いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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188:七人の子

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毎回朝ごはんが豪勢なわけではないが、さらご飯と温泉卵、お吸い物
卵焼きと、ソーセージ。塩漬けの肉。ハム。野菜類。
パンとバターも出す。コーヒーもおすきにどーぞ。
朝食バイキングのようだ。
王都でまた食料を仕入れないと、心もとない。
会合が終われば買出しに行くことになった。

会合が半分から始まり、月が昇るころに終わり、
そこから振る舞いがあるはずが、酒の味比べ大会になるそうだ。
これにはコットワッツは不参加。その時間に街に案内してくれる。
そのまま晩御飯は王都で。ハンバーグを食べに行く。
たぶん足らないから師匠おすすめのお店にもいく予定。
「師匠はその酒の味比べ大会に出なくていいんですか?」
「ふふふ、そういうのに出なくてもいいように日頃頑張っているんですよ?」
「なるほど!さすがです!」
「違うぞ、愛しい人。出ても出なくても役立たずだから
出なくていいと言われているだけだ。
日頃の努力というのはいかに手を抜くかということだ。」
「おお!それはそれで尊敬します!
明日できることは明日に!ですね。」
「素晴らしい言葉です!その通りですよ。」

しなきゃいけないことはしてるんだから、くだらないことには参加しない。
会社主催の忘年会と花見あたりはいい。
だが、あんたのマイウェイは聞きたくないのだ。
こういうときだけ参加する人もいたが、それはもう好き好きだ。
が、こういうことに参加しないと評価は落ちる。
やってる仕事で評価してほしい。
しかし、社会はそうはいかない。
仕事だけが出来てもダメなのだ。ここら辺は一緒。
ちょっと安心しました。

では、行ってきますと、師匠が出勤。
みんなでいってらっしゃーいとお見送り。
マティスには挨拶は大事だと言っているので、いやいやではあるが一緒に言ってくれた。
半分になったら、またお迎えが来るそうで、
それまで各自は自由に。
ルグとドーガーは裏庭で鍛錬。マティスとセサミンは石の加工、
装飾としての売り出しを考えている。
ここまできれいだとそれこそ貴族相手に売れるのではないかということだ。
そういってもらえるとうれしい。

じゃ、わたしは何をなにをしようかと、お茶を作って、
半分を馬たちにように準備。
厩の場所を把握しているルグが届けてくれる。
植物園の手入れもしておく。
黒い実の樹液をとり、逆さ木の実も大きくなってる。
サボテンも増えてきた。タロスの木も元気だ。
屋上にウッドデッキを作ろうか。屋上庭園を造ろう。
やはり土の中より、外の方がいいだろう。
収納できるように、ガラスドームのような膜を砂漠石で作ればいい。
うん、いい考えだ。
森の木を集め製材していこう。
寄棟なので強引に陸屋根にする。
ああ、ここにジャグジーを作ってもよさそう。
そうするためにも材料集めだ。
森の探検に出発。
動きやすいようにラルトルガでかってもらった服に着替える。

「マティス?ちょっと森の探検に行ってくる。」
「私も行こう。」
「んー、いいよ?この館の区画から出ないし、なんかあったら呼ぶから。
それより、新しい飾りを見たいな。」
「わかった!任せろ。」
「セサミン、あんまりいやらしくならないように見張っててね?」
「わかりました。」
「じゃ、行ってきます。」
「「いってらっしゃい。」」
「はーい。」

ガムを噛んでマスクはする。
虫よけも蚊取り線香型に改良し腰に下げる。

お散歩の歌はアブラハムには七人の子だ。

右手の時に右手だけ使った型。
左手、右足、左足、頭は頭上で、
次々増えていく。
おしり、廻って、おしまい。!

うん。いい感じ。
この曲は途中でやめられない。
これはそういう歌なのだ。恐ろしい。

「ダーリン!」
「ハニー!気付いたか?」
「うん、ダーリンのはわかったよ?あとは1人だよね?」
「そうだ。向こうは私に気付いてはいないので、たいしたものではないな。
左足のあたりでどこかに行った。馬車で来ているようだ。
あのまま、おしりあたりまで見ていたなら始末をするところだ。」
「えー、そんなにまずかった?こう、お尻回しただけだよ?」
「だめだ。」
「そうですか。気を付けます。馬車ってことはセサミンにお客さん?離れてていいの?
我ら赤い塊、セサミナ様の護衛ぞ?」
「大丈夫だ。私かお前、セサミナが許可したものしか館に入れないようにした。
応対はルグがするだろう。で?それはなんだ?」
「んー?思い出したから型のおさらいにいいかなと。
子供の学校でね、500人弱か、一斉にやるの。
運動朝礼。最初はみんなふざけてるけど、どんどんのめり込んじゃって、
最後はもう、一仕事した感じになるの。」
「500人規模でか?それは壮観だな?」
「あー、動きは簡単だよ。手振ったり片脚飛びとかね。
今思えば、集団心理が働いてるね。
みんながしてるからする。みんな一緒。っていうの。」

マティスのアクセサリー作りが終わったので迎えに来たそうだ。
そこで奇妙な踊りをしているわたしと、もう1人。
動きが複雑になったところで姿を消したので追うことしなかったと。
それよりも、腰の、お尻の動きがよかったとのお褒めの言葉をいただいた。
今度ベリーダンスを披露してみよう。

ウッドデッキに使えそうな木は有るが、若い葉にたくさんの蟻がいる。
大きいのだ。お前は蟻ではないと言いたいぐらい大きい。
5本伐採して、お持ち帰り。
群がっていた虫には移動してもらう。
ずさっと蟻だけの山ができた。鳥肌が立つ。
申し訳ないが、ほかの木に移っていただきたい。

時間はまだあるので、
鍛錬ということで肩に担いで2人で持って帰ろうと鍛錬馬鹿が言う。

いや無理だろう?

前と後ろで抱えると離れて歩くことになるよ?といえば、
それもそうかと、3本だけ収納して、
各自が1本づつ縦に抱えて運ぶことになった。

いや馬鹿だろう?

平均感覚が養われると、どこかの祭りのように運ぶことになった。
これが難しい。空気抵抗がひどいのだ。
だって、10mは有る木で葉っぱ付き。それを立てて運ぶ。
わたしはもちろんほとんどを浮かしているがそれだけ。
進まない。マティスは重量そのままで運んでいる。
ほうきを手のひらに立てて運ぶ遊びのように、
右へ左へ。
もうね、二人して大爆笑しながら帰ることになった。

鶏館が見えてくると、
さっき言った客だろう、馬車はまだある。
昨日の乗合馬車より数段豪勢だ。
ルグと押し問答をしている。


(ルグがかわいそうなくらいうろたえてる。セサミンとドーガーは?)
(扉の向こうで耳をあてて聞いている)
(何やってんだか)

ざわざわと葉音に気付いたのだろう、護衛が振り返り
あっと声をあげる。
そりゃそうだ。大木を抱えている人間がいるのだもの。
わたしなら大爆笑だ。

その声に振り返る薄いブルーのドレスを着た、絵にかいたようないわゆるご令嬢。

おうおう!
ここに来て悪役令嬢パターンCが来たのだろうか。



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