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第三節「杯の魔女、あるいは神敵【魔王】の帰還」
SCENE-052 委託式、領域置換型転移
しおりを挟むイシュナフ宮の敷地内であろうと、なかろうと、ティル・ナ・ノーグで専用の物理筐体――〝ポータル〟、あるいは〝転送ポート〟と呼ばれる魔導器――を使わずに転移をする場合、屋内からというのも、屋内へというのも推奨されていない。
転移のための魔導円を展開するスペースの都合なので、巻き込みを気にしなければやってできないことはないのだが。基本的に行儀のいい伊月は、常識的にそうするものだという考えで奥宮の外へ出ると、キーデバイスから呼び出した仮想端末の入力面に指を滑らせた。
エヴナ庭――ドラクレアが黒姫奈に与えた荘園――の、ドラクレアへの当てつけとして設定していた〝吸血鬼立入禁止〟の設定を解除して。そのまま転移の申請も済ませてしまうと、ティル・ナ・ノーグの交通管制システムからは最優先で許可が下り、伊月が立っている少し先に、直径三メートルほどの魔導円が描き出される。
転移の申請をした伊月と同行者である三人が余裕で乗れるサイズの〔ポータル〕が。
人造王樹やその眷属が描き出す魔導円に特有の、判を押したよう瞬間的に現れた精緻な魔導円には過不足なく魔力が行き渡り、ほのかな魔力の輝きを放っている。
生身の魔術師が描き出した魔導円には必ずと言っていいほど見られる魔力の揺らぎがまったくない。その魔導円は伊月たちが乗り込むと速やかに発動して、伊月が申請した通りの場所へと四人を運んだ。
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