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122:蚊取り線香
しおりを挟む月が沈むと同時に起き出し、
家に戻り、トイレ、シャワー、朝食、昼のサンドイッチを作りをしたのだ。
それから街道を進んでいく。
「飛んでいくか?」
「いや、歩こう。景色はいいから楽しいよ?
こうやって歩きながら、おしゃべりするの楽しいもの。
それにしても、やっぱり植物関連は大きいね。」
「そうか?」
「あと、虫もでかい!!虫よけお願いします。」
「街道でか?森を抜けるならともかく、街道で焚く奴はいないぞ?」
「え?でも、飛んでる!ほら!」
「なにもしないんだがな。」
マティスはもぐさのようなものをちいさい容器に入れ、
砂漠石を使って、小さな火をつけた。
できるだけ、力は使わず、海峡石も使わない。つもり。
「あ、蚊取り線香の匂い!!」
「ん?」
「元のとこにもあったの。花のところを使ってたと思う。
これは?」
「葉だな。乾燥させて、油で練るんだ。中に火を落とすと
ゆっくり煙を出していく。この煙の匂いで虫が逃げていく。」
「へー、ゆっくり燃え広がるのは面白いね。」
「そうか?」
「そうだよ?」
9時間ほどで月が昇るそうだ。それが混合いはじめの月になるんだそうだ。
「早いね。そうするとほんとにこの世界で1か月以上たつんだ。
あっという間だね。」
「ああ、そうか、そうなるのか。早いか。
最初に吹き飛ばされたときがもうずっと昔のように思う。」
「あははは、そう?ごめんね?でも、あれは意識できるようになったから。
とっさに出るときはごめんよ?」
暢気にあの植物はなんだ?これは?と聞きながら進んでいくと
馬車が1台向こうからやってきた。
慌てて端によける。
結構な速さだ。どどどどどと地響きに気付いたら、
もう、向こうまで行ってしまった。
でかい馬だったね。と聞くと、マティスは少し厳し顔をした。
「王都の馬車だ。馬もいちばん速さがでる俊足馬だ。」
えっ?と振り返ると、馬車は止まっていて、
一人降りてこちらに向かってきた。
「マティス?」
「打合せ通りに」
設定を考えたのだ。
ゼムさんの紹介状にはマティスの名前はない。
この手紙を持つ夫婦を歓迎してくれとだけ。
だから、マティスの名前はティスだ。わたしはモウ。
何で?と聞くと、もう!と怒りながら照れるのがかわいいからという。
もう、なんでもいいです、お好きに。
サボテンの森近くで細々と暮らしていた。
もちろん、タロスさんもしっているに一緒に暮らしていた男も知っている。
タロスさんが死んでから交流はない。
ゼムさんのことも知っている。
運よくあの揺れ前に街に仕入れにきていて助かった。
砂漠が終わったことを知り、ゼムさんを頼り、その紹介でラーゼムに行く途中だと。
ラーゼムを抜けて北に、新天地に行くことにしたと。
大抵は服装で民族を判断するからあの広場で
派手な高原の服を着た2人組とは思わないし、
両目、両腕の男がマティスとは気づかないだろうと。
砂漠人はタロスさんとマティスだけだと知ってるんじゃないの?と聞くと、
タロスさんが最後の砂漠人だと知ってる者すらいないのだという。
振り切って逃げることもせずに、ぼけっと
こっちに向かっている人をいかにもなんだろう?というふうに待っていた。
「お前たち!待て!!」
(いや、待ってるだろ?)
結構な距離を息を切らしながらやってくる。
こっちにこいとは言わないところに良心を感じた。
マティスがわたしを背にかばいながら応える。
「はい、あのなにか?」
(お、マティス、いやティス、なんか、腰の低そうな感じの声だね?)
(モウ!黙って!笑いが込みあがる!!)
(あいあい)
「お前たちはどこに行く?どこから来た?」
「あの?そちらは?」
「ふんっ!田舎者め!王都の印が見えなかったのか!」
「ティス!ティス!王都だって!あの王都だって!」
「モウ!わかったから!興奮するな!」
(かわいい!モウ!かわいい!)
(いやそこであんたが興奮してどうするの!)
「ふんっ!王都と聞くだけでそれか!田舎者が!
で?どこから、どこへ行くんだ?」
「はい、わたしたち2人は砂漠の民です、
砂漠から来ました。数日前にものすごい揺れがありまして、
ちょうど仕入れに街に来ていましたのでそれに巻き込まれなかたんですが、
もう砂漠に資源はないといわれ、街に暮らすこともできないので、
草原に向かうのです。」
「砂漠の民か?数日前に?では広場で行われた催しは知っているか?
そこに高原の民がいたと思う。それらを見なかったか?」
(探しているのか?)
(ここはわたしが!)
「ええ、ええ、見ました。高原の民の女性と王都の女性たちとの
試合でしょ?もちろん見ました!素敵でした!
高原の民のあの赤い服!素敵でした!高原の民がお強いのは当然ですが王都の方のお強いこと!
王都の方はみなあのようにお強く素敵なのですか?あなた様も?」
期待のまなざしでみる。どうみても運動は苦手な体系。
これで動けるならわたしは尊敬する。
「お前は!すぐそういうことを!」
「もう!ティスティス!あなたが一番素敵なのは知ってるわ!」
「ふふ、そうか?ならいいさ、モウも素敵だよ?」
(かわいい!モウ!かわいい!)
(わかったから!!)
いちゃいちゃし始めたので相手が怒りだす。
わたしもこんなことされたら怒るね、うん、あんたは正常だ。
「ああ、もういい!!行け!」
馬車まで、なんとか戻ると、そのまま街に向かっていった。
「なんだろうね?探してるのか?ということはセサミナのところに
いないことはバレてるんだね。」
「セサミナが公表したんだろう。あれは誰だと問い合わせがひどかったんじゃないか?
生産院の男を連れ帰り、その話も入り、金で動くなら王都も押さえておきたいだろう。
で、また早馬でこちらに来たと。時間的には合うな。」
「ふーん、高原の民、赤い服ってのをさらに印象付けたから。あの男には探せないね。」
「ああ、そうなるか。さすがだな。」
「当分、あの赤いのはきれないから違う服にしようか?」
「そうだな、それもいい。全部レースで透けるのはどうだ?」
「うわー、変態がいるよー。」
「そう呼ばれてもなんとも思わない、むしろ心地いい。」
「うわー、真正だったよー。」
半分進んで、トイレ休憩。
トイレはどうしても家だ。
腰かけるのにちょうどいい木があったのでそこでサンドイッチを食べる。
また馬車が通る。
今度はさっきのものよりゆったり進む。しかし、この馬も大きい。
ゆっくり進むのでよく見ることができた。
そして目の前で止まる。
(これも王都の馬車だ。印が付いている)
(へー、王都の人は忙しいんだね)
「やぁ、旅の人。休憩ですか?
ティータイの街まで行くのですが、よろしければ、乗りませんか?
それで、申し訳ないのですが、なにか食べ物を譲ってもらえませんか?
急いで出たので、なにも用意できなかったのです。
ああ、わたしは王都のものです。怪しいものではないですよ?」
(モウ!ほら王都の人間だ、演技しろ!)
(はーい)
「素敵!今日は2回も王都の方を見ました!あなたもお強いんですか?」
「へ?強い?2回って?」
「モウ!落ち着け!わたしたちはティータイの街から草原に行く途中です。
先ほども王都の方が声を掛けてくださってたんで、
高原の民を見なかったかって。残念ながら見てないんです。見てたら自慢になったんですがね。
モウ、妻が先日見た高原の民の赤い服の女性と
王都の護衛の方の試合を見て、高原の民が強いのは当たり前だが、
王都の方がものすごく強かったって、それから王都の方は強いんだっていってね。
あの、やはり王都の方はお強いんですか?」
2人して期待のまなざしを向ける。
ちなみにマティスは気をまとい逆に強さを隠している。
「強くない!強くない!!資産院、事務職のものです、わたしは。
あなた方が言ってるのは護衛官の話でしょ?
試合を見たんですか?それで負けたんでしょ?それで強いとは言えないですよ。
ああ、街から出た方に街まで乗るかはなかったですね、いや、すいませんでした。
では、これで、道中お気をつけて。」
「あ、お待ちください。良かったらこれを。」
マティスが昼の残りを差し出している。
めずらしい。
「いいんですか?いや、すいません、ありがとうございます。」
うれしそうにしている。
(お前もなにかだしてくれ)
へ?そんなこというのもめずらしい。
「あの、これもお持ちください。祭りの時にもらったものです。
甘いガムだそうですよ。それと、これはラスクというものです。」
気に入ったら宣伝にもなるだろう。
「へーガムは知ってますが、あの苦いやつでしょ?
それが甘いんですか?めずらしい。これは固いパン?甘い匂いはしますね。
いやー、ありがとうございます。」
2人で手を振って見送った。
完全に見えなくなると、マティスが息を吐く。
「ん?」
「あいつは資産院のワイプだ。資産院と聞いて思い出した。
あいつこそ王都の上位だ。」
「え?知ってる人?向こうは気付いてる?」
「いや、あいつは数字と、食い物のことしか記憶に残らない。
騎士団にいたとき手合わせしている。互角だった。あいつがあれ以上強くなっていなければ
今の私のほうが強いが、私と同じで鍛錬好きだ。同じように強くなってるだろう。」
「おお!で、食べものを渡したのは?」
「あいつは食い物の恨みは絶対に忘れない。
少しでもいいから何か渡しておかないと、もし何かで再びあった時いらぬ恨みを買う。」
「あはははは、食い物の恨みか、そりゃ、そうだ。あ!!」
「なんだ?」
「赤い飴玉、返すよ?」
「今か?」
「忘れないうちに」
「寝る前に返してくれ。今日は家で寝よう。」
「ん?わかった。」
それからまた半分進んで、月が昇る。2つくっつき始めている。
今日はテントは出さずに
扉君を出して家でご飯とお風呂と睡眠だ。
ただ、寝る前に赤い飴玉をキスしながら舐め合った。
溶けるまで。舌先も鍛えられたと思う。
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