151 / 869
151:暑がり
しおりを挟む出来上がったものを見て2人して感嘆の声上げた。
「素敵!」
「ああ、自分の書いたもの以上の出来だ。」
「いや、あんたの絵はわかりやすかったし、いい腕だよ。これで食っていくこともできるさ。
皮の染具合もよかった。ほら、内側の小袋の口にも使った。
袖口の裏にも。見えないところで遊ぶのがおしゃれなんだよ。」
「おお!!」
2人して拍手した。
セサミンにプレゼントするものは、ルグ&ドーガーの主たるものにピッタリだ。
気品もある。
わたしたちのものは、2人並ぶと、袖口に縫い付けてある飾りの緑の皮がつながるようになっていた。
付け替え用の毛皮の襟も毛皮のマフラーも素敵だ。
そしてメインの毛皮のコート!!
シベリアの極寒でも問題なさそうで、
フードもついて取り外せる。どこの北極に行くんだ?というくらい完全防寒具だ。
それでいてごつくない。
毛皮の色はマティスが薄いグレー、わたしがホワイトだ。カレーは食えん!そんな色。
「はー、あこがれの毛皮のコート!!素敵!素敵!
こんなの欲しがる奴の気が知れんなんて嘘!欲しいって!
トックスさん、ありがとう。マティスも素敵なのありがとう。
あーうれしい!」
「そこまで喜んでもらえるのはこっちまでうれしいな。な、旦那さんよ?」
「ああ、そうだな。食べ物以外でここまで喜ぶとはな。」
「世の女性陣100人に聞いてみな?98人は喜ぶ。のこり2人は暑がりなだけだよ?」
「あはは、そりゃいいな。余った毛皮は加工しやすいように裏打ちしておいたから
あんたも縫えるんだろ?好きなように使えばいい。」
「うわー!それはうれしいです。ありがとうございます。」
「では、いくらになる?彼女が言うようにまたなにか頼むことがあると思う。
そのとき気がねなく頼めるように、金額をいってくれ。
その加工費、急いでもらった分も上乗せしてくれよ。」
「ああ、ありがたいね。ほんとに。肉屋と果物屋の話は知ってるか?
ここを紹介した奴らさ。宣伝っていう形の嫌がらせしやがってよ。
それで、むきになって、前倒しで作ったが、新作も早々売れるもんじゃない。
昨日買ってくれた分で何とかしのげるかと思ってたんだ。
それだけでもありがたいのによ。ああ、金額だな。
80リングでどうだ?それと、その毛皮を数枚売ってほしい。1枚1リングで。」
「ああ、もちろん。では、ここに。毛皮の金は別にいいが?」
「いや、あんたたちが言うようにきちんとしておきたい。この毛皮はその価値がある。」
「そうか?」
トックスさんは10枚ほど選んだので、結局70リングを払った。
「ああ、確かに。また、良い毛皮が手にはいったら持ってきてくれ。
そのほかの服関連でもなんでもいい。
あんたたちの話を聞いてるだけでもこっちが勉強になるからな。」
「こちらこそ、ありがとうございました。
あの、これ、コム産のお茶です。よかったら、どうぞ。
飲んでももちろんいいんですが、この茶葉をこう、小さな火で炙るようにすると
いい香りがするんです。毛皮の独特の匂いも取れると思うんで。
ここは海の幸の都っていうぐらいお魚が豊富に入るでしょ?
お魚の匂いと合わさると、なんだか折角の毛皮が台無しなような気がして。
外から来たからかちょっと気になって。」
「ああ。そうか、そうだろうな。ずっとここにいるもんは
あまり気にならない。慣れてしまってる。
でも、今日みたいに一日閉めきって作業して、外に出ると、
こう、むわっと来る。何年か前からずっとだ。北の氷の山が溶け出してるとか噂では聞くんだがな。
そうか、茶葉か。いいこと聞いた。これは遠慮なくもらっとくな。」
「ええ。じゃ、ティス行こうか?」
「着ていかないのか?」
「んー、あとで、ティスの目の前で着替えるよ。」
「それは、楽しみだ。」
「は!いうね!また寄ってくれ!新作つくっておくからな。」
「ふふふ、はーい。」
毛皮になった服と裏打ちした毛皮、薄手とはいえ薄着の上着5着。
抱えて外に出たが、トックスさんが見送ってる。
曲がり角に入って、そのまま、城壁の外に出た。
「やっぱりなんかあるんだね。海峡石が取れなくなったり、
氷の山が溶けたりするもんなの?」
「気になるか?」
「ならんこともないけど、まずはクツクツの味と、裸エプロンならぬ裸に毛皮を着た時の
マティスの反応かな?」
「ぶはっ」
「あははは!とにかくどこかに落ち着こう。
今着てる服も磯臭くなってるから。髪の毛も。海の匂いはすぐにしみ込むね。
お風呂に入ろう。それで、クツクツ試食会だ。
それからセサミンに会いに行こう。」
「いっしょに王都まで行くか?気になっているんだろ?
だから服を渡すなんて言い出したんだろ?」
「・・・うん、いい?」
「ああ、国を出なければセサミナに迷惑がかかる状況だった時と
今は事情が違う。問答にかかってもセサミナを守れるしな。
同行できるのならそれが一番いいだろう。」
「うん。でも、大丈夫かな?迷惑かからないかな?」
「赤い塊として付けばいいだろう。王都はまた金で雇たんだと思うだけだ。
今度は夫婦でとな。」
「そうか、赤い塊か。うん。あ!赤い高原の民の服、ばらしちゃったね。
どこかに赤いの入れとけばいいかな?」
「この今着てるものでいいだろう。緑の襟もとはものは普段できたいからな。
それを目印に追って来られても困るしな。」
「なるほど、そうしよう。」
「下はあのぼでぃすーつにしておくれ。」
「え?変態だ!」
「上着を脱がなければいい。なにかあれば今度は私が動くから。
お前があれを着てると思うだけで、それをしってるのが私だけと思うだけで
元気なる。」
「元気って、変態ですね。考えておきます。」
どこでクツクツをするかという話になった。
この家ですると匂いが充満する。外でバーベキューのようにするのが一番だが、
ラーゼムと王都行きのところでしようかということになった。
誰も通らないのならちょうどいいだろうと。
「そこで待ってようか?」
「直接コムに行く道を作ると言っていたから、どうだろうな。
ここを通るように伝えよう。はらを空かしてくるようにとな。」
「そうか、声は飛ばせるか。じゃ、お願いします。」
(セサミナ?今いいか?)
(!兄さん!はい、大丈夫です。なにかありましたか?姉さんは?)
(セサミン!元気だよー。)
(ああ!姉さん!姉さん!)
(みなすぐに彼女のことをきくな。まぁいい。王都にはいつ行くのだ?)
(明日、月が沈めばすぐに。ラーゼムと王都の分かれ道で泊まります。)
(そうか、ちょうどいい。私たちはそこにいるから、その日はそこで飯にしよう。
カニは仕入れた。クツクツはまだ試していないが、それをごちそうしてやろう。
供はいつもの2人だけか?)
(わ!クツクツ!!はい、ルグとドーガーです。それと、ワイプ様がいまこちらに来られています。)
(何しに?)
(名目上は財産譲渡の金額が大きいのでその監査とその分かれ道から別領国に入るので
護衛を兼ねるそうです。往復同行するそうです。)
(本音は?)
(プリンです。)
(ああ、なるほど。その話はまたあとで聞こう。ワイプはうまいものさえあれば
味方にはならないが敵にはならない。かまわない。)
(あ、鋏もってきてね。)
(姉さん?鋏ですか?)
(そう、一人一本ね。喧嘩するから。)
(ザバスの店で買えばいい。固いものを切る細身のものだ。)
(はい、わかりました。)
(おなかすかせてきてね。待ってるよ。)
(はい。)
「ワイプさんさすがだね。」
「そうだな。しかし、それだけではないだろう。」
「そう?メニュー考えないとね。焼肉はいいとして、しゃぶしゃぶとかにしゃぶ、クツクツに
ウニ焼き、エビマヨ、エビのチーズ乗せ焼き?ああ!豚の角煮!とんかつも。それよりも、コンブを昆布にしないと!」
「違うのか?」
「乾燥させるの。ファッションショーは後だ。
まずお風呂行こう!」
「?素肌にあの毛皮を着るのは?」
「ん?お風呂上がりに一瞬だけかな?」
「一瞬でもいい!」
「はいはい。」
13
あなたにおすすめの小説
魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”
どたぬき
ファンタジー
ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。
なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる