いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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114:不穏分子

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彼女を抱きかかえ、大講堂の中に移動した。

大講堂は、中庭の反対側、外部にある。
さまざまな式典に使っていた。1年に数回ある一族の集まり、
領民の代表が集まり話し合いをすることもある。
敷地内への入口のすぐ横にあるのだ。

記憶にある煌びやかさなくなり、堅牢な感じになっていた。

(へー体育館みたい。)

彼女が言う。
今は2人だけで会話がつなげている。セサミナとつなげてはいない。
こちらから望めばつながるが、セサミナからは無理だった。
彼女とはいつでもつながる。

(なにかもめているな。)
今は、気配も姿も消している。
大扉の前で、
館で働いているものだろうか?
セサミナに詰め寄っている。

外では1人、門の外から様子をうかがっているようだ。


「どうしてなんですか?なぜこの2人ばかり優遇されるのですか?」
「お前、主に対してなんていいようなんだ、控えろ!!」
「うるさい!ルグ!お前はメジオさんに何をしたんだ!
解雇の上、なんで強制労働なんだ!?犯罪者扱いじゃないか!!」
「犯罪者なんだよ、実際に。」
「なにをしたっていうんですか?ドーガーお前もなんか言えよ!
あれだけ世話になっていたくせに!!」
「世間話はするが、世話にはなっていなぞ?ブルーラ?
お前は仕事以外でも世話になっていたんだな?それならその剣幕は納得だな。」
「そうだよ、いろいろ世話になっていたんだ!セサミナ様!どういうことかおっしゃってください。
そして、この2人がなぜこうも優遇されるのか!納得できません。」
「そうか、ブルーラ、納得できないか。
そうだな、メジオのことはなにも言っていなかったな。
ここに集まっているものは、メジオに仕事以外で世話になっていたのか?」

みなだまって頷いている。

(え?それって駄目なんじゃないの?)
(そうだな、知らずにメジオに加担していたか、知っていてか)

「なかなかに人望があったんだな。ルグ、彼らの名を控えておいてくれ。
さて、メジオに世話になっていてここにいないものはいてないか?
申し訳ないが、教えておくれ?
きちんと礼はしておかなくてはいけないからな。」

(いやー、詐欺師決定戦の優勝者はセサミンだね。)
(それは認めるが、なぜ?)
(ふふ、そこらへんはマティスは鈍いね。あんな申し訳なさそうな声を出して、
きちんと礼をしておくなんて、
言われたら、メジオのことでなにかくれそうな感じじゃん。
それでなくても、2人の優遇が気にくわないっていってるんだよ?がめついんだよ、きっと)

「え?礼ですか?・・・えっと、ポリックがいませんね。」
「あいつはいつもメジオさんと話していた。」
「ポリックさんは今朝から見ていないわよ?」
「きっとメジオさんのことを気に病んでいるんだ、かわいそうに。」

口々に話し始める。
ポリックとやらは逃げたんだな。

「ポリックか。ありがとう。さて、メジオの解雇理由だな、
仕事をな、2つ掛け持ちしていたんだ。なので、こちらの仕事を辞めてもらった。
負担が多いからな。」

みな、なんだ、とおもって頷いている。

「それで、なぜ、強制労働になったかというのは、
領主の仕事というのは知られてはいけないことが多い。
それをな、嗅ぎまわって知られてはいけない相手に知らせていたんだ。捨て置けんだろ?」

それはそうだと頷く。

「なので、お前たちも同罪として、強制労働にはしないが、解雇だ。
そうそうに荷物をまとめておくれ。いままで、ご苦労であった。」

「そんな!!それはおかしいです。わたしたちはなにも領主様のことを話したりしていませんし、
そもそも領主様の仕事の内容は知りません!!」
「あははは、それはそうだ。わたしの領主の仕事の内容を知っているのなら、お前がすればいい。
しかし、お前たちは知りえたことをメジオに話して、褒美をもらっていたんじゃないのか?
だから同罪だ。なに、仕事はすぐに見つかる。ただ、この屋敷には置いておけないんだ。」

みな思い当たるのか、顔色が悪くなっていった。

「だったら!だったら!!ドーガーも同罪だ!こいつもメジオと話をしていた!
領主様の側近なんだ、それこそ仕事の内容は筒抜けじゃないか!ドーガーも同罪だ!!」

(なんで、自分のことなのに、人の事をまきこもうとするのだろうね?いやだねぇ)
(みな、自分の身がかわいいのさ。)
(でも、それで自分の罪が軽くなるわけではないよ?不思議だね)
(お前ならそう考えるのだろうな。しかし、他人が自分より良い扱いをされているのは許せないものさ)
(ふーん)


ドーガーは下を向いている。
まだまだ若いな。

「そうだな、ドーガーも同罪だ。だが、先に詫びて全財産をわたしに譲渡している。
お前たちもそうするか?なら解雇は無しだが。」
「全財産?そんな、信じられない・・・ドーガーは何かにつけて優遇されている!ルグもだ!!」

今度は2人の話だ。

(それとこれと別問題だよね?)
(そうだな、自分より待遇がいいということは許せんというので同じなんだろ)
(あー、なるほど)
(ふふ、そこらへんは鈍いな)
(あ!もう!!だって、ここまでするの面倒じゃない?だから考えたことなかった)
(お前らしい)


「優遇ね。与えられた仕事をしてそれに見合った報酬を与えているだけだ。
もちろん感謝もしている。ブルーラ?お前は寝る時間を削ってわたしの護衛と事務方処理、
各部署の調整をしてくれるのか?まず、おまえの腕ではわたしは死んでしまうと思うのだが、どうだ?」
「それは、わたしの仕事ではありません!!」
「そうだ、お前の仕事ではない。おまえのする仕事に対してそれに見合った報酬は渡している。
それが不服なのだろう?メジオのことがなくてもそれだけで解雇だ。
ああ、それと、わたしのいったことが信じられないともいったな?これも解雇になる。
さ、選べ、メジオからもらった金と財産を出していままで通り仕事をするか、
ここで、素直にやめるか。どうする?それと、こんな解雇理由を外で話すとお前たちの信用はなくなるぞ?
言っていい話と悪い話はよく判断することをだ。」

ブルーラをはじめ、ひとり、ふたりとこの場を離れていった。

(え?やめるの?ここで働くほうがお給金いいんじゃないの?先を考えればいたほうがいいのに。
そんなに貯めていたのかな?)
(貯めた財産が減るのがいやなんだろ)

「申し訳ありません、セサミナ様。」
「ドーガーもう謝罪は必要ないぞ。不穏分子は片付いた。ポリックの足取りも抑えておけ。」
「はい。」

「それで、あれはなんだ?」

「はい、お待ちください。」

ルグが門近くに近づく。それに彼女がついていくので、私も後を追った。
 「ルグさん、よかった。さっきから領主を出せって。そしたらブルーラたちが来て
騒いでいたから待っていたんですよ。ブルーラたちは何だったんです?」
「ああ、職を離れるあいさつだ。」
「え?そうなんですか?寂しくなるなー。」
「で?」
「ああ、領主に合わせろと。ちゃんと手続きを取れと言ってるんですが、急いでいるそうで。
そしたらセサミナ様が現れたので。それをブルーラたちが横入りのような形で。」
「ふん、なるほど。お前はもっと威厳をもって門を守れ。舐められてるぞ?」
「は、はいっ。」

「あんたはえらいさんだね?領主様と話がしたいんだ。取り次いでくれ。」
「手続きを取れと言われただろう?セサミナ様は皆の話を真摯に聞く領主だ。
明日、月が沈み、、は時間が取れないか、月が昇る前にでも来てくれ。」
「やっぱり、月が沈んだら何かあるんだ!急いでいるんだ!話をさせてくれ!!」

(雑貨屋の主人だ)
(へー、あのひとが?なんか、ゼムさんポイ人を想像してたんだけど、真逆だね。繊細そうだ。)
(なかなかに手先が器用なんだぞ?)

セサミナはルグに任せて大講堂の中に入っていったので
私たちも中に入った。

「セサミナ?」
「あ、兄さん、すいません、お待たせしました。」
「いや、それはいい。見ていたが、あれだけの人数を解雇していいのか?
なにもしらず、使われていただけのようだぞ?」
「ああ、お恥ずかしいところをお見せしましたね。ええ、いいのです。
これから忙しくなる、事業の方に。蓄え以外の資産も投資しなければなりません。
不平をいいながら働くものに給金は出したくないのですよ。」
「セサミンはよい領主だね。」
「姉さんにそういってもらえると嬉しいです。」
「照れるな!それでな、外の。あれが雑貨屋の主人だ。」
「ああ、そうなのですか?なんだろう?ルグとまだ話してますね。」
「呼んでくれるか?」
「かまいませんが、会うのですか?」
「ああ。彼には世話になった。それに私の事はしっているよ。」
「そうですか。ドーガー、客人だ、ここへ。」
「はい、わかりました。」

「そうだね、彼は、縁結びの神様だよね。」
「えんむすび?神なのですか?」
「うん、最初にね、マティスにあった時、気配を消してそばにいたのね。
で、赤い飴玉をひとつ失敬したの。
それで、わたしがいることに気付いたって。飴ちゃんの数把握してるのよ?
で、ハンバーグがあったから、セサミンも警戒解いてくれたでしょ?
あの肉を細切れにする機械をマティスに勧めたのも彼なんだって。
ちなみにあれは結婚の祝いね、マティスからの。
縁っていうのは、出会いかな?それを結びつける?ね?」
「なるほど、そうですね。しかし、それが結婚の祝いですか?
お二方が付けてる指輪ではないのですか?」
「あ、これはわたしが作ったの」
「・・・兄さん。やはり少し世間を勉強しましょう。」
「だ、だが、喜んでくれたし、そうだ、耳飾りは私が送ったんだ!」
「うん、これ?いいでしょ?」

彼女が髪を耳にかけ、耳飾りを見せる。
そのしぐさに艶がある。

「ああ、ほんとうだ。砂漠石?色がついてる。きれいな意匠ですね。姉さんにピッタリだ。」
「そうだろう、そうだろう。」
「ふふ、褒められるとうれしいね。改めて、マティスありがとうね。」

彼女の耳に付けたときを思い出した。
早く帰りたい。いや、風呂だ。

「セサミナ様、お連れしました。」
「セサミナ様?客人とは?彼には明日の月が昇るころに来るようにと話していたところですよ?」

「あんたが、領主様だな?」
「おい、失礼だぞ?」
「いや、かまわない。雑貨屋を営んでるそうだな?最近ははんばあぐか?
それも宿屋に売ったと聞いたが?」
「そ、そんなはなしもしってるのか?さすがだな。
そうだ、売ったんだ。そのことはいい。
ああ、だが、それに関係あるんだ。あれな、はんばあぐ。
最初は、肉を細かくする機械を売るつもりだったんだ。だが、高いって。
じゃ、こんなものも作れるんだぞって、店で食わしてたんだ。
そしたら、はんばあぐだけ売ってくれって。
それで、飛ぶように売れたんだ。作れば売れる。本職の雑貨よりも飴よりも。
だが、急に売れなくなったんだ。でも、機械は売れた。
その時、レシピも売ったんだ。街の宿屋だ。そのとき石の隠匿も掛けた。
別におれは料理人じゃないんだ、かまわないと思ったのさ。
それにここだけの話、あれは俺が考えたものではないんだ。
人から聞いたんだ。だから隠匿も何も効きはしない。そいつが広めたら、もうおわりさ。
ま、俺はもう作れないがな。
試しに作ったら、髪が抜けたんだ。恐ろしくなってやめたよ。
いや、そのはなしもいい、それでな、あの揺れだろ?
驚いた。それで、悪いが、これで店の雑貨も売れるだろうと思ったのさ。
幸い壊れたものはうちの店ではなかったのさ。
なのに売れない。で、いつも飴を買いに来る奴を見かけたから、
どうだ?安くしておくぞっていったんだ。コップの一つや二つ割れただろうからな。
そしたら、お前のところでは買わないっていうじゃないか!
どういうことだっていえば、はんばあぐがかえなかったからだと、並んでいたのに、
俺の番で売り切れだといったというんだ。そんなの仕方がないじゃないか!
一人で作って丸めて焼いてたんだ。逆恨みだよ、待ったく。
ああ、それもいい。それでな、そいつがいうのさ、街の宿屋ではんばあぐが食えると。
そりゃそうだ、俺が売って教えたんだ。味はお前ところよりうまいと言いやがる。
お前は、食ってないだろうが!と思ったが、おれも食いたくなって、宿屋にいったのさ。
どうやら売れなくなったのは宿屋が俺のはんばあぐよりもうまいものを作るとふれまわっていたらしい。
しかし、味は同じだった。ただ、さすが料理人だ、皿の真ん中に、こう、ちょんと置いてあってな、
サボテンやら赤茄とかが飾ってあるのさ、そこで、うまくおもうのさ。それに高い!
だから余計にうまいとおもうんだ。うまいことやりやがって!!
ああ、そのこともいい。それも商売だ。で、一人で食ってたらな、
3人組と宿の人間が入ってきて奥の部屋に入っていったんだ。
俺はなんとなくばつが悪くてか隠れたんだ。
すでに酔っぱらってたよ。きれいな姉ちゃん、ちょっといかついがな。
その2人を抱え込むようにしてな。
でかい声で話していた。その話がだ、ここからだ。」

「長い!!」

「あぁ?お!なんだ、お前さんか!な!お前、こっちにこい!!
領主様、あの、話はもうこれで。こいつはわたしの連れでさ、
いつのまに入り込んだのか、引き取りますので・・」
「ふふふ、兄のことを知っているのだな。大丈夫だ。
兄上はわたしの危機に駆けつけてくれたのだ。
みなが思っているようなことはない。安心しろ。
だが、他言無用だぞ?」
「え?そうなのか?なんだ、そうか、よかったな。そうか、そうか。」
「それで?」
「ああ、それで?ああ、そうだ、はん、お前が話の腰を折るからだ!!
で、ああ、そいつら、女が言ってたんだ、月が沈めば、何もかも手に入る。領主の力もと。
もっと詳しく聞きたかったが、そこで、男の声で黙れと余計なことはいうなと言ったんだ。
明日勝たなければそれもないんだぞと。
そしたら女2人はけらけら笑いながら、万に一つも負ける可能性がないと。
だからあの条件で話を勧めたのでしょうとな。そこで男も大笑いだ。
領主の力がってのが分からないが、この街のことか?
なんにせよ、おれの勘が急いで知らせなきゃいけねって叫ぶんだ。
俺の勘は間違いがねえ。で、知らせに来たんだ。」

「なるほど。ああ、名は?なんという?」
「へ?おれですか?サバスだ。雑貨屋サバスというのは俺のことだ。」
「そうか、サバスご苦労。その話を知っているか、知らないでは雲泥の差だ。助かった。
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「ああ、サバスか、初めて名を呼ぶな。ありがとう。」
「なにをいうんだ?それより、国を出たんじゃないのか?そうだ?嫁さんはどうした?
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「やっぱりってなんだ。紹介させてくれ、これが俺の嫁だ。」

彼女は高原の服を着て、口元は隠していたが、別にいいだろう。

「初めまして、サバス様。マティスの妻でございます。
故郷のしきたりなので口元を隠すことをお許しください。
主人がいろいろとお世話になったようで、ありがとうございます。
祝いの品々も、さすがサバス様と感服いたしました。
わたしのほしいものを千里眼で見抜いたようでございます。
あの肉挽きも、爪切りも、耳かきも素晴らしいものでした。
ありがとうございます。」
「へ?そ、そんな、礼を言われることなぞねーよ。
あれはスパイルって国が作ったものだ、俺は仕入れただけさ。」
「いいえ、いいえ、あの商品に目を付けるところが素晴らしいのです。
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「しかし、俺も試したが、あれで切るととがって逆に危ないだろ?」
「いえいえ、切ったあとは軽くやすりで削るのです。」
「なんだ、それならやすりでいいじゃないか?2つも道具を使うのは面倒だぜ?」
「いえいえ、あの爪切りの背の部分にやすりを付けてしまうのです。切った後に、軽く撫ぜるだけでいいのです。」
「そいつは、そうか、なるほど。しかし、あの棒は?あれはないかわからなかたんだ。」
「そんなものをよこすな」
「うるせえ!」
「あれは耳掃除をするものです。深く耳に入れずに、そろそろとゴミを書き出すのです。
主人もそれはもう、喜びましたよ。あの角度が職人の技なのです。」
「耳?耳の掃除か、中のね。それこそ、うちのガムを噛めばいい。苦くて人気はないがな。」
「あのガムもサバス様がおつくりとか。素晴らしいことです。
喉の炎症を抑えるためにも必要なのですよね?耳の掃除と。
しかし、喉の炎症は砂漠に出ない限り少ないのでは?耳も砂が入り込まなくても掃除は必要です。
耳かきはその点、気持ちがいいし、いつでも掃除できます。やりすぎはよくないのですが。でも、そうですね。
ガムの薬効が必要なのは喉だけなので、甘い味を売り出しては?子供たちもこぞって噛みますよ?
それで耳の中がきれいになれば、素晴らしいことです。」
「甘い味?ガムが?」
「はい、お店で売っている飴のように、いろいろと。季節ごとに味が変わるのもいいかもしれませんね。
私は赤い色と黄色い色の味が好きです。」
「そうか、それはうれしいね。しかし、ガムの味ね、甘いものか・・」
「はい、噛み終わった後ガムを捨てる紙と一緒に売るのです。
その紙にお店の名前をいれたり、宣伝を入れるのもいいかもしれませんね。
吐いて捨てるような野蛮な行為は甘いガムには似合いません。
大人向けにすっきりした、 枸櫞をもとにした少し甘味をいれたものもいかもしれませんね。
ああ、これは飴玉でもよさそうです。」
「おいおいおい!なんだ、なんだ、素晴らしい嫁さんじゃないか、おい!!
今聞いたことはおれが商売にしてしまっていいのか!え!!」
「商売になりますでしょうか?もし、なるとしてもそれをできるのはサバス様のみ。
どうぞお好きになさってくださいませ。」
「おい、俺は帰る!もうお前にかんして何も心配すことはねぇ!
お前のことは話さねえ!
領主様、話はそれだけなんだ、俺は帰るな。」
「ああ、わざわざ、ありあがとう、礼を言う。」
「おいおい、領主様まで礼をいうのか、礼を言うのはこっちのほうさ。
俺の勘がここにいけってのはこれだったんだ!じゃあな!!」
「あ、お待ちください。サバス様。
我が故郷では結婚の祝いをもらったらお礼にささやかな
返礼をする風習があるのです。どうぞ、これを。
小腹がすいたときなどにお食べくださいませ。
ああ、あまり日持ちはしませんのでお早めにどうぞ」
「なんだ、土産もらえるのかい、ありがとうよ。
じゃ、マティス、ああ、名前を呼ぶのは俺も始めただな。
国を出ることは出るのか?そうか。
でも一生ってわけでもないだろ?こっちに帰ったら寄ってくれ。
その時は俺は飴屋か、ガム屋か、、、ぐふふふふ。」
「ああ、サバス様、あなた様は雑貨屋です。これぞと思うものを仕入れて実演しつつ売るのです。
はんばあぐも最初はそうだったのでしょ?その考えは間違いではないのです。
飴も、ガムも、2番手3番手です。
飴を買うついでになにか新しい商品を買う、
新しい商品を買うついでに新作のガムを買う。
こういう方法もあるということだけ、差し出がましいようですが、覚えておいてくださいませ。」
「そ、そうだな。ああ、そうだ。俺は雑貨屋のザバスだ。
ありがとう!!じゃ、これはゆっくりいただくよ。じゃな」

雑貨屋、サバスは小走りに帰っていった。

「はー、、あのしゃべり方疲れる。」
「愛しい人、えらくあの男を気に入ったのか?あんなに詳しく助言するとは!!」
「姉さん!爪切りと、耳掃除?ガムの話ははじめて聞きました!しかも商売のやり方まで助言するとは!」
「ん?なに?2人とも。だって、耳かきと爪切りだよ?
マティスだって耳掃除好きでしょ?あれをもらったんだからそれに対するお礼はしないと。」
「そうか、そうだな。」
「え?兄さん、納得したんですか?耳掃除とは?」
「近いうちにあの雑貨屋で買っておいで?使い方はあとで教えてあげる。
ガムが売れれば、歯ブラシも売れるよ。口の中が薬効ですっきりしないもの。
それよりザバスさんが持ってきた話、どう思う? 」
「ああ、歯ブラシ、さすがですね。
それとあの話は、そうですね、おそらく、手合わせ前に契約を交わすつもりなのでしょう?
その内容に巧妙に仕込まれているのかと。」
「そうか、セサミンと勝負だね、それは、頑張って。」
「はい、それこそ、万に一つも負ける気がしません。」
「あははは、でも油断は禁物ね。」
「はい。」
「しかし、わたしってそんなに弱そうに見える?だいぶつよくなったよね?」
「そうだ、だいぶどころか相当だぞ。ただ、強く見えるかと聞かれれば、愛らしいとしか言いようがない。」
「はいはい、セサミンはどう思う?」
「そうですね、ええ、強くは見えません。守りたくはなります。」
「ルグ、ドーガー、2人は?」
「同じです。ただ、気を発していると違います。死んだと思いましたから。」
「わたしも同じです、恐ろしかったです。」
「そうか、気か、こう、いつも怒りの雰囲気を出してればいいのかな?
怒り?んー、わたしがものすごく怒ったこと?
これか!!」

彼女の周りに例の球体が広がり、ルグ、ドーガーは、セサミナを守ることなく、吹き飛んだ。受け身はとれたようだ。
私は、セサミナを抱きかかえ、球体外まで飛ぶ。

「え?え?どうしよ!マティス!セサミナ!無事?ルグとドーガーは?」
「ああ、大丈夫だ、これはあれだな、意識してできたのか?
「いや、むかし仕事先でさ、わたし一人が悪いみたいに言われちゃって、
ほんとは、その場にいた、元請けが悪かったんだけど、それを施主のまえで言えないでしょう?
あの時、わたしまだ新人だよ?それを寄ってたかった吊るしあげてさ、
心の中で何回あの親父を殺したことか、
その時の怒り?ああ、ごめんね。」
「そうか、そいつは私が殺してこよう。今どこにいるんだ?」
「兄さん、わたしもいきます。」
「いやいや、昔の話。その親父だってとっくに死んでる。
ああ、ルグ、ドーガー、大丈夫?受け身はとれたのね。よかった。」
「さすがです、気だけでここまでとは、セサミナ様、ご無事でよかった。
マティス様申し訳ない。セサミナ様をお守りくださりありがとうございます。」
「模擬戦をするまでもないし、明日の手合わせも一瞬だな。」
「え?模擬戦しようよ?今のはもうしない。純粋に組手をしたい。」
「ルグ?ドーガー?姉上こういってるぞ?どうだ?」

「はい、お願いしたいです。」
「わたしも、よろしくお願いします。」





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