いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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360:無税

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「それはもう解除しよう。次は即強制労働だ。いいな?」
「ありがとうございます!」
「マトグラーサの豪族といったな?名を聞いてもいいか?」
「ええ、ロゼア様です。マトグラーサ領主の甥にあたります。」
「ほう。それはそれは。めでたいな。
いま、マトグラーサは銃弾の生産でかなり潤っているからな。
しかし、マトグラーサとは取引はしていなかっただろ?
誰の紹介なんだ?」
「ええ、その銃弾です。それを扱うことにしましたので。」
「・・・。そうか。
銃、銃弾の販売での売り上げ税率は5割だと通達しているな?」
「もちろん。それでも、需要はありますから。」
「それが2つ目か?」
「ええ、その報告です。それで、最後なんですが。」

懐に手を入れ、書類をテーブルに置く。

(愛しい人、糸だ)
(え?)
(これ、セサミンとつなげてないね?)
(ああ、あの小物が効くか確かめよう)

「コットワッツ領主、セサミナ様、
銃、銃弾での取引利益の税を無しにしていただきたい。」
「なぜ?」
「?コットワッツ領主、セサミナ。銃、銃弾での取引利益の税を無し。
この契約書に署名しろ!」
「聞こえている。なぜと聞いているのだ。
それに、わたしに命令するのか?親子ともども不敬罪だぞ?」
「え?え?いえ、違います。
その、セサミナ様?銃、銃弾での取引利益の税を無しにしてほしいのです。」

(ルグとドーガーが戻ってきたな)
(こっちから向こうはわかるのね。向こうからこっちがわからないだけ?)
(どうだろうな?我々には効かないだけかもしれん)
(ああ、そっちだね。2000級ではダメだな)
(そうだろうな)

「だから、理由は?」
「え?あ、その、、、。」
「?理由があっても無税なんてことはできない。
それに、今の言動、不敬罪で親が先に強制労働者となるか?
それとも税率8割にするか?契約書があるのはちょうどいい。」
「違います!ほんの冗談です。話は終わりです!!」

契約書を破り捨ててなかったことにしようとしている。

「セサミナ様!!」


ルグとドーガーが飛び込んできた。
話が終わったから石の効力も消えたのだろう、
扉を壊す勢いで叩いていたから。


「戻ったか?ドーガー送って差し上げろ。」
「はっ。」

すごすご帰るステープ。

「ルグ?後をつけろ。気配を消してな。」
「はっ。」




「セサミン?糸使われたよ?気付いた?」
「え?いまですか?あのステープが?」
「気付かなかったのか。その小物の廻りに糸くずはついてるか?」
「あ、何かじゃりっとしますが、見えません。」

『撒かれし糸よ、ここへ』

密封容器にいれた。


「セサミン、ん?ってなっても今のように応対すればいいよ。
しかし、唐突だったね。マトグラーサから手に入れたか。
いくらだって言ってた?5万だよね。
んー、実際はもっと安くさばいてるのかもね。」
「草原の民はあいつから銃を買ったんだな?」
「おそらく。
しかし、あんな高額の物を砂漠の民が買うとは思わなかったんですが。」
「あー、あれだよ。わたしたちがタオルを配ったのとおんなじ手法だよ。
安く、もしくはただで配る。そうすると、ま、便利だから広まるでしょ?
おまけに、あんな高いもの安く、ただで手に入ってって人は喜んで使う。
で、実際便利に使う?人を殺すのに便利もなにもないけどね。
そうなると手放せない。次は高くても買う。だって、廻りももってるもん。」
「・・・。」
「まだ大丈夫。精度が悪い。
よっぽど至近距離じゃないとあたらない。それはナイフでおなじだ。
セサミンたちには銃は聞かない。
砂漠に飛んでいく。でも気を付けることに越したことはない。
それよりも糸だ。」

「戻りました。あ!奥方様!マティス様!」
「おかえりー。おやつあるよ~。ん~?さっきの人からなにか言われた?」
「ええ。最近の仕事の内容ですね。」
「どんな風に?」
「あ!奥方様!わたしだって成長しているんですよ?
聞かれたことをすべて話すようなことはありません。
食の祭りにむかって頑張っていると。領主館からだす食べ物の宣伝をしましたよ!」
「そうか。あの小物付けてるね?さわってみ?」
 「へ?あ、ジャリってする?」

『撒かれし糸よ、ここへ』

また容器に集める。
 
「ドーガー聞かれたことをすべて言え。」
「へ?ええ。
銃に対すること、マトグラーサとの取引状況、
それらはあまり本腰ではないということは応えました。
あとはその他の執務状況。なので、食の祭りの話を。あの?」
「糸を使われたんだ。」
「あの!?」
「そうだ。その小物常に身に付けておけよ。」
「はい。」




「ワイプに話はするぞ?」
「ええ。」


(ワイプ!)
(マティス君!これ!おいしいですね!先程、みなで戻ったんですよ!
そしたら竹かごがあって!はー、一息つきました)
(それはいいから。いま、セサミナに糸を使われた)
(早い!商人のステープですね?)
(知っていたのか?)
(草原の民に銃を売ったものを探ったら。
それで、マトグラーサと取引したようですね
気を付けるように手紙は飛ばしましたが間に合いませんでしたか?)

「セサミナ?ワイプから手紙が来ているか?」
「?あ!来てます!すいません。」
「ごめん、それ、わたしたちが来たから後回しになったんだね。」
「いえ、いつも、なにかしらは半分すぎてから届くので。」
「必ず確認しろ?いいな。」
「はい。」

(届いていたが見落としていたようだ)
(ああ、そうですか。しかし、あなたがいたから防げた?糸の小物で?)
(糸の小物だ。セサミナは気付かなかったが、小物の廻りにはついていた)
(あつめましたか)
(糸にせず容器に)
(それ、ください)
(まて、あと話すから)




「セサミナ様」

ルグが戻ってきた。

「どうだった?」
「ドーガーとひとしきり話した後、自分の館に。
え?わたしの小物にはなにも。
話が違う、量をケチったからかと、ひとしきり憤慨していました。
明日、月が沈むと同時に娘を連れて、マトグラーサへ出発するようです。
どうしますか?」
「ああ、娘な。先に解除しておきましょう。法の厳守を掛けた娘たちに通達を。
以後、同等のことをすれば即強制労働だと伝えろ。」

『通達到着後に解除』

あの時出した石の倍の大きさを出して解除といえば解除となるらしい。
掛けた本人限定だ。しかし、石は倍以上。
他人なら、数十倍の石が必要だ。それも解除ではない。
上書きだ。石に願ったことを正確に解除しなければならない。
砂漠石先生もいい商売をしている。いや、商売か?ちがうか。


「とにかく、姉さん、これ、助かりました。
無税しろとはよく言えたものです。こんなことがまかり通り訳がない。」
「そうなんだけどね。これ、契約書。もとに戻したけど、うまく出来てるよ?

今後の銃社会発展の為、これからもスホーム支援することを誓う

だって。怖いね。」
「・・・これ、追放ものですね。」
「あ、そういうのもあるのね。」
「明日、マトグラーサに出立すのだろ?その後どうなるかだが、
セサミナ?お前が動くことはない。ワイプを使え。
今の話は全て報告しておく。向こうで密偵を付けるだろう。」



マティスと師匠が話をしている。
こういうときはわたしには繋げない。2人でどんな話をしているんだろう?
んー、ホー姐に報告だ!

「姉さん?なにを笑ってるんですか?」
「え?笑ってた?あははは!あ、ルグ!これ新作パイ!
あ、ドーガーもお預け状態だったね。
ささ、お食べなさいな。」
「はい!頂きます!あ!甘くない!肉だ!!」
「おいしいですね。あのリンゴと同じ?」
「芋とカレー入れてもおいしいよ?
あ、辛い油持ってきたから。使ってね?」


「セサミナ?ワイプとカップたちが来る。かまわないか?」
「ええ?もちろん。」
「この部屋はお前が許可しないと入れない。」
「え?そうだったんですか。」

「お邪魔しますよ?」
「師匠!おはようございます!」
「はい、オハヨウ。マティス君も連絡ありがとうございます。」
「ワイプ殿、せっかくの連絡気付かず申し訳ない。」
「いえ、何もなくてよかった。次回から、必ず確認してください。」
「ええ。」
「カップ君たちは?」
「いえ、呼ぼうと思いまして。練習ですよ?」
「なるほど。さすがです!」
「どうしてだ!!」
「だって、マティス嫌がるでしょ?師匠がわたしを呼んだら?
だからその練習するんだら。さすがでしょ?」
「愛しい人を呼ぶということ自体気に食わん!!」
「それはあなたに許可はもらいますよ。では。」

カップ君たちが3人、うまく呼べたようだ。

「立ったままの状態で、呼ぶ。これですね。」
「当たり前だ!!」

「モウ様!あれおいしかった!甘いのもいいけど肉がいいですね!」
「そうだね。また新作出来たら送るからね?」
「ありがとうございます!」
「あ、これはクッキーね。おやつにね。
これの中に入ってるダルクもおいしいよ。
袋に入れるから、持っていきなさい。」
「はーい!」
「それ?わたしの分もはいってますよね?」
「ええ。炙ってもおいしいですよ?」
「それはそれは。
では、これは後でいただきましょうか。さ、いきましょうかね。」
「師匠も行くの?」
「ええ、実地訓練ですね。あ、内緒ですよ?」
「あ、下着!カップ君たちの!すぐ作ります。」
「ああ、助かります。」


急いで下着を作る。
その様子をカップ君たちは尊敬の目で見ている。照れる。
コットワッツ組とマティス、師匠は操り糸のことを。

心配だけど、これは仕事だ。
3人には、なにかあったら、わたしを呼べばいいとだけ念を押した。
もちろん彼らに銃は効かない。

スホームの家の場所は把握しているのか、
おやつと操りの糸がはいって容器をもって、ワイプ組は仕事にでた。
わたしたちも、砂漠に出発だ。






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