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324:ラーメン鉢
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なかなか思うようなラーメン鉢がないので作ってもらうことにした。
記憶を頼りに、赤いラーメン鉢。もちろん雷紋も入れる。
「これ、どれぐらいでできますか?」
「数は?12?じゃ、2日後の半分以降だ。」
「すごい!そんなに早くできるんですか!」
「あたりまえだ。こんな単純な形。色も赤だろ?柄も書いてもらってる。
問題ないね。6リングだ。次からはもっと安くできる。」
「おお!あ、ちょっと軽めにとかできます?こう、お水を入れても、
片手で持てるくらい。それで、丈夫に。」
「軽く?薄くすればいいが、丈夫にね。ま、任せろ。問題ない。」
「さすが!じゃ、先に3リング、出来上がりの時に残り。
この3人の誰かが取りに来ます。」
「ああ、わかった。」
「モウ、かなり高い買い物ですよ?」
「え?そう?特注で1つ5000円?うん、高いね。
でもいいの!出来が良ければまたここで何か作ってもらおう。
さ、ここのおいしいものを食べさせてください!」
「マティス!これおいしい!」
「ああ、うまいな。」
「そうでしょ?これが窯焼きです。」
マティスが仔ポットの窯焼きとは全く別物で、
大きなグラタン皿に肉、野菜、それらを積み重ねて窯で焼いている。
蒸し焼きになるのだろうか?肉汁と野菜の水分がでておいしいスープも出ている。
これにパイ生地が乗っていればさらにおいしいだろう。
一番上の葉物野菜が完全に焦げているのだ。
しかし、それをのけることが前提。
「お肉も柔らかいし、お野菜もおいしい。一番上はなんて野菜なんだろ?」
「カンランですね。こう、葉が重なって丸くなってます。」
「キャベツかな?」
「そういうのですか?これは、焼く時のフタに使ったり、
食材を包むのに使います。」
「ん?食べないの?」
「食べないですね。」
「へー、売ってる?」
「ここら辺で育ててますから売ってますよ?買った食器を包むのにも
利用しますから。」
「あ、そういう扱いなのね。へー。マティス、これ買って?」
「わかった。」
「それと、この器も欲しい。」
「さっきの店でも売っていたぞ?」
「そうなの?ラーメン鉢に夢中だった。買いに行こう!」
「わかった。」
「それらはすべておいしいもの関連ですよね?
いつ食べることができるんです?」
「んー、ロールキャベツは明日の朝ごはん。パイシチューは明後日の朝ごはん?
朝はお店やってないから。
お昼は食べ歩き、夜は現地のおいしいもの、ってことで。」
「それは愛しい人が作ってくれるのか?」
「マティスと一緒に作りたいな?手伝ってくれる?」
「もちろん!」
「では、カンランとこの器を買いに行きましょうか?」
さっきの店に戻って、グラタン皿もどきをやはり12個買う。
箸置きとレンゲも作ってもらうことにした。
器と合わせて2リングだった。やはり特注は高い様だ。
箸置きは首を傾げられた。
レンゲはスプーンだ。縁に掛けれる返し付き。
これもなんなんだと言われたが、レンゲはレンゲだ。
グラタン皿を包む紙、というかカンランの葉は、薄い黄色だ。
ここの世界の特徴なのか大きい。
一抱えのもので、1つ3銅貨だそうだ。
日持ちもするのか店の奥にで山積みになっていた。
中心に行くほど固いらしい。見せてくれというと
不思議な顔をされたが、1つもたせてくれる。
外側の葉はだいぶめくって、使っているようで、ここから先の葉は
もう使わないという。しかし、固いと言ってもこんなもんだろう。
1枚目めくってすこしかじってみると、甘い。
「おいおい、それは食べるもんじゃないぞ?
包むのに使うぐらいだ。あとは料理のフタ。固いところは馬の餌だぞ?」
「おお!馬は喜んで食べる?」
「ん?そうだな。喜ぶ?かどうかはわからないが、結構食べるな。」
「なるほど。これって今の時期の物?」
「これはいつでも取れる。ああ、雨にあたるとだめだ。それだけだ。」
「へー。なんでだろ?」
「中に水が入って、そこから腐るんだよ。」
「そうか。」
「・・・奥さん、あんた、変わってるな?どこの出身だ?」
「コットワッツの砂漠、砂漠の民です。」
「ああ、砂漠の民か。砂漠の民ってそうなんだな。
とにかく、これは食べもんじゃないからな。」
「はーい。じゃ、これ、5玉ください。あ、馬がいるので。」
「ああ。って、うちはカンラン屋じゃないが、譲ってやるよ。
1銀貨でいいよ。」
「やった!ありがとう!お兄さん!!」
マティスと師匠が2つづつ、わたしが1つ抱えて宿に帰った。
宿の厩に行き、スーとホーにカンランのことを聞いてみる。
「スー!これ知ってる?あ、やっぱり。
これ、外と中とどっちがすき?両方?
でも、中の方が馬のご飯だって。ああ、ほかに使い道がないからか。
じゃ、外だけでもいい?中は料理に使おうかなって。
うん、だって、スーがおいしいっていうものはおいしいもの。
うん。あー、そうか。水分ね。なるほど。あ、じゃ、この芯も。
え?そうなの?うん。あげてみる。」
スー兄がいうには、やわらかい、水分があるものが好みで、
水分のある芯の部分も好みということだ。
もちろん、中の葉も好き。
けど、そこはわたしたちが食べたいので。
それと蜘蛛ちゃんにも葉物を与えたほうがいいとのこと。
ちょっと大きめのキャベツとなったカンラン。
芯をくりぬいても、そのまま保存ができるので問題なしだ。
まずは、ロールキャベツですね。
パイ生地も作っておこう。
「モウ、スーとホーをかわいがってくれるのはうれしいのですが、
あまり甘やかさないでください。わたしに対する要求が上がっていく。」
「スー兄とホー姐は先輩なんで、
甘やかされてるのはわたしなんですよ?」
「そうなんですか?」
「うん。いろいろ教えてくれるんですよ。あ、蜘蛛ちゃんにも
野菜あげたほうがいいって。」
「え?そんなこと言ったんですか?」
「このカンランの外と内と芯と。好みはそれぞれだからって。
師匠あげてください。で、マティスはわたしの前に。」
「?」
「あげてるところを見たいけど、防御壁がいる。」
マティスの背中越しに観察することにした。
少し大きめの虫籠は布がかぶせてある。
それをめくると、うん。蜘蛛だ。
師匠が籠の隙間から、食べますか?と聞きながら与えている。
蜘蛛ちゃんはしゃくりしゃくりと食べていく。
うん、ちょっとかわいいかも。うそです。ぞわっとしてます。
「師匠?蜘蛛ちゃんに聞いてくださいよ?
砂漠石と虫と野菜とどんな組み合わせがいいかって?」
「・・・あなたじゃないんですからわかりませんよ?」
「えー、スー兄たちのはなんとなくわかるんでしょ?
蜘蛛ちゃんも一緒ですよ?聞いて?」
「はいはい。
えーっと、食事はなにがいいですかね?
砂漠石?虫?野菜?」
「あ!出してもらう糸は今までと同じ性能で!!」
「・・・と、いうことなんですが?
・・・・。んー?わかりませんね。モウ、あなたわかります?」
「・・・わかりません!」
「そうですよね。ま、野菜を食べるのならそれも出しましょう。
明日は虫と野菜と、砂漠石と。野菜を好むのであればそのほうが
調達はしやすいですからね。カンランもスー達が食べるのなら
また買っておきましょう。」
「んー、謎ですよね。なんで糸出すのかな?
虫を捕まえるためじゃないんですよね。
だって、砂漠に虫なんかいないんだもの。
それに糸も出してなかった。身を守るためかな?」
「そうですね。砂漠で蜘蛛は糸を出してませんでしたね。
ああ、この蜘蛛が出す糸を空中にばらまいてもなにも起きない。」
「そうなんだ。砂漠石以外に別のものを食べさせてるのかな?
弾丸工場以外にもなにかあるのかな?」
「モウ、考え込まないでいいですよ。それはわたしたちが
どうのこうのすることではありません。
中央院、研究院で糸のことも議題に上がっています。
マトグラーサが接触してきていますから。
あなたが考えることはあすのろうるきゃべるとぱいしちゅうですよ?」
「あ!そうだ。準備しないと。ちょっと扉君の家に帰ります。
師匠は先に寝ててくださいね。」
「ええ、わたしはちょっと街に出ますよ。」
「え?飲みに行くんですか?」
「内緒です。」
「んー、そうか、うん。そうですよね。
はい。わかりました。マティスも行くの?」
「愛しい人、おそらくあなたが考えていることでもないし、
それに私が行くこともない。さ、手伝おう。」
「うふふふ。うん。じゃ、師匠は楽しんできてくださいね。」
「・・・違いますよ。ま、行ってきますよ。朝ごはんには戻ります。」
「はーい。行ってらっしゃい。」
師匠はマティスを見て、
わたしを見て、
ため息をついて消えていった。
やっぱり一緒に行きたかったんだろうか?
男同士ってこれだから!
「愛しい人?ワイプはどこに行くと思っているんだ?」
「まず、飲み屋さんに行って、そこで
きれい処としっぽり?」
「・・・街を一通り廻って、領主館とワンカ州の弟の館だろう。」
「え?仕事?」
「当たり前だ。セサミナも言ってただろう?通知だけで済むことを
わざわざワイプが出向くんだ。オートだって間抜けじゃない。
院長になるだけの力はあるんだ、それが数字か、体力か、
人を使う力かはわからないが。休暇なぞ簡単に出すわけがない。」
「おお!オート君もすごいけど、さすが師匠だね!かっこいい!!」
「・・・明日はコットワッツに戻る。なぜならワイプがここで死ぬからだ。」
「うふふふふ。おいしいもの出して、びっくり死にしてもらおうね。
今日はマティスがわたしの腰を抱えててね。」
「それは素晴らしい手伝いだ!」
「うん。じゃ、ちょっと家に帰ろう。」
「ああ、帰ろう。」
遠くから探りの気配がする。知っている気配だ。ワイプか?
「どうしたの?」
「・・・ワイプの気配がする。」
「師匠?んー、わたしにはわかんないな。」
少しした後、彼女は笑い出し、ワイプが来ていると合流することになった。
なるほど、師匠に甘える、これは私にはない発想だ。
この同行の間はすべてワイプが手配する。
なかなかに良い考えだ。
スーとホーを尊敬した。
彼女に会いたいがために甘んじて受け入れるその屈辱。
私もそれしか手段がなければ、
どうやってもそれしかないのならその時は受け入れよう。
ワイプ!死ね!
彼女が黄色いカンランを口に入れる。
食べるのか?それを?
砂漠の民はこれを知らなかったが、
だからって砂漠の民がなんでも口に入れることはしない。
彼女がわたしの背に廻り、脇の下から餌をやる様子を見ている。
うむ、かわいい。
しかし、その思考は危険だ。
うまく、ワイプが話題をそらせてくれた。
彼女はニマニマとワイプを見送る。
さすがにそれはないだろう。
彼女に内緒でワイプとはつなげておく。
(何かあれば連絡をよこせ)
(申し訳ない。朝ごはんまでには戻ります)
私がそんなところに行くことはないとはわかっているが、
ワイプの為に一応説明しておく。
やはりワイプはここで死ぬのだ!
びっくり死ってなんだ?
うむ、その手伝いは重要だな。
ああ、家に帰ろう。
腰を持ちながらの手伝いはなかなか作業が進まない。
やはり分担となった。
簡単にロールキャベツの説明をする。
葉の固いところを削げばいい。
コンソメスープはメイガから作れる。
ミンチ肉もある。
「うまいな!」
「ね?おいしいでしょ?牛乳を使ったクリームスープでもいいし、
トマトでもいいよ。わたしはクリームにチーズいっぱいが好き。
でも、朝はあっさりとね。
キャベツは炒めてもおいしい。豚肉と炒める。ちょっとピリ辛がいい。
ああ、焼きそばもいいね。もちろん、焼うどんも。
あ!お好み焼きは本当はキャベツなんだよ!サボテンもいいけどね。
あとは、とんかつのときに添えたりするね。
焼肉の時にも食べるな、塩付けたり、マヨ付けたり。
お酢につけると簡単なお漬物にもなる。昆布だしも入れてね。
うん、いいね、キャベツ、じゃなっくてカンラン!。カンランも育てよう。種を探さないとね。」
そのあとはパイ生地作り。
これは、腰を持ってもらった。マティスも満足そうだ。
匂いを嗅がれるのはお互い様だ。
お買い物リストは
カンランと乳だ。バターの消費率が高い。
パイ生地は砂糖少な目と、多めと作った。
アップルパイも作っておく。これは明日のおやつに。
師匠はまだ戻らないので、先に休ませてもらう。
折角なので宿の従者部屋で泊まる。
イチャイチャして寝てしまった。
(いいぞ、ワイプ)
(あなたね、いまからどうのとうのいう報告はいりませんよ?)
(あの間にお前から連絡が来れば私は問答無用でお前を葬り去るぞ?)
(あー、はいはい。で?モウは寝たのですか?)
(寝たな。この様子では月が沈むまで起きない)
(そうですか)
(そっちは?朝の用意もできてるぞ?)
(ああ、楽しみですね。わたしももう少しここの様子を見ておきます)
(そうか、遅れるな。彼女が心配もするし、せっかく作ったものが無駄になる)
(ええ、わかりました)
記憶を頼りに、赤いラーメン鉢。もちろん雷紋も入れる。
「これ、どれぐらいでできますか?」
「数は?12?じゃ、2日後の半分以降だ。」
「すごい!そんなに早くできるんですか!」
「あたりまえだ。こんな単純な形。色も赤だろ?柄も書いてもらってる。
問題ないね。6リングだ。次からはもっと安くできる。」
「おお!あ、ちょっと軽めにとかできます?こう、お水を入れても、
片手で持てるくらい。それで、丈夫に。」
「軽く?薄くすればいいが、丈夫にね。ま、任せろ。問題ない。」
「さすが!じゃ、先に3リング、出来上がりの時に残り。
この3人の誰かが取りに来ます。」
「ああ、わかった。」
「モウ、かなり高い買い物ですよ?」
「え?そう?特注で1つ5000円?うん、高いね。
でもいいの!出来が良ければまたここで何か作ってもらおう。
さ、ここのおいしいものを食べさせてください!」
「マティス!これおいしい!」
「ああ、うまいな。」
「そうでしょ?これが窯焼きです。」
マティスが仔ポットの窯焼きとは全く別物で、
大きなグラタン皿に肉、野菜、それらを積み重ねて窯で焼いている。
蒸し焼きになるのだろうか?肉汁と野菜の水分がでておいしいスープも出ている。
これにパイ生地が乗っていればさらにおいしいだろう。
一番上の葉物野菜が完全に焦げているのだ。
しかし、それをのけることが前提。
「お肉も柔らかいし、お野菜もおいしい。一番上はなんて野菜なんだろ?」
「カンランですね。こう、葉が重なって丸くなってます。」
「キャベツかな?」
「そういうのですか?これは、焼く時のフタに使ったり、
食材を包むのに使います。」
「ん?食べないの?」
「食べないですね。」
「へー、売ってる?」
「ここら辺で育ててますから売ってますよ?買った食器を包むのにも
利用しますから。」
「あ、そういう扱いなのね。へー。マティス、これ買って?」
「わかった。」
「それと、この器も欲しい。」
「さっきの店でも売っていたぞ?」
「そうなの?ラーメン鉢に夢中だった。買いに行こう!」
「わかった。」
「それらはすべておいしいもの関連ですよね?
いつ食べることができるんです?」
「んー、ロールキャベツは明日の朝ごはん。パイシチューは明後日の朝ごはん?
朝はお店やってないから。
お昼は食べ歩き、夜は現地のおいしいもの、ってことで。」
「それは愛しい人が作ってくれるのか?」
「マティスと一緒に作りたいな?手伝ってくれる?」
「もちろん!」
「では、カンランとこの器を買いに行きましょうか?」
さっきの店に戻って、グラタン皿もどきをやはり12個買う。
箸置きとレンゲも作ってもらうことにした。
器と合わせて2リングだった。やはり特注は高い様だ。
箸置きは首を傾げられた。
レンゲはスプーンだ。縁に掛けれる返し付き。
これもなんなんだと言われたが、レンゲはレンゲだ。
グラタン皿を包む紙、というかカンランの葉は、薄い黄色だ。
ここの世界の特徴なのか大きい。
一抱えのもので、1つ3銅貨だそうだ。
日持ちもするのか店の奥にで山積みになっていた。
中心に行くほど固いらしい。見せてくれというと
不思議な顔をされたが、1つもたせてくれる。
外側の葉はだいぶめくって、使っているようで、ここから先の葉は
もう使わないという。しかし、固いと言ってもこんなもんだろう。
1枚目めくってすこしかじってみると、甘い。
「おいおい、それは食べるもんじゃないぞ?
包むのに使うぐらいだ。あとは料理のフタ。固いところは馬の餌だぞ?」
「おお!馬は喜んで食べる?」
「ん?そうだな。喜ぶ?かどうかはわからないが、結構食べるな。」
「なるほど。これって今の時期の物?」
「これはいつでも取れる。ああ、雨にあたるとだめだ。それだけだ。」
「へー。なんでだろ?」
「中に水が入って、そこから腐るんだよ。」
「そうか。」
「・・・奥さん、あんた、変わってるな?どこの出身だ?」
「コットワッツの砂漠、砂漠の民です。」
「ああ、砂漠の民か。砂漠の民ってそうなんだな。
とにかく、これは食べもんじゃないからな。」
「はーい。じゃ、これ、5玉ください。あ、馬がいるので。」
「ああ。って、うちはカンラン屋じゃないが、譲ってやるよ。
1銀貨でいいよ。」
「やった!ありがとう!お兄さん!!」
マティスと師匠が2つづつ、わたしが1つ抱えて宿に帰った。
宿の厩に行き、スーとホーにカンランのことを聞いてみる。
「スー!これ知ってる?あ、やっぱり。
これ、外と中とどっちがすき?両方?
でも、中の方が馬のご飯だって。ああ、ほかに使い道がないからか。
じゃ、外だけでもいい?中は料理に使おうかなって。
うん、だって、スーがおいしいっていうものはおいしいもの。
うん。あー、そうか。水分ね。なるほど。あ、じゃ、この芯も。
え?そうなの?うん。あげてみる。」
スー兄がいうには、やわらかい、水分があるものが好みで、
水分のある芯の部分も好みということだ。
もちろん、中の葉も好き。
けど、そこはわたしたちが食べたいので。
それと蜘蛛ちゃんにも葉物を与えたほうがいいとのこと。
ちょっと大きめのキャベツとなったカンラン。
芯をくりぬいても、そのまま保存ができるので問題なしだ。
まずは、ロールキャベツですね。
パイ生地も作っておこう。
「モウ、スーとホーをかわいがってくれるのはうれしいのですが、
あまり甘やかさないでください。わたしに対する要求が上がっていく。」
「スー兄とホー姐は先輩なんで、
甘やかされてるのはわたしなんですよ?」
「そうなんですか?」
「うん。いろいろ教えてくれるんですよ。あ、蜘蛛ちゃんにも
野菜あげたほうがいいって。」
「え?そんなこと言ったんですか?」
「このカンランの外と内と芯と。好みはそれぞれだからって。
師匠あげてください。で、マティスはわたしの前に。」
「?」
「あげてるところを見たいけど、防御壁がいる。」
マティスの背中越しに観察することにした。
少し大きめの虫籠は布がかぶせてある。
それをめくると、うん。蜘蛛だ。
師匠が籠の隙間から、食べますか?と聞きながら与えている。
蜘蛛ちゃんはしゃくりしゃくりと食べていく。
うん、ちょっとかわいいかも。うそです。ぞわっとしてます。
「師匠?蜘蛛ちゃんに聞いてくださいよ?
砂漠石と虫と野菜とどんな組み合わせがいいかって?」
「・・・あなたじゃないんですからわかりませんよ?」
「えー、スー兄たちのはなんとなくわかるんでしょ?
蜘蛛ちゃんも一緒ですよ?聞いて?」
「はいはい。
えーっと、食事はなにがいいですかね?
砂漠石?虫?野菜?」
「あ!出してもらう糸は今までと同じ性能で!!」
「・・・と、いうことなんですが?
・・・・。んー?わかりませんね。モウ、あなたわかります?」
「・・・わかりません!」
「そうですよね。ま、野菜を食べるのならそれも出しましょう。
明日は虫と野菜と、砂漠石と。野菜を好むのであればそのほうが
調達はしやすいですからね。カンランもスー達が食べるのなら
また買っておきましょう。」
「んー、謎ですよね。なんで糸出すのかな?
虫を捕まえるためじゃないんですよね。
だって、砂漠に虫なんかいないんだもの。
それに糸も出してなかった。身を守るためかな?」
「そうですね。砂漠で蜘蛛は糸を出してませんでしたね。
ああ、この蜘蛛が出す糸を空中にばらまいてもなにも起きない。」
「そうなんだ。砂漠石以外に別のものを食べさせてるのかな?
弾丸工場以外にもなにかあるのかな?」
「モウ、考え込まないでいいですよ。それはわたしたちが
どうのこうのすることではありません。
中央院、研究院で糸のことも議題に上がっています。
マトグラーサが接触してきていますから。
あなたが考えることはあすのろうるきゃべるとぱいしちゅうですよ?」
「あ!そうだ。準備しないと。ちょっと扉君の家に帰ります。
師匠は先に寝ててくださいね。」
「ええ、わたしはちょっと街に出ますよ。」
「え?飲みに行くんですか?」
「内緒です。」
「んー、そうか、うん。そうですよね。
はい。わかりました。マティスも行くの?」
「愛しい人、おそらくあなたが考えていることでもないし、
それに私が行くこともない。さ、手伝おう。」
「うふふふ。うん。じゃ、師匠は楽しんできてくださいね。」
「・・・違いますよ。ま、行ってきますよ。朝ごはんには戻ります。」
「はーい。行ってらっしゃい。」
師匠はマティスを見て、
わたしを見て、
ため息をついて消えていった。
やっぱり一緒に行きたかったんだろうか?
男同士ってこれだから!
「愛しい人?ワイプはどこに行くと思っているんだ?」
「まず、飲み屋さんに行って、そこで
きれい処としっぽり?」
「・・・街を一通り廻って、領主館とワンカ州の弟の館だろう。」
「え?仕事?」
「当たり前だ。セサミナも言ってただろう?通知だけで済むことを
わざわざワイプが出向くんだ。オートだって間抜けじゃない。
院長になるだけの力はあるんだ、それが数字か、体力か、
人を使う力かはわからないが。休暇なぞ簡単に出すわけがない。」
「おお!オート君もすごいけど、さすが師匠だね!かっこいい!!」
「・・・明日はコットワッツに戻る。なぜならワイプがここで死ぬからだ。」
「うふふふふ。おいしいもの出して、びっくり死にしてもらおうね。
今日はマティスがわたしの腰を抱えててね。」
「それは素晴らしい手伝いだ!」
「うん。じゃ、ちょっと家に帰ろう。」
「ああ、帰ろう。」
遠くから探りの気配がする。知っている気配だ。ワイプか?
「どうしたの?」
「・・・ワイプの気配がする。」
「師匠?んー、わたしにはわかんないな。」
少しした後、彼女は笑い出し、ワイプが来ていると合流することになった。
なるほど、師匠に甘える、これは私にはない発想だ。
この同行の間はすべてワイプが手配する。
なかなかに良い考えだ。
スーとホーを尊敬した。
彼女に会いたいがために甘んじて受け入れるその屈辱。
私もそれしか手段がなければ、
どうやってもそれしかないのならその時は受け入れよう。
ワイプ!死ね!
彼女が黄色いカンランを口に入れる。
食べるのか?それを?
砂漠の民はこれを知らなかったが、
だからって砂漠の民がなんでも口に入れることはしない。
彼女がわたしの背に廻り、脇の下から餌をやる様子を見ている。
うむ、かわいい。
しかし、その思考は危険だ。
うまく、ワイプが話題をそらせてくれた。
彼女はニマニマとワイプを見送る。
さすがにそれはないだろう。
彼女に内緒でワイプとはつなげておく。
(何かあれば連絡をよこせ)
(申し訳ない。朝ごはんまでには戻ります)
私がそんなところに行くことはないとはわかっているが、
ワイプの為に一応説明しておく。
やはりワイプはここで死ぬのだ!
びっくり死ってなんだ?
うむ、その手伝いは重要だな。
ああ、家に帰ろう。
腰を持ちながらの手伝いはなかなか作業が進まない。
やはり分担となった。
簡単にロールキャベツの説明をする。
葉の固いところを削げばいい。
コンソメスープはメイガから作れる。
ミンチ肉もある。
「うまいな!」
「ね?おいしいでしょ?牛乳を使ったクリームスープでもいいし、
トマトでもいいよ。わたしはクリームにチーズいっぱいが好き。
でも、朝はあっさりとね。
キャベツは炒めてもおいしい。豚肉と炒める。ちょっとピリ辛がいい。
ああ、焼きそばもいいね。もちろん、焼うどんも。
あ!お好み焼きは本当はキャベツなんだよ!サボテンもいいけどね。
あとは、とんかつのときに添えたりするね。
焼肉の時にも食べるな、塩付けたり、マヨ付けたり。
お酢につけると簡単なお漬物にもなる。昆布だしも入れてね。
うん、いいね、キャベツ、じゃなっくてカンラン!。カンランも育てよう。種を探さないとね。」
そのあとはパイ生地作り。
これは、腰を持ってもらった。マティスも満足そうだ。
匂いを嗅がれるのはお互い様だ。
お買い物リストは
カンランと乳だ。バターの消費率が高い。
パイ生地は砂糖少な目と、多めと作った。
アップルパイも作っておく。これは明日のおやつに。
師匠はまだ戻らないので、先に休ませてもらう。
折角なので宿の従者部屋で泊まる。
イチャイチャして寝てしまった。
(いいぞ、ワイプ)
(あなたね、いまからどうのとうのいう報告はいりませんよ?)
(あの間にお前から連絡が来れば私は問答無用でお前を葬り去るぞ?)
(あー、はいはい。で?モウは寝たのですか?)
(寝たな。この様子では月が沈むまで起きない)
(そうですか)
(そっちは?朝の用意もできてるぞ?)
(ああ、楽しみですね。わたしももう少しここの様子を見ておきます)
(そうか、遅れるな。彼女が心配もするし、せっかく作ったものが無駄になる)
(ええ、わかりました)
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机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした
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ざっくり紹介
バトル!
いちゃいちゃラブコメ!
ちょっとむふふ!
真面目に紹介
召喚獣を繰り出し闘わせる闘技場が盛んな国。
そして召喚師を育てる学園に入学したカイ・グラン。
ある日念願の召喚の儀式をクラスですることになった。
皆が、高ランクの召喚獣を選択していくなか、カイの召喚から出て来たのは
リビングメイルだった。
薄汚れた女性用の鎧で、ランクもDという微妙なものだったので契約をせずに、聖霊界に戻そうとしたが
マモリタイ、コンドコソ、オネガイ
という言葉が聞こえた。
カイは迷ったが契約をする。
拾われ子のスイ
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【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
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