いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
152 / 869

152:ファッションショー

しおりを挟む


一瞬で済むわけがない。
さっぱりした後で、いそいそとマティスが着る衣装を並べている。
ボディースーツ作製後、マティス自身もわたしの着る下着類を作っている。
もともとこの世界では下着類は自分で作るらしいので、ある程度裁縫はできるみたいだ。
レースをふんだんに使ったもの、レースそのもの。基本はシースルー。

「これが今回下に着るぼでぃすうつだ。」

一応きわどくはない。色は黒だ。ファスナーがないので脇で細かくボタンで留めている。
着るのにも脱ぐのにも時間がかかりそうだ。
トイレは?

「ここが重なっているからずらせばいい。」

これだけ着るのね。はい、わかりました。
脚の部分は伸縮性のあるレースでラインが入っていた。
屈伸はしやすい。なんというか気遣いがあるのだが、その方向性がエロいのだ。

靴はピンヒールを出されたが、これは疲れるということで
太いものに変えてもらった。器用に変えるもんだ。

これに赤く染めた上着を着る。いつの間に染めたんだ?
悪の組織だ。しかも幹部級だ。

ここからファッショショーの始まりだ。

マティスを寝椅子に座らせ、モデルのように歩いて見せる。
で、ターン。
拍手をいただいた。
ちなみにマティスはゆったりとしたタオル地のガウンを着ている。

上着と毛皮を交換して、背を見せながら歩く。
呼び寄せの逆でボディースーツだけ向こうに。
振り返れば素肌に毛皮とヒール。
前をはだけ、マティスの前で仁王立ち。
もう一度ターンして、肩を見せる。

ストリップショーになってしまっている。


そのままベットに移動され押し倒されていた。





月が沈めば、あの分かれ道の近いところにテントを張り、
砂漠石の膜でかなりの範囲を覆った。もし、ラーゼムの人か、卵屋さんが通っても
わからないように気配は消している。

リゾート施設のように露天風呂を作っておいた。
トイレも。セサミン一行は大丈夫だし、ワイプさんも問題ないらしい。
あとは、ゆったりと着れるジャージとお風呂あがりのバスローブ、とサンダル。

そこから食事の準備に大忙しだ。
コンブから水分を取って、昆布にしてみる。
急ごしらえだが、出汁はでた。はー、ほっとする。

カニの足はやはり身が詰まっている。
買ってもらった鋏で間接1cm内側を切り込みをいれ、ポーション状態にする。
いくつかは、氷水にさらし、カニ刺し。
魚醤か紹興酒、酢、昆布だしをなどをつかった三杯酢でどうぞ。

マティスは生というものにかなり抵抗があるようだ。
お醤油が手に入ったら卵ご飯を勧めてみたい。

「はぁぁ、甘い。たべてみ?」
「生なのか?」
「うん、どうしてもだめだったらお肉みたいにこのお出汁のなかでしゃぶしゃぶしていいよ?
軽くね、あんまり火は入れないほうがいい。それはそれでおいしいから。」

意を決して、たれに付け、口に入れる。
「!!!!」

「ね?うまいであろう?それを今まで捨ててたんよ?びっくりだ。
で、これがクツクツ。日本酒は辛口で。もういいかな?はい、どうぞ。」
「!!!!」

「これをあてに呑む。
あとは、鍋に焼きに蒸。脚はこんな感じで。もう、面倒だから殻はそのままでいいよ。
カニ刺しだけ、作っておくから。あとは、こことここ鋏で切って、細いほうで押し出したらいいから。
先の細いところも鋏できればいいからね。」

「・・・うまい。」
「ふふふ、よかったね。あ、そのクツクツのあとの殻にご飯入れて出汁いれたらまたおいしいよ?
鍋のあとの雑炊もね。
カニは当分いりませんってぐらい食べよう。
さ、頑張って捌くね。これは、向こうでもやってたからできるんだ。
マティスはサイと豚のお肉を切っていって。野菜も。ご飯も炊くから。
穀物類は王都で調達しようね。あ、アイスも作っておこうか。」

だいたいの準備、思いつく限りの料理を作って、大きなテーブルに並べていく。
砂漠石でカバーを作ったので冷たいものは冷たく、暖かいものは暖かく。

もう少しで月が昇るころに、マティスが馬の蹄が聞こえてきたという。

「思っていたより早い。」
「そうだね。」

分かれ道のところで待ていると、ワイプさんが操る馬車、スーとホーと、
その後ろに1頭の赤馬、2頭の赤馬も馬車を引いている。そのうちの1頭はレンタルした馬だ。

「あれ、あのサボテン大好き君だよ?」
「どれ?」
「セサミンが乗ってるやつ。こっちに来たんだね。
おーいい!!」

セサミンがワイプさんを抜いてこっちに向かってきた。
かっこよく馬から降りると抱き付いてくる。

「姉さん!姉さん!!」
胸にぐりぐり頭を押し付けてくる。

「セサミン、元気そうだね。どう?もろもろ順調?」
「はい、タオルは商品化にこじつけました。
ゴムは形になりましたので、そこから何に使っていくかを検討しています。
あと、冷蔵庫、冷凍庫、保温庫も石の隠匿は掛けました。」
「おお!すごい急ピッチだね。ちゃんとご飯たべて寝てる?」
「はい。屋敷の湯殿がいつでも入れるようになったので、
仕事が終われば、入ってから寝ています。共同浴場ももうすぐできます。」
「離れろ!それ以上はダメだ!!」
「ふんっ小心な。ああ、姉さん、ラーゼムでの話聞きました。姉さんは何一つ悪くないんですよ?」
「ああ、ごめんね。あとの話も聞いたんだけど、セサミンに迷惑掛けたね。
絨毯のことは置いといて、乳の金額は決めておけばよかった。
需要と供給。専売なんだから先に金額を押さえておくべきことだった。
気が付かなかったよ、ごめんね。」
「いえ、気づかなかったのはこちらも同じです。
まさか、5倍まで値を上げるとは思いませんでした。」
「おい、そこらへんの話はあとでいい。。
ワイプ、お前も、鼻を引くつかせるな、すぐに用意するから。
で?往復の警護なんて聞いたことないが?何があった?」
「ええ、いろいろと。その話はまたあとで。」
「そうだね、とりあえず、向こうにお風呂作ったから、入っといで。あ、トイレもあるから。
セサミン説明してあげてね。着替えも、置いてあるよ。
馬たちの世話はしておくから、マティス、案内してあげて。
ワイプさんもルグ、ドーガーもここまでお疲れさま。
ここは石の結界を使ってるから、楽にしてね?」

ルグとドーガーは馬を馬車から外し、
こちらにやってきた。

「はい、奥方様、お元気そうでなによりです。」
「うん、元気だよー。ん?ルグとドーガーはちょっと雰囲気変わったね。
最初にあった時は気配を消してるってことがわかったんだけど、
今自然だね。ワイプさんみたいだ。」
「ほんとですか?そういっていただけると嬉しいです。」

『2人とも、よく頑張りましたね』

「「はっ、ありがたきお言葉。これからも精進いたします!」」

「お前たち2人はだれの配下なのだ?」
セサミンがあきれている。
「ふふふ、さ、先にお風呂はいっといで。」


スーとホーに久しぶりと声を掛け、サボテン大好き君とその仲間にも挨拶した。
飼葉は積んであるものをおろし、おいしい水を出す。
スーとホーが言うにはわたしが出すほうがおいしいらしい。
サボテンの葉は契約で、月に1度だけ食べることができるそうだ。
ワイプさんについっていった石とセサミンについていた石が、
集まっている。腰の石も集まってわいわいしている。
どうやら水浴びがしたいらしい。
大きなくぼみを作り、そこにたくさんの水を入れる。
馬たちはそれも飲んでいいのかと聞いてくる。
月無し石はかまわないというので、石を食べないようにだけ注意した。
肌触りのいいタオルも置いておく。
お好きなように過ごしてくださいと、そこを離れた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...