マグナムブレイカー

サカキマンZET

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第4章 覇気使い四天王。

第158話 三番総長。

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「……」

 涼しい顔で黒政は襲撃してきた兜男の胸元を躊躇なく、ナイフで三回刺す。

「!」

 兜男は負傷した事に気付き、黒政から大きく離れる。
 そして胸元を触り確認する。が、血液どころか怪我すらしていなかった。

(おかしい。瀕死覚悟で刺したつもりだが、なんともない様子だな。感触も手応えもあった……)

 黒政は思考を張り巡らせ、ある一つの答えに辿り着く。

(現実改変能力・・・・・・、もしくは上級悪魔並の再生能力・・・・。……前者も後者も面倒だが、対処できない事はない。問題は、何処まで現実改変できるのか、再生時間とインターバル。見極めるまで難しいが、そこまで時間を割くこともできない……ならば、こうだな)

 ある程度の考察を済ませ、次の移行する。
 右手のナイフを逆手持ちへ変更し、前へ付きだし、左手のナイフを奥へ潜める。

「■■■■■■!」

 どうやら兜男は、黒政を脅威として認知したらしく咆哮で威嚇する。

「……」

 そんな獣ごとき程度の脅しで臆する黒政ではなかった。
 寧ろ、煽る形となった。
 黒政はゆっくりと兜男へ接近し、右ナイフを首へ目掛け放った。

「!」

 兜男はギリギリ身体を仰け反らせて回避した。が、右太股に猛烈な痛覚が伝わった。
 左奥に隠していたナイフが無数に切り刻まれた後、内深く突き刺さっていた。
 それでも怪我はせず、血液はでなかった。が、いつもと違う反応を見せた。

「どうやら上半身以外は通じるようだな」

 下半身が弱点だと分かると、右ナイフを左太股へ深く突き刺した。

「■■■■■■!」

 二本しかナイフが無いを認知している兜男は痛みに耐えながらも、左手で黒政の首を掴む。

「何、勝った気になってんだ? ボケ」

 黒政は兜男の左腕を右拳で打撃し、拘束から解放された所で左アッパーをかました。
 兜男が離れる寸前、黒政は太股のナイフを全部引き抜き、後退している間で腹部を素早く数回突き刺す。

「────■■!」

 だが、兜男も負けじと仰け反ながら右アッパーを放つ。

「……?」

 急な攻撃ではあったが、対応できない物ではなかったので、頭だけを使い回避した。
 けれどマスクに異変が発生した。が、黒政は前蹴りで兜男を大きく離し、見て調べる。

(……マスクに亀裂が入ったな。風圧か能力のどちらか……判断するには材料が少ない。分かるのは直撃を喰らうと頭が無くなる威力って事だな。これだからフィジカル全振り化物は厄介だな)

 黒政はゆっくり深呼吸し、他に異変が無いか調べる。
 無いと判断すると、兜男とは違う左方向へ人差し指を立て、クイクイと何か呼び出す。
 するとジャージを着たチンピラ達が何処からともなく出現した。
 手には新しいマスクと1リットルサイズの水があり、黒政へ手渡す。

「ご苦労、危ないから下がってろ」

「はい!」

 チンピラはそそくさと指示通りに逃走する。
 そして亀裂が入ったマスクを後ろへ向いて脱ぎ、水を飲み始める。
 もはや完全に油断している状態だ。
 そんな事など、お構い無しに兜男は背中状態の黒政へ襲撃する。

「……よし」

 水を飲み終えた頃にはマスクを付け、振り向き、ペットボトルを兜男へ投げ付ける。
 兜男は目前に迫るペットボトルを右ストレートで殴る。
 拳と衝突したペットボトルは外部による圧力により、破裂した。右腕は中身のある水により、濡れていた。

「!」

 兜男がペットボトルを破壊している間に、もう黒政は懐へ入っていた。

(さて、早く終わらせるか)

 蹴り以外は狙いづらい位置へ身体を低くし、激しい動きで、腹部、太股、脛を切ったり刺したりした。
 だが、兜男にとっては好都合。
 これだけ至近距離でいてくれば、何発も殴って当たりさえすれば、こっちに勝ち目があると行動する。
 下半身は負傷しながらも両拳でパンチを連打する。が、黒政に全て避けられ切りつけられる。

(無造作にパンチはしていない。ちゃんと予測して狙ってきている。この勝負、一瞬の隙を見せれば漬け込まれる可能性がある……じっくりと倒す手段を考えたかったが、技術面で勝ってるとは言え体力勝負には、流石に自信がない……どうする?)

 互いが連打する中で黒政は兜男が徐々に成長してきていると感じていた。
 力、正確性、速さが数秒間という中で順応し、自分に追い付いて来ている程に実感されていく。
 別に追い付かれているからという危機感、焦り、嫌悪感はなかった。
 それよりも自分と同等になるなら……高揚感が激しく増していた。

(クソっ! 任務ではなければ楽しすぎる緊張感ある戦い。いつ以来だ? こんなにも肌がピリつく感覚、こんなにも純粋な破壊衝動をむけられたのは……あぁ楽しい。善吉、お前が過去から賭けた内容が的中したぞ。)

 閻魔からの命令でなければ、一日中戦っていたいと思う黒政。
 彼にとっては、ここまで付いてくる者が閻魔と善吉以外に存在しなかったからだ。
 そして戦闘の中で思い出す。晴天の青空を前に背中で語る善吉を……

(お前が未来に期待した理由が、少し理解できたよ)

 そう黒政が考えていると、兜男の右拳が燃えていた。
 だが、そんな事は気にせず兜男は黒政へ攻撃する。
 いきなりの事だったが、とりあえず対応し、兜男から離れ警戒し考察する。

(なんともないが、もうこれ以上時間をかけていられなくなった。……ヤバイな。奴の足にも甲冑が出始めた。もう狙うのは胴体の腹部しかない、それも相手が死んだ・・・・・・と思うぐらいの殺気ではないと、戦いが終わらないだろうな)

 長時間下半身ばかり攻撃していたので、あちらも順応していき、足から籠手と同じように装備されていく。
 もう残るのは腹部しかないと黒政は判断した。

「……兜男、今から君に接近する。そして私が君にする事は殺害すること。つまりは遊びは無しだ。ここからは……殺戮・・だ」

 黒政はナイフを投げ捨て、動かなくなった。

「■■■■■■!」

 そして無防備となった黒政へ兜男は両拳に炎を纏わせ襲う。

(相手が疲れるまで……待て!)

 そう自分へ言い聞かせ、黒政は至近距離まで移動してきた兜男の猛攻を避ける。
 最初は見れば避けられる具合だった。が、数秒後には避けた先に拳が飛んでくるまで、速さが追い付かれていた。

(まだだ。攻撃は極力防御せず、待て)

 なんとか負傷せず回避に専念する黒政。
 けれど炎を纏った拳の攻撃なので、上半身は擦り傷、切り傷、火傷が広がる一方。
 タンクトップも所々燃やされ、風圧で小さいかまいたちが発生してるので切り刻まれていく。

「■■■!」

 そして遂に兜男は狙いを捉える事ができ、黒政の顔面へ右フックをかました。
 右フックはマスクへ激突し、その場で破損し粉々と変化した。

「……舐めるな」

 全てに耐え抜いた黒政は、静かなる殺気を放った。

「!」

 兜男は尋常ならない殺気に畏怖し、黒政から離れようとした。が、足は黒政に踏まれ、更にはナイフが奥まで刺さっていた。

「ありがとう兜男。楽しませて貰った礼だ。これは俺からの手向けだ……骸依むくろい

 黒政は手刀で横一閃と兜男の腹部へ衝突させた。
 激突した腹部は切られる事は無かった。が、兜男の脳裏にはあるイメージが浮かんだ。
 それは上半身と下半身が分かれ、臓物を地面へ撒き散らし、即死した自分だった。

(肉体が分離する程、膂力を込めたのに固いな。だが、これでコイツは……死んだ・・・)

 そう黒政が思った通り、兜男は膝から崩れ落   ち、倒れた。
 それと同時にタンクトップも限界を迎え、ハラリと肩部分が切れた。
 そして黒政の背中が露になった。
 翼を大きく広げ飛翔し、導と書かれた宝玉と髑髏を持ち、炎を纏った八咫烏の刺青だ。

「なかなか面白かった。会長に生かされるなら、もう一度挑戦させてもらいたいな」

 そう言いながら黒政はナイフを引き抜き、兜男へ感謝を述べた。

「あ、あの黒政さん……」

 そこへ何処かへ隠れていたチンピラが新しいマスクを持って黒政へ接近する。

「あぁ、すまない」

 新しいマスクを受け取り、黒政は装着する。

「お疲れ様です! 今日は大変でしたね。救急車呼びますか?」

「……いや、コイツを本部まで運ぶ。誰か手伝って……」

 兜男の遺体から煙が発生し、黒政はチンピラを後ろへ隠し、警戒する。
 けれども何かされる訳でもなく、煙は徐々に消える。

「……なるほど、会長め。なかなか面白いことしてくれる。お前は一体どっちになるのだろうな?」

 黒政は表情には見せないが、不気味な嬉しさを醸し出す。
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