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33.

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鎖骨に赤い印を刻んだ後、下に向かって肌上を舌先が這う。そのまま胸の小さな突起に到達し、ピンと弾いた後、舐りながらそれを口に含む。

「……」

ぴちゃ、クチュ……
その行為を何となく眺めながら、この永遠に続く夜の帳に、ただ身を委ねるしかなかった。







「……身体、辛くねぇか?」

ギシッ……
ベッドが揺れて歪み、小さく軋む音に目が覚める。瞼を薄く開ければ、カーテン越しに明るい朝陽が射し込んでいた。

「ん……」
「……そっか」

隣に座るハイジの手が、僕の前髪をそっと掻き上げる。
その指先は、もう震えていない。

「昨日は、……その、無理させちまって、悪ぃかった」
「……」

……ううん。
それだけ、追い詰められてたんだよね……
小さく頭を横に振れば、僕を見下ろす二つの瞳が、柔らかなものに変わる。
優しくて、自信に満ち溢れる……以前のハイジ。
僕の好きな、ハイジ。

「風呂に湯張ってきたから、一緒に入るか?」
「……うん」
「動けそうか?」
「ん……」

……大丈夫だよ。
ハイジはいつも、どんな時でも、優しく気遣ってくれるから……



正方形の青と白が交互に敷き詰められたタイル。湯垢の残る曇った縦長の鏡。
色褪せてひびの入った乳白色の浴槽。見るからに狭くて深いそれは、二人で入るにはとても窮屈だった。

ぱしゃ、と水面が大きく揺れた後、
視界の両端からハイジの腕が現れ、後ろから抱き締められる。
すっぽりと背中がハイジの懐に埋まり……何だか、恥ずかしい。

「……まだ、オレが怖ぇか?」
「え……」

核心をついた質問に、ドキッとする。
確かに……怖くないと言ったら、嘘になる。もしまたハイジが、豹変してしまったら。僕一人の力で止められるか……自信がない。

「……ううん」
「マジで?」
「うん」

肩を竦めたまま小さく頷けば、晒された項にハイジが軽く唇を当てる。

「じゃあ……まださくらの中に、埋まってンだな」
「……ぇ」
「リュウイチって野郎に植え付けられた、恐怖ってのが」

膝を抱えている僕の左手をそっと取り、引き寄せたハイジがその指先にキスを落とす。

「……」

そう……なのかな。
確かに、行為自体は痛くて怖くて仕方がなかったけど。
でも、それだけじゃない。背後から抱き締められた時の温もりは、酷く心地良くて……
あの時の僕にとって、かけがえのない大切なものだったから。

「気付かなかったか?」
「……」
「お前を抱く時、この指が……震えてんの」

──え。
それは、僕のじゃ無くて……ハイジの……

人差し指と中指の先が、ハイジの咥内へと取り込まれる。
熱くて、熱くて……酷く柔らかな粘膜。

「……」

少しでも動いてしまったら、傷付けてしまいそうで。何も言えず、只されるが儘になっていた。

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