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しおりを挟む「ジェットコースター乗りたい人っ!」
「はーいっ!」
「……はぁーい!」
東生の言葉に、真奈美と愛咲が元気よく手を上げる。
「で、お前らは?」
東生が振り返り、静かに離れて立つ僕と樹を見た。
「僕は……」
「……俺も、乗るよ」
遠慮する僕とは対照的に、樹が遠慮がちに片手を上げる。
僕の方など、一切見ずに。
「……」
樹……こういう絶叫ものに弱いって、確か言ってたよね。
なのに乗りたいって。……それ程、僕と一緒になるのが……嫌って事、だよね……
「おっ。……じゃあ、愛月も乗るだろ?」
「……いいっ、!」
東生の言葉を、強く突っぱねる。
当然みたいなノリが堪らなく嫌で、反発心もあったのかもしれない。
……だけど、それだけじゃなくて。
このままここに居ても、樹との関係が何も変わらない事に……僕は心底、嫌気が差していた。
集まる視線。
視界に映る三人が、言葉を失ったまま僕を見つめている。
「──あ、えっと……、」
場の空気が一変したのを肌で感じ、感情を喉奥に押し込め、手を強く握りしめる。
「何か……さっき飲んだやつのせいか、気持ち悪くなっちゃってさ。乗ったら多分、吐くから」
やっとの思いで、笑顔を作る。
上手く作れてるのか、自信なんてないけど……
愛咲が僕に一歩近付いて、心配そうに何か喋りかけてくる。
──あの時と同じだ。
東生のホモ発言に、全否定した時の……あの空気。
揺れる視界。
息が、苦しい。
足元がグラグラして……立ってられない。
ぐにゃりと歪んだ視界の端に、心配そうな表情を浮かべた樹が、こっちを見ていて………
「……だから、ゴメン!」
ははっ、と軽く笑った後、堪えきれず踵を返し地面を蹴った。
離れてからやっと……
狭まっていた視界が開け、呼吸も正常に戻っていく。
だけど、全てが灰色がかって……寒々しい。
煩い程にはしゃぐ、子供の甲高い声。
あちこちで無情に鳴り響き、僕の耳を劈く。
その中を一人、ゆっくりと歩く。この空間に、溶け込めずに。
……もう、帰りたかった。
樹との仲を望めないなら、こんな所にいたってしょうがない。
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