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127:威嚇
しおりを挟む「ワイプ!ワイプ!起きろ!」
足先でつついてみる。
活を入れた瞬間戻されても困るからだ。
「ほら!」
「ん、はっ!」
すぐに体制を起こし間合いを取る。
口元を押さえているが根性で抑え込んだようだ。
「冷たい水を出した。これを飲め。」
「マティス君、黒い塊は?」
「うぬ、色は認識できたのか?黒い?ほかには?」
「わからない!このわたしが恐怖?違う!死を覚悟した!それも違う!死んだと!!」
「ああ。ならいい。お前が威嚇なんぞするからだ。相手を見てすることだ。」
「あれはマティス君だったんですか?ああ、なら納得です。
わたしの鍛錬不足ですね。もっと頑張らねば。」
「戻さないのはさすがだな。」
「それはあり得ない!しかもこの食事に対しては絶対です!!」
「そうか、さ、それでも口の中は気持ち悪いだろ?
水を飲め。」
「ああ、ありがとうございます。あ、冷たくておいしい。
水もこんなにおいしのですね。スーとホーもこの水だったら喜ぶかな?」
「それはどうだろうな?あとで、モウに出してもらえ。あ、モウ、来たか?」
「はい、あのワイプさん?」
「あ、奥さん、目が覚めたんですか?どうしました?」
「彼女も気の動きが”多少”わかるんだ。」
「そうでしたか!では驚かれたでしょう?ちょっとおふざけが過ぎました。
威嚇のつもりが本気以上のもので制されましたよ?」
「ほら、モウ、大丈夫だから。」
「ああ、怯えさせてしまたんですね。申し訳ない。」
「あの、大丈夫なんですか? 」
「ええ、大丈夫ですよ。あ、おいしい水をいただきまして、すっきりです。
奥さんはこれ以上においしいお水をお持ちとか?いただけますか?」
「出してやってくれ。」
一応テントに戻り、コップを二つ持ってきた。
「これです。馬たちにはこれを飲んでもらいました。」
「ほう?・・・これは怒るはずだ、これを捨てたのですね。
で、この味の水を出せと?・・・無理だ。」
「いえ、そこまでいってませんよ。おいしい水、湧き水とかでいいんじゃないでしょうか?」
「そうですか、約束ですものね。このワイプ約束はたがえません。」
「それで?話の続きだ。モウ、お前も聞いておけ。
気は押えろ。膨らませもするな。
鍛錬と思えばいい。」
「奥さんも鍛錬されてるんですか?それまた素晴らしい、鍛錬は、、、」
「いいから!モウ、押さえろよ?
ダードに依頼されたんだろ?始末してこいと。」
彼女は驚いた顔は見せたが、気はそのままだ。
えらいぞ!
「ええ、そうなんですよ。面倒この上ない。
わたしはもう、暗部でもないし、そもそも暗部なんてない。時代遅れだ。
しかし雇われの身、一応片目片腕の男が領主の近くにいたら拘束しますとね。
でも、いないし、はんばあぐはないしで、そもそも始末って何ですか?
そんなことを言って実行すれば大審判に掛けられたら本人も同罪ですよ?」
「大審判も押さえれる自信があるのだろう。」
「えー、大審判、天秤院もですか?あー、ありえそうですね。
なにがしたいんだ?ダードは?」
「相続がらみで、上2人の兄にそそのかされたかして3番目の兄リップルが
私を石の力で始末しようとしたんだ。だが、失敗して血殺しの反動で本人が死に
リップルの母君に恨まれている。だから、伯父にあたるダードが絡んでくるのはわかるが、
コットワッツの資産にまで目を付けているとなるとまた違った話だ。
ワイプ、変動の話は知っているのか?」
「ああ、あの揺れ、コットワッツの砂漠が枯渇したんでしょ?振動は王都まで来てましたよ。
驚きました。」
「前もって知ってたんじゃないのか?」
「それはないですよ。知っていたら、豆のスープをこぼしたりするものですか!」
「そうか、天文院は把握している。800年に一度だそうだ。
お前だから言うが、当然砂漠を有する辺境領主のセサミナも知っている。
ただ、800年目が今年だとは知らなかった。あと2年の猶予があると天文院から
教えられていたそうだ。中央院の指示でな。
変動があれば、砂漠の資源は枯渇する。
代々それを知っているコットワッツの領主は王都に知られぬよう砂漠石を少しずつ蓄えていた。
それが年予算の20年分だ。それとメディングの資産とを賭けてセサミナが勝ったんだ。
それが譲渡の理由だ。余程自信があたんだろう、真名の宣言の書式で交わした。
これだけはどうやっても逃げられない、言い逃れできない。
譲渡はされる。だが、そのあとだ、持ち帰りの方法にケチをつけるかもしれない。
だからその場にお前が立ち会ってほしい。セサミナは正々堂々持ち帰るだろう。
その方法は何でもいいはずだ。それを認めてさせてほしい。」
「ええ、それはもちろん、そう約束しましたし、約束するほどのことでもないような気がしますが?」
「お前も甘い、辺境といえど、20年分のリングだぞ?
それを目の前に積み上げて、10数えるうちにどうぞ、それ以降は無効ですなど言われてみろ、
一握りのものしか持ち帰れない。そのまま資産院に預けるにしても、いったん持って帰れと言われたら?
なんとでもいえるだろう?」
「ああ、、なるほど、そうですね。
うーん、権利を主張する?これはセサミナ殿のものだから、時間制限云々はおかしいとか?」
「それもだめです。セサミナ殿のもの?ならばセサミナ殿一人でお運びください、とかね。」
「あー、奥さん、すごいですね。それより、20年分をそろえるのにどれだけ時間がかかることか!
職員総出ですよ!」
「100個のものは80個、
5000リングは3857リングというくらいい加減なんじゃないんですか?」
「5000リング聞いた数字ですね。ああ、メディングの手合わせの賭けの賞金ですね。
早馬で知らせがあって、急遽用意しましたよ、我々資産院が。5000リングと1000リング分相当の砂漠石を」
「それはどうやって?」
「え?リングは、箱を用意して、そこにこれぐらい?というような。
1000リング分の石は変動しますが大体大きさで決まっています。」
「うわー、塩一つまみみたい。20年分もそんな感じ?」
「まさか!自分の資産を引き出すのと、譲渡では違いますよ、1リングまで数えます。
それこそ、1つ1つ。あとで足りないなど、資産院の恥です。」
「足りないなんて、あとで、何とでも嘘が言えるのでは?」
「それこそ、大審判に掛けられればわかることですよ。」
「いい加減なようできっちりしてるね。じゃ、セサミンがもらうのはきっちり20年分なんだね。よかった。」
「せさみん、先ほども、あの甘いもの2つはその方のところで食べられるとおっしゃってましたね。
ああセサミナ殿のことですね、なるほど、義弟となるわけか。ああ、楽しみだ。
それで、5000リングが3857リングというのは?」
「お前は本当に食い物と数字のことしか興味がないのだな。5000リングの賞金を数えたら
3857リングだったんだ。」
「それはすくなかったですね。え?数えたんですか?なんともご苦労なことで。
ん?賞金はマティス君がもらったんですか?
ん?まさか強奪したとか!!これは拘束ものですよ!面倒なのでしませんが。」
「そこは働け。いや、違う。はぁー、護衛同士が手合わせして、勝ったほうが賞金をもらうという話は
知ってるんだろ?」
「ええ、もちろん。5000リングと石を運んだのはわたしの配下です。
戻ってきてえらい興奮してましたよ?
で、あれでしょ?メディングの女護衛2人と領主殿の高原の民の護衛。
あ、見たんですか?話を聞く限りなかなかのものだったらしく、これには私も興味が出ました。
もう一人の王都の人間は中央院の者なんですが、その高原の民、男性もいたようで、
その2人を探しに来たんですよ。聞かれたでしょ?ほんとは秘密裏にってことなんですが、
街の人に聞きまくってましたからね。ここで話しても同じでしょ。
領主殿のもとは離れていて、なんでもお金で動くとか。
いいですよね?その考え。で、その2人から奪ったと?」
「・・・ちがう、その2人が私たちだ。手合わせをしたのはモウだ。さっきお前を失神させたのも、モウだ。」
「え!!奥さんが?それより、あなた方、砂漠の民では?高原の民の赤い服を着てないじゃないですか?」
「ふふふ、高原の民、2人はずっと赤いあの服を着なくてはいけないの?
ワイプさんも高原の服を着れば高原の民に見えるし、
砂漠の民の服を着れば砂漠人になりますよ。それと、さっきはごめんなさい。
威嚇と本気の区別がつかなかった。精進します。」
「なんと、そうですか、ああ、なるほど、言われてみればそうですね。あははは、その中央院の男、
赤い服を着た人間を片っ端から問い詰めていましたよ。
しかし、奥さんがあの女護衛を。はー、わたしもまだまだ鍛錬しないといけませんね。
あの2人もの鍛錬を見たことは有るのですが、さほど力があるとも思えなかった。
しかし、試合や実際の格闘では常に勝利していたんですよ。本番に強いのだと思っていました。」
「広場で、皆に見られながらの手合わせだったのでいつもの実力以上のものが
でなかったんでしょうね。」
「ああ、うまいことをいいますね。そう思っておきましょう。」
「ええ、お願いします。」
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