いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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03:砂漠の夜は寒い

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『大丈夫、大丈夫、目が覚めたら元気いっぱい。
問題はすべて解決してるよ。ゆっくりお休み』

このセリフが間違いだったかもしれない。
要は問題解決まで目が覚めないってことか?違うよね?

砂漠の夜は寒い。
不思議石をカバンから取り出し、薄い薄いドーム状のテントにする。
冷えた空気は遮断したが、寒い。火をおこす?
無理だな、燃やすものがない。
空気を摩擦で温める?電子レンジのように?
ピッと10秒、20秒、40秒、、、熱い、、、ストップ。

これで、空気穴をあければいい。
砂をソファーのように整形して、固める。
水も作る。空気からだ。水分は有るのだから、水に還元。すこし飲んでみるがまずい。
水というのはミネラルがはいってこそのおいしい水なのね。

『おいしくなってね』

不思議石のコップ。トレー。それを、ワイルダーマンのそばに。
ワイルダーマンを浮かしてその下に砂でベットもどきを作る。
あ、浮かせることができるんだったら森に戻ればよかった、、、
でも、ま、いいか。
それから、不思議石でいろんな形をつくったり、砂から思い当たる原子を取り出したり。
スエットを外用の服からゆったりサイズに戻し、どてらコートを一枚の毛布にする。もちろん綿入り。
それを砂ソファーにひいて横たわる。そういえば、ろくに寝ていなかった。
ワイルダーマンは、ま、そのままで。

『おやすみなさい』

目が覚めれば元に戻ってますように。



ドーン、ドーん、、、という音で目が覚める。
え?さっき寝たとこっすよ。
なに?地震?しかも熱い!!

「まぶしい!!」

ここどこよ、知らない天井どころか天井がないよ!!

「動くな」
またしても喉に槍が向いている、刺さってない?ちょっとピリッとしたけど。

ん?言葉わかるな?理解できるといったほうがいいか?

「お前はなんだ?この囲いはなんだ?」

囲い?おー!!砂漠の中でガラスのドーム!!
もれなく死ぬる!!

『石に戻って!』

ドームだけ一瞬のキラキラをまき散らしこぶし大の石に戻る。
外からのさわやかな空気がすがすがしい。
空気は乾燥してるのね。

と、ワイルダーマンはこちらをひとにらみすると
後ずさりしながら近くの岩陰に隠れた。
目はこちらに向いたままだが。ん?眼帯は?あれ、ファッションだったの?



じょぼじょぼ・・・

・・・・生理現象。


わたしは?やはりのどの渇きも、生理現象ない。
昨日の水は?と見渡せば、ワイルダーマンが飲んだのか空っぽだった。
コップとトレーも石に戻そうと手を伸ばす。

チュイン!

という音とともにコップ近くにナイフが刺さった。

「動くな!」

振り向くと同時にまた喉に槍が刺さる。

『下がれ』

声と同時に後ろにムーンウォークのごとく下がる。

「なっ!!」

「言葉、分かりますか?」
「なに?」

ん?わからんのか?

『理解して、わたしの言葉を』

「え?」
「言葉、分かりますか?」
「え?なに?」
「ん?だめか、どうする?一方通行ってのも不便だしな、てか、逃げるか?」
「え?逃げるな!」
「あ、通じてる?言葉わかる?」
「ああ、わかる、最初はわからなかったが今はわかる。」

おお!!すばらしい。
しかし、言霊か?魔法か?チート技か?力を込めて話すのは危ないな。

少し、思案しているとまた、また間合いを詰められ槍が刺さる。

「お前はなんだ?さっきの囲いはどうなった?その石をどこで手に入れた!!
 そして俺に何をした!!!!」

うわー、刺さってる刺さってる!!

愛想笑いもできないくらい引くついてるとドドーンという音とともにも砂塵が舞った。
え?と横を向いた瞬間、血しぶきが飛ぶ。
あ、槍、もろ刺さり、、、

人間、血が抜けると、貧血になるよね。
もうろうとする視界にワイルダーマンの驚愕の顔が見える。

『血よと、ま、れ、、、、、』

そこまでつぶやくと崩れるように倒れていった。

 

─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


その日、月が沈むころ爆裂音が響いた。
それにしては規模がでかいし、沈むころに起こるのも珍しい。

どちらにしても、今日の収穫は期待できる。
思うように動かぬ左手に気合を入れ相棒とともに砂漠をかけていく。
爆裂で負傷したがその爆裂のおかげで食べていける。
皮肉な話だ。命があるだけでも儲けものなのだろう。
よっぽど遠くでの爆裂だったのか、
半分を過ぎてもそれらしき痕跡は見当たらない。

通常の爆裂で出てきた砂漠石を集めつつ、
いつもとは地形が変わっている場所を探した。
軽く飯をすませ、あきらめてそろそろ戻るかという頃に
明らかに地形が変わった砂丘が見えてきた。

そこに血で染めたような真っ赤なローブを被った奴が、
片足をあげ、足先になにかをはめている。

気配を消し、背後に廻りあたりを見渡しても砂漠石の破片すらなかった。

槍を構える。

「おい、お前!そこでなにをしている!」

そいつは振り向くと同時に雄たけびをあげた。

『うぎゃーーーーー』

吹き飛ぶからだ。打ち付ける背中。そこで意識はなくなった。


温かい柔らかいのもが顔に触れる。

あー、大丈夫なんだ。

砂漠に来てから傷のせいか、眠りが浅く、
いったん目が覚めるとなかなかに寝付けなかった。

合わさりの月の日は特にひどく、
そんな私を気遣って親父さんは温かい飲み物用意して、
私の涙が止まるまで自分の冒険譚をはなしてくれた。

いつしか、ゆっくり眠れるようになったが、親父さんを看取ってから
また眠れない日々が続いている。
そうか、ゆっくり寝てもいいんだ。
大丈夫なんだ。久々にゆっくり眠れそうだ。

暑さとまぶしさに目が覚める。

水・・・と廻りを見れば、透明な入れ物にはいった水が目に入る
怪しさがあったが、それよりもこの喉の渇きをどうにかしたい。

それにこの水は大丈夫だというのが分かっていた。

ごくりと一気に飲み干す。うまい。
が、喉は潤ったがこの暑さはいただけない。

光が降り注ぎ膜のようなものでおおわれている。
血のローブの奴も横たわっている。おそるおそる近づけば眠っているようだ。
とにかくここを出なければ。

一周数十歩の膜をたたくがびくもしないし、槍もささらん。
そこで、気づく。
左手が動いている。流れる汗をぬぐうために眼帯を外せば視界が広がる。

暑さの汗とは違う汗が流れる。
考えるのはあとだ、あふれる力に任せて体当たりを繰り返す。
脱水症状がでてるのか小便がしたい。



「*****」

奴が起きたのか喉先に槍を突き付ける。
うっすら血がにじむが知ったことじゃない。

「動くな!
お前はなんだ?この囲いはなんだ?」

そいつは上を向き目をそばめると

『*****』

声ともいいがたい音で廻りの幕は光とともに消え、かなりの大きさの砂漠石になった。
砂漠の冷たい空気が吹き抜ける。
ブルリと身が震え生理欲求が沸き上がる。
人前ではやはりまずいので近場の岩陰で奴の見据えながら済ます。
おお!!左手万歳。
変に感激していると奴は透明な入れ物に手を伸ばす。
とっさにナイフを投げ動きを止めた。

「動くな!」

喉に槍が刺さる。

『***』

音と同時に後ろに体が下がる。

「なっ!!」

「********?」
「なに?」

『*********』

「え?」
「言葉、分かりますか?」
「え?なに?」
「ん?だめか、どうする?一方通行ってのも不便だしな、てか、逃げるか?」
「え?逃げるな!」
「あ、通じてる?言葉わかる?」
「ああ、わかる、最初はわからんかったが今はわかる」

理解できない言葉と、言葉ではない音。
そのあとの言葉はなぜだか理解できた。逃げる?だめだ!!すぐさま間合いをつめる。

「お前はなんだ?さっきの囲いはどうなった?その入れ物はなんだ?その石をどこで手に入れた!!
 そして俺に何をした!!!!」

すこし力が入りすぎたかもしれんが喉にまた少し傷がつく。
あ、っと思う間もなくすぐ近くで爆裂が起こりそちらにそいつが行き勢いよく向く。

ブシャー

瞬間、血しぶきが飛ぶ。

え?と思う間も、槍を外すこともなく崩れ落ちるからだ。

『血よと、ま、れ、、、、』

小さな声を最後にそいつはピクリとも動かなくなった。
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