29 / 869
29:ガム
しおりを挟む部屋のベットで心もとなく座っていると
マティスがドアをノックしてきた。
自動ではない。
「どうぞ」
と、声をかけると扉を開いて入ってきた。
扉は当然、砂漠石だが、斜めに溝を入れることによって透けることはない。
部屋を見渡して、箱とあの飴ちゃんの入った瓶を、
角に作ったデスクに置いた。
「簡単な部屋にしたんだな。
便所と風呂があんなに豪勢だったから意外だ。」
と、部屋を見渡していたが、鏡を見付驚いていた。
「・・・やはりすごい!こんな大きな鏡は初めてだ。」
「鏡の原理はなんとなく知ってたからね。石をうすくのばして銀を張ったよ」
「銀!!銀なのか?くわしくは知らないが、鏡は錫と水銀を使うと聞いたことがる。」
「んー?昔はそうだったのかな?時間がかかるって奴かな?それだとわたしも難しくて作れないよ。」
「え?こちらの方が簡単なのか?しかし、銀なんだろう?持っていたのか?」
「いや、量は少ないけど、砂漠の砂の中にあったよ?金も。
海が隆起して砂漠になたんなら結構な鉱石があるんじゃないのかな?
私の知識では金と銀、鉄、銅、くらいしかわかんなかったけど。」
「・・・すごい知識だな。」
「ふふ、すごくはないのよ。漠然としかものを知らないから、
あとは不思議石大先生がうまいことしてくれる。
石鹸みたいに、油と苛性ソーダかな?
その苛性ソーダってのかなにか知らないから作れない。灰汁?強アルカリ?
知らないから作れないってブレーキがかかる。
でも、漠然としたものなら想像力の結果と石様様があればね。」
「それもすごい。」
「うん、すごいね。あ、毛布も持ってきてくれたの?
ありがと。絶対的に布がないよね。ドテラも掛け布団になったよ。
ある意味本来の姿に戻ったんだけど。」
あの血の色の上着が寝床の上にあった。
本来?上掛けを着ていたのか?
「あ、これがガムだ。口に入れ数回かんで吐き出せ。」
小さな紙も一緒にくれた。エチケットだね。
小豆ほどの豆を1つくれたので、口に入れかみしめる。
舌先に触れた瞬間苦みが広がる。仁丹?
「にがい・・・」
「ちゃんとかめよ、右と左で。薬草と樹脂を固めたものだ。
唾液ととけあって、口の匂いを取る。苦みが気になるようだなら、後でこれを舐めればいい。」
ん?歯を磨いた後に飴ちゃんたべたら虫歯になるよ?
シュガーレス?
「?この飴って何でできてるの?」
「なにって砂糖だ。」
「歯を磨いた後飴食べたら意味ないんじゃないの?虫歯になるよ?」
「ムシバ?なんだそれ?」
おお、虫歯がない世界でした。
「虫歯がないならなんで歯を磨くの?いや、口臭予防?」
「磨くというには違うな?口の匂い取りだ。」
なるほど、、、匂い香りに敏感な異世界。
しかし苦い。もういいだろうと、紙に出す。
あ、ごみ箱もいるね。たまったらまとめて分解するようにしようか。
ものを作るときも声に出す癖をつけないといけないのかな?
すぐに使えるようにさまざまな大きさに丸くした石を1つ取り出し、床に置いた。
『ゴミ箱。いっぱいになったら中のものを分解して再利用しよう。』
マティスも噛んだのか、同じように紙に丸めて
即席に作ったゴミ箱に捨てる。
「そんな力の使い方でいいのか?コトダマというのか?」
「言霊。簡単に言うと言葉に力があるって考え方。
ものにお願いしてる感じかな?」
「不思議な考え方だ。ほら、飴。食べるだろ?」
「うん、食べる」
黄色い飴をもらった。甘い。柑橘類かな?この前食べたものと味が違う。
「おいしいね。?マティスは食べないの?苦いでしょ?」
「ガムはあるが、飴は少ない。ガムの味も慣れれば問題ない」
あら、いきなり食料問題が。
元どてらの掛布団をめくり持ってきてもらった毛布をエアーマットもどきの上にひいた。
そこに座りすぐ横をポンポンと叩いてマティスを座らせる。
首に腕を回す。
半分溶けかけた飴を口移しに渡した。
「半分こね?」
風呂で水を飲ませたときお気に召したようだから
飴も渡したのだが、離れた瞬間ガリリと噛むと
ベットに押し倒して再び口をふさがれた。
あら?思ってたのと反応が違う。
12
あなたにおすすめの小説
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”
どたぬき
ファンタジー
ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。
なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。
黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。
そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。
しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの?
優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、
冒険者家業で地力を付けながら、
訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。
勇者ではありません。
召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。
でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる