いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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164:秘蔵っ子

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「それは素晴らしい。
タナガ!ルグ殿とドーガー殿とはもちろん、
ワイプ様の弟子お二方ともぜひ我が剣士との手合わせを見てみたい!!」
「はい、ファンロ様。いかがでしょうか?
明日は月が沈み半分ごろにここを出発すれば、王都には十分間に合います。
月が沈みしだい、ここで武の祭りを開催させていただけないでしょうか?」


タナガことタンタンはここぞとばかり押してきた。
そりゃそうでしょ?そんだけ自慢しちゃったら。
バトル路線はパターン何になるんだ?


セサミンが師匠を見て師匠がマティスを見る。
で、マティスがわたしを見る。

(わたしはやだな。演武ならいいけど。)
(セサミナ、私はかまわないが、愛しい人はダメだ。どうしてもなら演武のみだ)
(ほう、これはマティス君ですか?すごいですね。)
(わかりました、兄さん)

「そうですね、この2人はかまいませんよ?ワイプ様は?」
「ええ、ティス、この者はかまいません。しかし、モウはわたしの秘蔵っ子なので、
おいそれとお披露目はできませんね。」
「秘蔵っ子ですか?それはますます手合わせ願いたい。」
「はは、ダメです。ま、ティスを負かすものがいれば考えましょう。」

うわー、いないじゃん、そんなの。
わたし以下4人はあきれてしまった。

とりあえず、月が沈むと同時に手合わせ3本勝負が始まることとなった。
そこからはファンロの自慢大会だ。
セサミンは砂漠石の産出がなくなったので、新しい産業を考えているというと、
メディングからタオルとゴムのことも聞いているのだろうか、
ここぞとばかり嫌味を言ってくる。

「いえ、お話は伺っていますよ?なんでも雑巾に向いている布地と、
固くもなく柔らかくもない不思議なかたまりだとか?
是非にみたいものですな!わはははは!!」
「ああ、あれは、試作品の段階でして。
それをご存じだとは、さすが、ファンロ様ですね。かなりの情報通だ。」

あの段階ではまだ密偵がいたからなー。

「ええ、そのような話はおのずと入ってきます。そうでしょ?」
「そうですね、情報は食と同じで鮮度が大事ですよね?」
「ええ、まぁ。」

なるほど、それ以降の情報はないってことか。

「つい先日やっと商品化にこぎつけましてね。
よろしければ見て頂けますか?ドーガー、悪いが持ってきてくれ。」
「はい、かしこまりました。」
「あ、ご一緒します。荷物でしょ?」
「ありがとうございます。」

ちょっとドーガー一人にするのは心配なのでついていく。
それに水が欲しい!水が!

(どうした?)
(うん、水飲みたいんだ。クッキーで口の中の水分なくなった。)
(それで、口を動かしていたのか?口づけが欲しいのかと)
(ちーがーう!じゃ、行ってくる)

外にでて、案内無用ということで、
セサミンの部屋に向かう。気配が1つついてくる。

「すいません。」
「ううん、水飲みたかったんだ。」
男の声で答えたので、見張りがいることには気付いたようだ。
「はは、わたしもです。あの方法は画期的ですね。
少し訓練がいりますが。」
「そうだね、こう、もっと小さいのにすればいいじゃないかな?
あと、水も小さくするとか?」
「なるほど、コップに一口分の量をいれて観察すれば?」
「おお!ドーガー天才!!量さえわかればいけそう。」

傍から聞いてると何のことかわからない。
部屋には一応鍵はついているようで、開けて中に入ると、
ドーガーは控えの部屋へと取りに行った。
気配は部屋の中まで入らないようだ。こちらの気配を探って入る。

『防音を』

「やられました。タオルとごむの試作品を盗まれました。」
「へー、そんなの盗ってどうするの?隠匿がかかってるから
真似しようないのに?」
「セサミナ様に恥をかかせるためですよ!!」
「なるほど。あ、とりあえず、水の飲もう。」
「いえ、わたしはセサミナ様にすぐに報告して参ります。」
「報告したって、いっしょだって。盗まれたっていっても、
最初からなかったのでしょ?って言われればおわりだよ?」

コップを呼び寄せ、おいしい冷たい水を出す。

「はい。とりあえず飲んで。」
「・・・あ、おいしい。」


『ここにあった、タオルとごむの試作品、戻って』

「そうか!」

しかし、炭になっていた。
燃やしたか。

「なんてことだ!」
「ははは。こういうときは臨機応変にね。」

ジャージとタオル地のローブとその時に履いたサンダル、
色ガラスで作ったものも出した。

「ああ!奥方様!!」
「これでいけるでしょ?タオルはできてるんだから、あとは服にするだけ。
サンダルも試作品てことで。ああ、タオル地のスリッパもね。」
「これはガラスですよね?いま、工房で研究しています。」
「うん。ガラスのあの天井の飾りを自慢してたからね。
このきれいな色のついたの見せたら悔しがるかなと。」
「おお!!奥方様天才!!」
「そうであろう、そうであろう。あはははは!」
「はははは!」

(なにしてる?)
(マティス!聞いて!部屋に泥棒が入ったみたい。タオルとゴム盗まれたよ。
でも、露天風呂で使ったジャージとローブとスリッパ。
それと、色ガラスで作った小物を持っていくから
セサミンに話し合わすようにゆっといて)
(わかった)

「じゃ、もどろうか?あ、あといっこだけクッキー食べよう。」
「はい!!」



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