の女を妻に迎えることも、
抱くことも、ましてや子をなすこともない。」
「おじいさまっておいくつですか?」
「それは答えられん。長寿ということで通っている。
だがな、100を超えてから子ができる。孫が子を作り、
その子が今のトマイザーぐらいになったら、
やっと妻の横で石になれる。
わたしの祖父は最近石になられた。」
墓石になるということか。
じゃ、270?で、息子2人は70近いんだ。
「・・・長寿ですね。」
「元首、それも男だけだ。妻となるものなくなってから一人で生きねばならん。
辛いぞ?あの芝居のように、妻、ウリナが還ってくるのなら扉を開けるかもしれん。
・・・いや、できんな。ルポイドは3世代で統治している。
抜けることは許されない。」
「糸なのか?」
大体のいきさつは分かったのだろう、ライガーが尋ねる。
「糸!」
操りの糸の話は皆知っていた。
が、最近売り出されたことは極秘の話で知っている。
どこが極秘なんだ?
18か国全て知っている話だな。
それを本気にしたドルガナと
眉唾だとしたルポイドの差。
「そうだね、おそらくね。糸を使われた本人が矛盾に気付けば、破綻する。
が、上位の地位があるものに使われると、難しいね。
だから4人同時と個別につかったんだろう。
少しの指摘で壊れるからね。」
「しかし、赤い塊殿が来なければ、トマイザーがドルガナ公の相手を。
これは向こうのほうが有利だ。お前ではまだまだだ。
どんな不利な契約を結ばされるか。
怪我がたいしたことなくても、そのまま雨の日で、引退。
どこのだれかわからぬ娘が生んだ子が元首、わたしもいいように使われるのだろう。」
「どこの誰かっていうか、ドルガナ公の血筋でしょうよ。
孫って設定でしょ?息子か娘の子供だ。その相手が、なんとドルガナ公の
娘か、息子。かな?」
「・・・。」
「トマイザー殿が言う暢気な設定だね。」
「糸こそ、銃より問題ではないか!!」
「そうなんだよね。
しかし、目に見えないんだ。目に見える銃のほうが脅威なんだよ。
故郷でも銃より怖いものはたくさんある。
だからね、あの時ったことは本当に言いがかりだ。
改めて謝罪を。
ライガー殿、わたしにあのようなことを言う権利はない。
申し訳なかった。」
錠よりももっと恐ろしいものはある。
麻薬とか、精神的にダメにするもの。
人の集団真理を煽るものも怖い。言葉巧みに。
銃の方がいいとは言わないが。
「さ、おじい様。
月が沈んでいます。わたしたちはこれで。
赤い塊という名を使うことで罰することはないようにしてくださいな。
わたしたちも使いますので。これは護衛としてですが。
それと、エデト様?あの女官は?」
「!やはり・・・。モウ、気を付けられよ。
声は同じだ。」
「え?そうなんだ。じゃ、お利口なことはできるよね?」
頭の中でしゃべるときは声色は関係ないのか。
そりゃそうだ、わたしの声を届けているんだから。
しかし、それらもしゃべると脳天に銃弾をぶち込むということだ。
「もちろん。わたしはお利口でありたいからな。
あれの手を握る力はテオブロマが砕けるほどだった。
わたしの意識があるかないかを確かめていたんだよ。
あの時点でそれを言えば逃げられるからな。」
「ふふふ。そうですか。それはお利口でしたね。」
「エデト、意識はあったのか?」
「はい。動くと痛みが体を中を踏みつぶされるような痛みが走った。
口を動かすこともできない。管からの食事を喉に通すだけで精一杯だった。
そしてあの女だ。手が折れんばかりに握る。
そのあと、父上や、お前たちを呼ぶんだ。
私の様子がおかしいと言ってな。
父上にはお前たちとわたしが血がつながっていない、
孫娘の腹にいる子のこと、
お前たち2人にはわたしと父上が排除しているということ。
それをそうですね、と念を押していた。
わたしもきているがそうなのだと思うだけだった。」
「念押しか。そうだね。継続はできないんだ。毎日?」
「寝込んでから毎日。その前は今思えば、父上と2人になった時に。」
「あの女官ですよね?わたしたちも話はよく聞いてました。」
「あははは!どれだけ糸を買ったんだろうね。
足らなくなったのは買い占めたからか?怖いねー。」
お局様が限定コスメを若い子たちに買いに行かせたことを思い出した。
「今回の話、我が師匠には旅の面白話として話します。
マティス?」
「セサミナには話をつけておく。あとは書簡でやり取りをしてくれ。」
「今日来ていたご婦人たちに土産も持たせますので
渡してあげてください。それと、クジラ?それは一般人が討伐しても?」
「!!できれば軍をあげて行わないし、他国に協力は要請しないだろ?」
テルマさんがあきれて答える。
「いえ、もし遭遇したらどうなのかなって。それと、その骨と皮と石?
それは捨ててるんですfか?」
「その場で埋める。」
「それはなにか理由が?」
「肉はうまいがあとは利用できない。持ち帰る意味もない。
そのままにしておくと、邪魔だからな。だから土に埋めるんだ。
興味があるのか?」
「もちろん。あの部屋と同じくらいの大きさで、食べられるところが、
そんなちょっとなんて。不思議ですよね。
その石のように固いもというのが気になります。」
「そうなのか?肉はないが、前回討伐は1頭のそのまま持って帰ってきている。
持ち帰り部隊が負傷してな。肉をとるにも技術がいるのだ。
他の物ではどうすることもできず、総出で持って帰ってきた。
その残骸はまだ館の裏手にある。先月のものだ。
腐らずにそのままあるとおもうが、見るか?」
「見たいです!」
眠気もぶっ飛ぶ話だ。
ライガーもあきれ顔だ。ほっとけ。
ドルガナとルポイドのことは
わたしたちには関係ない。
国境が閉鎖されることは得策ではない。
が、ルポイドがドルガナから砂漠石を買うことはないだろう。
といって、コットワッツから買うこともできない。ないもの。
備蓄は各国あるんだろうけど、マトグラーサかほかの国から買うだけだ。
銃も大型獣が国民の生活を脅かすのなら有効な手段かもしれない。
乱獲になっても知らないが。
「モウ、赤い塊殿に改めて礼を。
ただ、もう少しで自力で回復できたはずだ。1万リング損をした。」
「父上!!なんてことを!」
「エデト!貴様は!!」
「いえいえ、時期がよろしかったんですね。
その時期の見極めがうまいのが、赤い塊と名乗る石使いなのですよ。
お褒め頂いたと伝えておきましょう。」
女官たちが入ってきたからだ。
ここからこの話はあっという間に広まる。良きかな、良きかな。
じゃ、クジラの残骸を見に行きましょう!
女官さんは部屋には入らず、
コーヒーを持ってきてくれるそうだ。
それと甘味と。
なんだろう?やっぱり葡萄かな?
「遅くなりました。」
部屋に入ると、トマイザーとマレインがシーツを腰に巻いていた。
ライガーが素早くわたしたちの横に避難してくる。
目が何とかしろと訴えていた。
「それは?」
「いや、先ほどのな。やはりドレスを着るからこその体勢なのではということでな、
試しているのだ。」
「なるほど。」
突っ込みどころ満載で止めようがない。
「テルマ、女性がドレスを着てあの体勢を取るのは
以外に大変だということが分かっただけでいいのではないのか?
男がドレスを着て、あの体勢を取る、もしくは披露することは、
ないとは言い切れないが、ほぼ、ないだろう。
何かそういう予定があるのか?」
「・・・・そう言われればそうなんだが。・・・うむ、ないな。
・・・待っている間、話がなくてな。」
「ライガーは?なにかあるでしょ?
謝罪なり、なんなり。」
「・・・それは済んでいる。」
「けれども拘束されていたでしょ?」
「・・・かくまってもらっていたのだ。あの状態で国に帰れば、
このことを理由に処罰される。
自分の立場は一番よくわかっているつもりだ。
だから、こちらで拘束されているということにしてもらっていた。
向こうもその時点ではわたしを排除すれば世間体がある。
石使いをせっせと送り込んできたよ。使えない石使いをな。」
「ああ。」
「・・・ルカリアは銃の国となった。
それはいまさら否定できない。領国あげての産業品なんだ。
それを売り込まないといけない。
しかし、対人は、モウ殿の話を聞いてから、思うこともあって・・・。
売るのなら、大型獣を討伐しているこの国にと。」
「おじい様?石使いたちは?」
「ああ、解放している。が、異国の石使い、
赤い塊と名乗ったものはダメだな。」
「どうして?」
「嘘をついたからだ。」
「どのような?」
「赤い塊はモウの曾祖父のことだろ?」
「ふふふ。別に赤い塊という名を
名乗ってはいけないなんて決まりはない。
たまたま同じ名前だっただけだ。そうでしょ?
砂漠でアザレに怪我を負わしたということなら、
それはその内容での処罰です。
石使い、赤い塊という名、これらは関係ない。」
「かまわないのか?」
「わたしがどうのということではないですけど、
どういういきさつで、
その名を名乗り、ルカリアに取り入ったかは知りたいですけどね。」
「・・・マトグラーサの紹介だ。
それをそのままこちらに派遣すれば、ルカリアの面目が立たない。
だから迎えに行ってもらったんだ。」
「なるほど。」
女官さんが本場のコーヒーを持ってきてくれる。
うまい!が、ドリップで飲みたい。
甘味は葡萄の甘露煮?テオブロマの甘味だ。
これはいい!!
「気に入りましたか?
それはテオブロマの赤い綿を何十個と煮詰め甘い汁をだして
その中に葡萄を入れたものです。手間がかかるものなんですよ。」
マレインが聞いてくる。
「ええ、とても。危険認定ですね。」
「?危険?」
「いくらでも食べてしまいます。」
「ああ、そういう。
モウ殿。改めて礼と謝罪と。
ルポイド国軍 副隊長のマレインです。
数々の無礼お許しを。そして父上のこと、ありがとうございます。」
「マレイン、それなら私もだ。トマイザーだ。
父のこと、アザレのこともありがとう。」
「いえ、その礼は曾祖父に伝えましょう。
謝罪はこちらこそ、意地を張ってしまいました。申し訳ない。」
「モウ殿と、マティス殿は行商で?」
ライガーが聞いてくる。
「そうだ。セサミナの兄だが、領国は成人後に出ている。
正式にな。大会に出たのはあくまでも護衛としてだ。
砂漠の民として各地を回っている。」
「そうか。」
「ライガーは?さっきルカリアの肩書がないっていってたけど。」
「今回のことで、次期領主候補から外された。」
「なのに、銃の販売を続けるの?」
「・・・もうルカリアといえば、銃なんだ。父が納めていた国。
悪くは言われたくはない。銃も使い方次第なんだ。そうだろ?」
「そうだね。ナイフも槍も、使い方次第だ。おんなじだから。うん。」
「そうだ。使い方次第なんだ。クジラの討伐もたやすくなるはずだ。」
「クジラ!!不思議大型獣!!」
「・・・・モウ?」
「なんですか?おじい様?」
「聞かないのか?」
「んー?聞いたところですべてを話してくれるわけでもない。
全てを知ったところでどうしようもない。
けど、気になるので、安眠の為に聞きますが、
おじい様?孫娘なんていないですよね?
で、トマイザー殿とマレイン殿は元首エデト様の息子に間違いはない。
で、おじいさまからすればお孫さんだ。
4人ともよく似ていますよ?」
「・・・孫娘なぞいない。子はエデトだけだ。エデトの子はこの2人のみ。」
「何回ドルガナ公と会食したの?」
「皆で1回。それから、わたしは翌日にもう一度。
そのときに孫娘が、エデトとの子が腹にいると。安全なところにいるからと。」
「私たちも別で1度。テルマおじいさまが、わたしたちを排除しようとしているから
気を付けるように。」
「エデト様は?」
「同じだ。私は170。そろそろ引退を考え、昨年の雨の日に抱いた娘に子ができるから、
そのものが後継者に。テルマ、父上が長寿だということは内外に知れている。
テルマが後見人になるから大丈夫だと。」
「突っ込みどころ満載ですね。
最初の会合で、血のつながり云々、4人同時に顔を合わせない、
そこら辺をしこまれたか?んー、娘さん云々は?」
「ない。ルポイドの元首は長寿だが、妻は生涯一人。
妻がなくなったからといって、別の女を妻に迎えることも、
抱くことも、ましてや子をなすこともない。」
「おじいさまっておいくつですか?」
「それは答えられん。長寿ということで通っている。
だがな、100を超えてから子ができる。孫が子を作り、
その子が今のトマイザーぐらいになったら、
やっと妻の横で石になれる。
わたしの祖父は最近石になられた。」
墓石になるということか。
じゃ、270?で、息子2人は70近いんだ。
「・・・長寿ですね。」
「元首、それも男だけだ。妻となるものなくなってから一人で生きねばならん。
辛いぞ?あの芝居のように、妻、ウリナが還ってくるのなら扉を開けるかもしれん。
・・・いや、できんな。ルポイドは3世代で統治している。
抜けることは許されない。」
「糸なのか?」
大体のいきさつは分かったのだろう、ライガーが尋ねる。
「糸!」
操りの糸の話は皆知っていた。
が、最近売り出されたことは極秘の話で知っている。
どこが極秘なんだ?
18か国全て知っている話だな。
それを本気にしたドルガナと
眉唾だとしたルポイドの差。
「そうだね、おそらくね。糸を使われた本人が矛盾に気付けば、破綻する。
が、上位の地位があるものに使われると、難しいね。
だから4人同時と個別につかったんだろう。
少しの指摘で壊れるからね。」
「しかし、赤い塊殿が来なければ、トマイザーがドルガナ公の相手を。
これは向こうのほうが有利だ。お前ではまだまだだ。
どんな不利な契約を結ばされるか。
怪我がたいしたことなくても、そのまま雨の日で、引退。
どこのだれかわからぬ娘が生んだ子が元首、わたしもいいように使われるのだろう。」
「どこの誰かっていうか、ドルガナ公の血筋でしょうよ。
孫って設定でしょ?息子か娘の子供だ。その相手が、なんとドルガナ公の
娘か、息子。かな?」
「・・・。」
「トマイザー殿が言う暢気な設定だね。」
「糸こそ、銃より問題ではないか!!」
「そうなんだよね。
しかし、目に見えないんだ。目に見える銃のほうが脅威なんだよ。
故郷でも銃より怖いものはたくさんある。
だからね、あの時ったことは本当に言いがかりだ。
改めて謝罪を。
ライガー殿、わたしにあのようなことを言う権利はない。
申し訳なかった。」
錠よりももっと恐ろしいものはある。
麻薬とか、精神的にダメにするもの。
人の集団真理を煽るものも怖い。言葉巧みに。
銃の方がいいとは言わないが。
「さ、おじい様。
月が沈んでいます。わたしたちはこれで。
赤い塊という名を使うことで罰することはないようにしてくださいな。
わたしたちも使いますので。これは護衛としてですが。
それと、エデト様?あの女官は?」
「!やはり・・・。モウ、気を付けられよ。
声は同じだ。」
「え?そうなんだ。じゃ、お利口なことはできるよね?」
頭の中でしゃべるときは声色は関係ないのか。
そりゃそうだ、わたしの声を届けているんだから。
しかし、それらもしゃべると脳天に銃弾をぶち込むということだ。
「もちろん。わたしはお利口でありたいからな。
あれの手を握る力はテオブロマが砕けるほどだった。
わたしの意識があるかないかを確かめていたんだよ。
あの時点でそれを言えば逃げられるからな。」
「ふふふ。そうですか。それはお利口でしたね。」
「エデト、意識はあったのか?」
「はい。動くと痛みが体を中を踏みつぶされるような痛みが走った。
口を動かすこともできない。管からの食事を喉に通すだけで精一杯だった。
そしてあの女だ。手が折れんばかりに握る。
そのあと、父上や、お前たちを呼ぶんだ。
私の様子がおかしいと言ってな。
父上にはお前たちとわたしが血がつながっていない、
孫娘の腹にいる子のこと、
お前たち2人にはわたしと父上が排除しているということ。
それをそうですね、と念を押していた。
わたしもきているがそうなのだと思うだけだった。」
「念押しか。そうだね。継続はできないんだ。毎日?」
「寝込んでから毎日。その前は今思えば、父上と2人になった時に。」
「あの女官ですよね?わたしたちも話はよく聞いてました。」
「あははは!どれだけ糸を買ったんだろうね。
足らなくなったのは買い占めたからか?怖いねー。」
お局様が限定コスメを若い子たちに買いに行かせたことを思い出した。
「今回の話、我が師匠には旅の面白話として話します。
マティス?」
「セサミナには話をつけておく。あとは書簡でやり取りをしてくれ。」
「今日来ていたご婦人たちに土産も持たせますので
渡してあげてください。それと、クジラ?それは一般人が討伐しても?」
「!!できれば軍をあげて行わないし、他国に協力は要請しないだろ?」
テルマさんがあきれて答える。
「いえ、もし遭遇したらどうなのかなって。それと、その骨と皮と石?
それは捨ててるんですfか?」
「その場で埋める。」
「それはなにか理由が?」
「肉はうまいがあとは利用できない。持ち帰る意味もない。
そのままにしておくと、邪魔だからな。だから土に埋めるんだ。
興味があるのか?」
「もちろん。あの部屋と同じくらいの大きさで、食べられるところが、
そんなちょっとなんて。不思議ですよね。
その石のように固いもというのが気になります。」
「そうなのか?肉はないが、前回討伐は1頭のそのまま持って帰ってきている。
持ち帰り部隊が負傷してな。肉をとるにも技術がいるのだ。
他の物ではどうすることもできず、総出で持って帰ってきた。
その残骸はまだ館の裏手にある。先月のものだ。
腐らずにそのままあるとおもうが、見るか?」
「見たいです!」
眠気もぶっ飛ぶ話だ。
ライガーもあきれ顔だ。ほっとけ。
ドルガナとルポイドのことは
わたしたちには関係ない。
国境が閉鎖されることは得策ではない。
が、ルポイドがドルガナから砂漠石を買うことはないだろう。
といって、コットワッツから買うこともできない。ないもの。
備蓄は各国あるんだろうけど、マトグラーサかほかの国から買うだけだ。
銃も大型獣が国民の生活を脅かすのなら有効な手段かもしれない。
乱獲になっても知らないが。
「モウ、赤い塊殿に改めて礼を。
ただ、もう少しで自力で回復できたはずだ。1万リング損をした。」
「父上!!なんてことを!」
「エデト!貴様は!!」
「いえいえ、時期がよろしかったんですね。
その時期の見極めがうまいのが、赤い塊と名乗る石使いなのですよ。
お褒め頂いたと伝えておきましょう。」
女官たちが入ってきたからだ。
ここからこの話はあっという間に広まる。良きかな、良きかな。
じゃ、クジラの残骸を見に行きましょう!
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