上 下
16 / 56

16.

しおりを挟む

ガヤガヤ、ガヤガヤ……

キャー!
アッハハハハハ!


煌びやかなシャンデリア。キラキラと輝く大きなクリスマスツリー。中央の長テーブルに並べられた、豪華な大皿料理。フロアの奥には大きなスクリーンが垂れ下がり、誰だかよく解らない……バンドのライブ映像が映し出されていた。
その軽快でノリの良い音楽が流れる中、小洒落たコーデの男女が、シャンパングラスを片手に話に華を咲かせている。


「……」

……溶ける、かも。


そこはまるで、異次元の世界。
まるで絵に描いたような豪勢な光景に、僕なんかが簡単に足を踏み入れてはいけないような気がして……怖じ気づく。

「どうぞ」

柔やかな笑顔の女性が前方から近付き、沢山のシャンパングラスを乗せたトレイを僕の前に差し出す。

「……あの、僕は」

断ろうとすれば、僕の肩から腕を外した森崎が、グラスを二つ取りその内の一つを僕に突き出す。

「まぁ、いいじゃん。一口くらい付き合ってよ」
「……でも、僕はまだ……」
「未成年でお酒飲んでる子なんて、ザラでしょ!」

……え……

嫌な感覚が襲う。
堅いこと言うなよ。そう言われたような気がして。

「……」

確かに。ハイジ達は未成年にも関わらず、酒や煙草を口にしていた。

でも、それが当たり前なんかじゃない。
僕のように法律ルールを守ってる人間を、あたかもマイノリティ少数派であるかのように扱って欲しくない。

「……ほら」

尚も森崎が、受け取るよう促す。

『粗相のないよう、お願いしますよ』──その刹那、水神の言葉が脳裏を過る。

「……」

別に、口を付けなければいいだけ……
そう思い直し、無駄な問答を止めて渋々グラスを受け取る。

それに機嫌を良くした森崎が、自身の持っていたグラスをチン…と当てると、一気にシャンパンを煽った。


「森崎さん……」

その時、黒スーツ姿の男性がスッと森崎に近寄る。そして口元を人に見られないよう片手で遮りながら、森崎に耳打ちする。

「……」
「そうか」

途端に森崎から笑顔が消える。

「急で悪いが、ちょっと外させて貰うよ」

そう言って僕の背中を二度叩き、耳打ちした男と共にフロアから出て行く。

「……」

ぽつんと一人残された僕は、この異世界空間に馴染めそうになく、シャンパングラスを持ったまま窓際へと移動した。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

彼氏の愛が重すぎる

BL / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:54

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:184pt お気に入り:1,894

社畜が男二人に拉致されて無人島性活

BL / 完結 24h.ポイント:470pt お気に入り:720

暴かれた少年は屈服に満ちた隷属を強いられる

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:1

鎖 -アゲハ舞い飛ぶ さくら舞い散る2-

BL / 完結 24h.ポイント:320pt お気に入り:28

【R18】番解消された傷物Ωの愛し方【完結】

BL / 完結 24h.ポイント:156pt お気に入り:1,020

脅されて壁穴にアナルを10回押し付ける事になった俺

BL / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:101

弱みを握られた僕が、毎日女装して男に奉仕する話

BL / 完結 24h.ポイント:198pt お気に入り:13

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:43,417pt お気に入り:5,266

処理中です...