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第4章 覇気使い四天王。
第157話 月の暴走。
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「おい……冗談……だろ……? また……いつもの悪ふざけだろ……」
今、直観している現実が理解できず、納得できず、受け入れずにいていた。
もしかしたらと、その弾丸はペイントが入っているドッキリなのではかと、実はゴム弾で頭に接触すると血糊が出る仕組みではないかと、期待していた。
「!」
虹矢の事は目に入らず、フラフラと桐崎へ接近し品川はへたりこむ。
そして脱力された左手に両手で優しく触れた。
左手は氷みたいに冷たく、ゆっくりと体温が下がっていくのを感じた。
実感してしまった。身体から魂が抜けていく感覚、徐々に冷たくなる肉体、そこで失われた感情。
全て初体験で、心は悲しみ、苦しみ、喪失に支配されていた。
「これって……現実……かよ……」
死を受け入れられない品川は現実を疑う。
「残念だが、これは現実だ」
虹矢による残酷な言葉により、品川の中にある何かが崩れた。
品川が茫然自失している最中、虹矢は次を決めていた。
「次はお前だ。品川修二」
それは品川だった。
「うおぉぉぉぉッ!」
怒りの形相で吹雪は叫びながら虹矢へ勢いよくタックルした。
タックルされた虹矢はバランスを崩し、吹雪は馬乗り状態となった。
「テメェ、ふざけんじゃねぇ! この野郎!
この野郎! この人殺し野郎がぁッ!」
吹雪は怒涛の勢いで、虹矢の頬目掛けて交互ずつ殴り続ける。
もはや覇気なんて使わず、人間として殺意のみで虹矢を倒そうとしていた。
「うぐっ!」
更に発砲音が響いた。次に被害を受けたのは吹雪だった。
どうやら腹部を至近距離で撃たれ、猛烈な痛みと火傷を感じ、虹矢から仰け反る形で離れた。
「吹雪……?」
無気力で負傷した吹雪を見る品川。
「品川修二、これは貴様が決断した結果だ。その目でよく見ておけ」
虹矢は次に吹雪へ向けて発砲しようとした。
(おい、またかよ……次は吹雪かよ……)
品川の思考は色々と入り交じっていた。
『やめろ、早く逃げろ、また大切な者が失うのか? 殺せ、全て消し去れ、邪魔な物を全て……壊せ』と心の何処から響いていた。
その黒い感情に影響されたのか、品川の右腕がピクリと動いた。
「覇気使いが死ぬとどうなるのか分からないが、貴様で試してみるか」
虹矢は撃鉄を起こし、吹雪へ向けて発砲した。
発砲された弾丸は途中で何者かに握られた。
「?」
虹矢は品川の手かと思った。が、手だとしても異質過ぎていた。
深い漆黒色の竜鱗に覆われ、変色した今紫色の腕だったからだ。
よくよく見れば鉤爪として形成されていた。
「誰だ。お前は!?」
虹矢が驚くのは無理もない。何故なら、品川の姿ではなく。
ドラゴンをモチーフとさせたフルフェイスの兜でスーツ姿の男がいたからだ。
「……」
兜の男は何も語らない。ジッと動かず虹矢を見ていたからだ。
「おいおい、なんだよ。テメェ等の仲間か!?」
「知らないぞ。変り者はいるが、あんな異質な奴は知らない」
「……なんやねん、コイツ……めっちゃ気持ち悪いぞ」
遠くから見てた南雲、竹島、内藤はいきなり現れた男に対し、無知で驚愕する。
「────■■■■■■!」
それは獣が怒り悲しみも混じった咆哮が東京に響き渡る。
(な、なんだコイツは!? いきなり叫び始めて……!)
虹矢は兜男がいきなり絶叫し始めたのには驚愕した。が、一番驚愕したのは兜男の拳が目前に迫ってきていた事にだった。
虹矢は咄嗟の判断で虹を出し、迫り来る兜男の胴体を攻撃した。
その反動で兜男は離し、自分も大きく距離を稼げた。
(な、なんだ!? コイツとは何も接点はないぞ。何故、ここまでいきり立っているんだ!)
この兜男とは面識はなく、何故ここまで怒り狂っているのかも身に覚えがなかった。
「────■■■■■■!」
(まずい、次が来る!)
兜男は諦めず、虹矢を襲う態勢へと移っていた。
即座に危機を感知した虹矢は兜男へ、照準を合わせ、容赦なく発砲する。
兜男は両籠手のみで銃弾を防いでいた。
「おい、テメェ無関係な奴に発砲してんじゃねぇ!」
冷静など失っている南雲は未だに蛮行を繰り返す虹矢へ向けて、怒号を放つ。
「貴様! 今、この状況見て分からないのか!
異質な者に襲われてるんだぞ!」
「うるせぇ! 人殺しが、そんな発言してじゃねぇ!」
「ちっ、おい竹島、内藤。副社長命令だ! この異質な者を倒すの協力しろ」
「あ、あぁ……」
「わ、分かりました」
当然だが南雲の協力は得られず、呆然としていた竹島と内藤に助力を求めた。
前に虹矢、左後ろに内藤、右後ろが竹島という三角形の陣形だった。
「……!」
三人が兜男に気を取られている間、南雲は素早く吹雪の元へ向かった。
「おい、アホパーマ無事か?」
南雲は吹雪を抱え、銃撃以外の異常がないか尋ねた。
「腹が熱いし痛いわ。熱した鉄を深々と刺された感じや」
苦しみながらも、銃撃以外は他に怪我してない返答だった。
「よし、じゃあ逃げるぞ。この状況で戦闘に巻き込まれたら命がねぇ!」
「あ、あぁ……それより桐崎さんの遺体も一緒に持って行けるか?」
「……悪いが、お前一人背負うだけでも背一杯だ。お前を安全な所まで避難させてから、桐崎さんを回収する。それでいいか?」
「でも、アイツの為にも……アイツ?」
吹雪は何か引っ掛かる表情を見せた。
「あ? 何言ってんだよ。アイツって誰だよ? 俺たち二人で桐崎さん助けに来たんだろうが。何寝惚けてんだ?」
こんな状況で急に吹雪が不思議な事を言い始めたので、南雲は叱責する。
「あ、あぁ、そう……だったな」
何故か自然と納得してしまう自分がいた。
「そうと決まれば……なんだお前……」
南雲が行動に移そうとすると、目前に多種多様のジャージ姿でキャップ、口元をハンカチで隠したギャング達が出現した。
それも大人数で囲まれていた。
「よし、コイツ等だ。手っ取り早くやるぞ」
「はい!」
リーダーらしき男が二人を見ると、目的だったらしい。
リーダーの指示でギャング達はロープを取り出し、全員で二人へ襲いかかった。
「ちくしょう……」
吹雪は何も抵抗できない悔しさで、されるがままになった。
一方その頃、数分前に遡り兜男と三人は睨み合うだけだった。
(なんだコイツは一体……目的が分からない。だが、私に敵意は向けているようだ。だったら……)
自分に敵意があるなら、それを利用するまでと考えた虹矢。アイコンタクトを竹島と内藤へ送った。
二人は頷き、静かに合流する。
兜男が虹矢に注目してる間、竹島は両拳に岩を纏わせる。
その岩に内藤が軽く触れた。が、瞬間的に兜男は行動を察知した。
「「!」」
いや、問題ない。この距離ならこちらの方が有利だから、反撃されても攻撃は当たると二人は思っていた。
けれど、その脳裏に浮かんだ浅はかな考えは消え失せる事になる。
攻撃のモーションに入る前、竹島の両腕は兜男によってガッチリと握られていた。
「■■■■■■」
意味不明な事を発し、兜男は掴んでいた腕を離し、腹部目掛けて前蹴りで竹島を大きく吹き飛ばす。
「や、ヤバッ……!?」
あまりにの異常事態に内藤は逃亡を図ろうとした。が、右手でアイアンクローされ、持ち上げ竹島が吹き飛んだ一緒の所へ投げ捨てる。
「く、クソっ!」
虹矢は急ぎリロードを行う。
兜男はゆっくりと歩きながら虹矢へ向かう。
「来るんじゃねぇ! この私が貴様に何をした!
無関係は横槍入れてくるんじゃねぇ!」
虹矢の汚い本性が露となり兜男へ恫喝する。
だが、そんなのは意味もなく兜男は接近する。
(お、落ち着け。奴はゆっくりと近づいてくるだけだ。至近距離で撃ってしまえばいい。深呼吸し、気持ちを落ち着かせ、手早くリロードしろ……そうだ。それでいい、俺の敵はあの兜野郎だけだ)
虹矢は徐々に落ち着きを取り戻し、手早く装填を済ませた。
そして目前となれば全弾叩き込もうと計画していた。
その時が来た。
「くたばれ!」
指をトリガーに掛け、容赦なく射撃する。
だが……
「……」
虹矢の目前に出現したのは兜男ではなく、黒いフードを深々と被った男だった。
「貴様! その手を離せ!」
男は右手全体の指圧だけでシリンダーを掴み、発射させないようにしていた。
「……お前に三度言う必要はないから楽だ。お前ごときに伝える物がないからな」
その男は村井黒政だった。
黒政は油断している虹矢の拳銃を力ずくで奪い、振り向きざまに左ストレートで顔面を殴った。
虹矢は猛烈な痛みで後退する。が、状況確認する前に、黒政は左肘で後頭部目掛けて素早く振り下ろした。
激しく脳震盪を起こし、虹矢はその場で倒れる。
「……さて、残るのは俺と……名も知らない君だけだ。君だけには状況説明しておこう」
「■■■■■■!」
黒政が説明する前に兜男は襲いかかる。
「一つ、俺の目的は君を戦闘不能にし、拘束し、連行する事、二つ、桐崎流星の遺体回収、三つ、吹雪雅人、南雲暖人を保護。この三つが今日の俺の仕事だ。お前に三度は言わない。二度言う前に終わらせるからだ」
黒政は説明を終わらせ、被っていたフードを投げ捨てる。
そこには顔を覆い隠すバイザーグラス、カラスモチーフのくちばしマスク、銀髪でツイストパーマ、黒タンクトップ、白のバルーンパンツ。
所謂、不審者の村井黒政が、コンバットナイフ両手持ちで待ち構えていた。
「さて、やるか」
今、直観している現実が理解できず、納得できず、受け入れずにいていた。
もしかしたらと、その弾丸はペイントが入っているドッキリなのではかと、実はゴム弾で頭に接触すると血糊が出る仕組みではないかと、期待していた。
「!」
虹矢の事は目に入らず、フラフラと桐崎へ接近し品川はへたりこむ。
そして脱力された左手に両手で優しく触れた。
左手は氷みたいに冷たく、ゆっくりと体温が下がっていくのを感じた。
実感してしまった。身体から魂が抜けていく感覚、徐々に冷たくなる肉体、そこで失われた感情。
全て初体験で、心は悲しみ、苦しみ、喪失に支配されていた。
「これって……現実……かよ……」
死を受け入れられない品川は現実を疑う。
「残念だが、これは現実だ」
虹矢による残酷な言葉により、品川の中にある何かが崩れた。
品川が茫然自失している最中、虹矢は次を決めていた。
「次はお前だ。品川修二」
それは品川だった。
「うおぉぉぉぉッ!」
怒りの形相で吹雪は叫びながら虹矢へ勢いよくタックルした。
タックルされた虹矢はバランスを崩し、吹雪は馬乗り状態となった。
「テメェ、ふざけんじゃねぇ! この野郎!
この野郎! この人殺し野郎がぁッ!」
吹雪は怒涛の勢いで、虹矢の頬目掛けて交互ずつ殴り続ける。
もはや覇気なんて使わず、人間として殺意のみで虹矢を倒そうとしていた。
「うぐっ!」
更に発砲音が響いた。次に被害を受けたのは吹雪だった。
どうやら腹部を至近距離で撃たれ、猛烈な痛みと火傷を感じ、虹矢から仰け反る形で離れた。
「吹雪……?」
無気力で負傷した吹雪を見る品川。
「品川修二、これは貴様が決断した結果だ。その目でよく見ておけ」
虹矢は次に吹雪へ向けて発砲しようとした。
(おい、またかよ……次は吹雪かよ……)
品川の思考は色々と入り交じっていた。
『やめろ、早く逃げろ、また大切な者が失うのか? 殺せ、全て消し去れ、邪魔な物を全て……壊せ』と心の何処から響いていた。
その黒い感情に影響されたのか、品川の右腕がピクリと動いた。
「覇気使いが死ぬとどうなるのか分からないが、貴様で試してみるか」
虹矢は撃鉄を起こし、吹雪へ向けて発砲した。
発砲された弾丸は途中で何者かに握られた。
「?」
虹矢は品川の手かと思った。が、手だとしても異質過ぎていた。
深い漆黒色の竜鱗に覆われ、変色した今紫色の腕だったからだ。
よくよく見れば鉤爪として形成されていた。
「誰だ。お前は!?」
虹矢が驚くのは無理もない。何故なら、品川の姿ではなく。
ドラゴンをモチーフとさせたフルフェイスの兜でスーツ姿の男がいたからだ。
「……」
兜の男は何も語らない。ジッと動かず虹矢を見ていたからだ。
「おいおい、なんだよ。テメェ等の仲間か!?」
「知らないぞ。変り者はいるが、あんな異質な奴は知らない」
「……なんやねん、コイツ……めっちゃ気持ち悪いぞ」
遠くから見てた南雲、竹島、内藤はいきなり現れた男に対し、無知で驚愕する。
「────■■■■■■!」
それは獣が怒り悲しみも混じった咆哮が東京に響き渡る。
(な、なんだコイツは!? いきなり叫び始めて……!)
虹矢は兜男がいきなり絶叫し始めたのには驚愕した。が、一番驚愕したのは兜男の拳が目前に迫ってきていた事にだった。
虹矢は咄嗟の判断で虹を出し、迫り来る兜男の胴体を攻撃した。
その反動で兜男は離し、自分も大きく距離を稼げた。
(な、なんだ!? コイツとは何も接点はないぞ。何故、ここまでいきり立っているんだ!)
この兜男とは面識はなく、何故ここまで怒り狂っているのかも身に覚えがなかった。
「────■■■■■■!」
(まずい、次が来る!)
兜男は諦めず、虹矢を襲う態勢へと移っていた。
即座に危機を感知した虹矢は兜男へ、照準を合わせ、容赦なく発砲する。
兜男は両籠手のみで銃弾を防いでいた。
「おい、テメェ無関係な奴に発砲してんじゃねぇ!」
冷静など失っている南雲は未だに蛮行を繰り返す虹矢へ向けて、怒号を放つ。
「貴様! 今、この状況見て分からないのか!
異質な者に襲われてるんだぞ!」
「うるせぇ! 人殺しが、そんな発言してじゃねぇ!」
「ちっ、おい竹島、内藤。副社長命令だ! この異質な者を倒すの協力しろ」
「あ、あぁ……」
「わ、分かりました」
当然だが南雲の協力は得られず、呆然としていた竹島と内藤に助力を求めた。
前に虹矢、左後ろに内藤、右後ろが竹島という三角形の陣形だった。
「……!」
三人が兜男に気を取られている間、南雲は素早く吹雪の元へ向かった。
「おい、アホパーマ無事か?」
南雲は吹雪を抱え、銃撃以外の異常がないか尋ねた。
「腹が熱いし痛いわ。熱した鉄を深々と刺された感じや」
苦しみながらも、銃撃以外は他に怪我してない返答だった。
「よし、じゃあ逃げるぞ。この状況で戦闘に巻き込まれたら命がねぇ!」
「あ、あぁ……それより桐崎さんの遺体も一緒に持って行けるか?」
「……悪いが、お前一人背負うだけでも背一杯だ。お前を安全な所まで避難させてから、桐崎さんを回収する。それでいいか?」
「でも、アイツの為にも……アイツ?」
吹雪は何か引っ掛かる表情を見せた。
「あ? 何言ってんだよ。アイツって誰だよ? 俺たち二人で桐崎さん助けに来たんだろうが。何寝惚けてんだ?」
こんな状況で急に吹雪が不思議な事を言い始めたので、南雲は叱責する。
「あ、あぁ、そう……だったな」
何故か自然と納得してしまう自分がいた。
「そうと決まれば……なんだお前……」
南雲が行動に移そうとすると、目前に多種多様のジャージ姿でキャップ、口元をハンカチで隠したギャング達が出現した。
それも大人数で囲まれていた。
「よし、コイツ等だ。手っ取り早くやるぞ」
「はい!」
リーダーらしき男が二人を見ると、目的だったらしい。
リーダーの指示でギャング達はロープを取り出し、全員で二人へ襲いかかった。
「ちくしょう……」
吹雪は何も抵抗できない悔しさで、されるがままになった。
一方その頃、数分前に遡り兜男と三人は睨み合うだけだった。
(なんだコイツは一体……目的が分からない。だが、私に敵意は向けているようだ。だったら……)
自分に敵意があるなら、それを利用するまでと考えた虹矢。アイコンタクトを竹島と内藤へ送った。
二人は頷き、静かに合流する。
兜男が虹矢に注目してる間、竹島は両拳に岩を纏わせる。
その岩に内藤が軽く触れた。が、瞬間的に兜男は行動を察知した。
「「!」」
いや、問題ない。この距離ならこちらの方が有利だから、反撃されても攻撃は当たると二人は思っていた。
けれど、その脳裏に浮かんだ浅はかな考えは消え失せる事になる。
攻撃のモーションに入る前、竹島の両腕は兜男によってガッチリと握られていた。
「■■■■■■」
意味不明な事を発し、兜男は掴んでいた腕を離し、腹部目掛けて前蹴りで竹島を大きく吹き飛ばす。
「や、ヤバッ……!?」
あまりにの異常事態に内藤は逃亡を図ろうとした。が、右手でアイアンクローされ、持ち上げ竹島が吹き飛んだ一緒の所へ投げ捨てる。
「く、クソっ!」
虹矢は急ぎリロードを行う。
兜男はゆっくりと歩きながら虹矢へ向かう。
「来るんじゃねぇ! この私が貴様に何をした!
無関係は横槍入れてくるんじゃねぇ!」
虹矢の汚い本性が露となり兜男へ恫喝する。
だが、そんなのは意味もなく兜男は接近する。
(お、落ち着け。奴はゆっくりと近づいてくるだけだ。至近距離で撃ってしまえばいい。深呼吸し、気持ちを落ち着かせ、手早くリロードしろ……そうだ。それでいい、俺の敵はあの兜野郎だけだ)
虹矢は徐々に落ち着きを取り戻し、手早く装填を済ませた。
そして目前となれば全弾叩き込もうと計画していた。
その時が来た。
「くたばれ!」
指をトリガーに掛け、容赦なく射撃する。
だが……
「……」
虹矢の目前に出現したのは兜男ではなく、黒いフードを深々と被った男だった。
「貴様! その手を離せ!」
男は右手全体の指圧だけでシリンダーを掴み、発射させないようにしていた。
「……お前に三度言う必要はないから楽だ。お前ごときに伝える物がないからな」
その男は村井黒政だった。
黒政は油断している虹矢の拳銃を力ずくで奪い、振り向きざまに左ストレートで顔面を殴った。
虹矢は猛烈な痛みで後退する。が、状況確認する前に、黒政は左肘で後頭部目掛けて素早く振り下ろした。
激しく脳震盪を起こし、虹矢はその場で倒れる。
「……さて、残るのは俺と……名も知らない君だけだ。君だけには状況説明しておこう」
「■■■■■■!」
黒政が説明する前に兜男は襲いかかる。
「一つ、俺の目的は君を戦闘不能にし、拘束し、連行する事、二つ、桐崎流星の遺体回収、三つ、吹雪雅人、南雲暖人を保護。この三つが今日の俺の仕事だ。お前に三度は言わない。二度言う前に終わらせるからだ」
黒政は説明を終わらせ、被っていたフードを投げ捨てる。
そこには顔を覆い隠すバイザーグラス、カラスモチーフのくちばしマスク、銀髪でツイストパーマ、黒タンクトップ、白のバルーンパンツ。
所謂、不審者の村井黒政が、コンバットナイフ両手持ちで待ち構えていた。
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