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×××


ハイジの溜まり場と学校のほぼ中間にある、大通りに面したアパート。
時代を感じさせないシンプルな造りとシックな色合いのそれは、近くでよく見れば古さを感じるものの、よく手入れがされている。
二階へと続く階段を上り、直ぐ手前にある玄関のドアを開ける。

「散らかってるけど、どうぞ」
「……」

靴を脱ぎ、通された部屋に入る。
散らかってると言う割に、綺麗に整理整頓された、6畳程の部屋。一人暮らしの男性らしい、モノクロで纏めた家具やインテリア。入って右側の壁にあるのは、40型以上はあるんだろう存在感のある大型液晶テレビ。そのテレビ台の横にあるカラーボックスには、映画などのDVDで埋め尽くされていた。

「珈琲と紅茶、どっちがいい?」

玄関のすぐ隣にあるキッチンから、声を掛けられる。

「……じゃあ、紅茶で」
「了解。適当に座ってて」
「はい……」

部屋の左隅に、持っていたバッグを二つ下ろす。と、テレビの向かい側にある木製の引き戸が半分程開いていて、そこから寝室が見えた。
リビングの灯りが射し込んだ先には、簡易型のベッド。それに……

「ここに置いておくよ」

突然の声に驚き、振り返る。
コトン、とカップをガラステーブルに置いた男が、落ち着きのない僕の顔を見ながらニコッと笑う。





ガラステーブルを挟んだ、テレビの相向かい──黒革の二人掛けソファの前に、腰を下ろす。
その右斜向かい──部屋の出入り口側にショップ店員が座り、落ち着いた様子で煎れたばかりの珈琲に口を付けた。

「……それで。ここに泊まりたい理由を聞いてもいいかな?」

コト、
カップをテーブルに置き、ショップ店員が微笑みながら僕の顔を見る。

「断るつもりはないから、安心して」
「……」

優しい口調に、ホッとする。
でも……一体何処からどう話していいのか、解らなくて。
正座をした膝の上に両手を乗せたまま、目を伏せる。

「パーティーで会った彼──ハイジとは、あれからどうなったの?」

僕が押し黙ってしまったからか、男が会話の切り口を変えてくる。

「確か彼は、暴力的な一面があるって噂を聞いた事があるけど。……もしかして、酷い事された?」
「……」

驚いて顔を上げれば、男の視線が僕の首筋に止まっているのに気付く。

「彼から、逃げてきたの?」
「──、違います!」

男を見つめたまま、大きく首を横に振る。



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